Hatena::ブログ(Diary)

特許実務日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-12-15 ●平成24(行ケ)10091 審決取消請求事件 特許権「スロットマシン」 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成24(行ケ)10091 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「スロットマシン」平成24年12月12日 知的財産高等裁判所』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121213164526.pdf)について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の無効(認容)審決の取消しを求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却された事案です。


 本件では、特許無効審判における特許発明の要旨の認定についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第4部 裁判長裁判官 土肥章大、裁判官 高部眞規子、裁判官 齋藤巌)は、


『3 本件発明と引用発明との対比の誤りについて

(1) 引用発明の上記構成?との関係について

 引用発明の「液晶パネル制御基盤」は,「情報表示部」を制御するものであるから,「情報表示部」を制御するための回路が構成されていることは明らかである。


 そうすると,引用発明の「液晶パネル制御基盤」は,本件発明において表示装置の表示を制御する「表示制御回路」に相当するものと認められる。


(2) 引用発明の上記構成?との関係について

 引用発明においては,ビッグチャンス時やボーナスゲーム時であることに基づき,「情報表示部」に表示される「図柄表示パターン」が選択処理されるものである。


 他方,本件発明においても,乱数抽選によって決定された遊技の入賞態様及び遊技状態に基づき,副制御回路によって,表示装置に表示される「画像演出パターン」が選択処理されるものである(【請求項1】)。


 そうすると,引用発明の「図柄表示パターン」は,本件発明の「画像演出パターン」に相当するものというべきである。


(3) 原告の主張について

ア 原告は,本件発明の「画像演出パターン」は,人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示するものであるのに対し,引用発明の「図柄表示パターン」は,単に数字,文字又は文章を用いてゲームのガイダンスや賞球数等の各種数値を表示するものであり,両者は表示内容や表示目的及び作用効果が明確に異なるから,引用発明の「図柄表示パターン」が本件発明の「画像演出パターン」に相当するとした本件審決の判断は誤りである旨主張する。


 しかしながら,本件発明の特許請求の範囲には,本件発明にいう「画像演出パターン」が,ボーナス当選時やハズレ時等において,人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示するものであるとの記載はない。また,本件明細書においても,「画像演出パターン」が,上記のような表示をするものであるとの定義はされていない。さらに,「人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示する」という作用効果は,特許請求の範囲に記載されたいずれの構成からも導き出せるものでもない。原告の主張は,単に実施例(【0046】【0048】)の作用効果を主張しているにすぎず,特許請求の範囲の記載に基づくものではない。


 そして,「画像演出パターン」との用語が,文字や文章を用いた画像表示を排除したものであるとは認められないから,引用発明の「図柄表示パターン」が,本件発明の「画像演出パターン」に相当するとした本件審決に誤りはなく,原告の主張は採用することができない。


イ 原告は,特許法70条2項の趣旨に基づいて,本件発明の「画像演出パターン」の内容及び意義を本件明細書の記載に基づいて解釈すると,「ボーナス当選時やハズレ時等において,人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示するもの」と解釈されるべきである旨主張する。


 しかしながら,特許法70条2項は,特許発明の技術的範囲を定めるに当たり,特許請求の範囲に記載された用語については,明細書や図面の記載を考慮して解釈するという規定であって,特許発明の特許要件たる進歩性の有無を審理し判断する前提として,当該特許発明に係る特許請求の範囲に記載された発明の要旨を認定する場面に適用されるべき規定ではない。原告が挙げた前掲知財高裁判決も,同様に特許発明の技術的範囲の解釈について判示したものであり,特許発明の要旨認定について判示したものではない。


 なお,特許発明の要旨の認定については,特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであるところ,本件発明の特許請求の範囲に記載された「画像演出パターン」との用語が,それ自体では意味が全く不明で,本件明細書の対応する記載に置き換えなければ当該発明が特定できないというものではないし,その他,本件発明の特許請求の範囲の記載に照らしても,上記特段の事情があるものとは認められない。


 したがって,原告の主張は失当であり,本件発明の「画像演出パターン」について,原告が主張するように,「ボーナス当選時やハズレ時等において,人物等のキャラクタにより喜怒哀楽を表示装置に表示するもの」と解釈すべき理由はない。』

 と判示されました。

 

 なお、本件における判断は、出願に係る発明の要旨認定について判示したリパーゼ最高裁判決『昭和62(行ツ)3 審決取消 特許権 行政訴訟 平成3年03月08日 最高裁判所第二小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319121136269707.pdf)の原則に沿ったものですが、リパーゼ最高裁は、特許権発生前の拒絶査定に対する審決取消訴訟での要旨認定であるのに対し、本件は、特許無効審判、すなわち特許後の特許発明の要旨認定ですので、特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲とのバランスを考えれば、明細書の記載を参酌する70条2項やリパーゼ最高裁判決の例外で判断しても良いのではないかと思いますが、裁判所からすれば特許権者が訂正をすればこのような問題は生じないので、訂正をしろということなのでしょう。