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特許実務日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2018-01-09 ●平成29(行ケ)10099 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「ホモロガス このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 暫くブログを休んでいましたが少しずつ復活させたいと思います。

 本日は、『平成29(行ケ)10099 審決取消請求事件 特許権 行政訴訟「ホモロガス薄膜を活性層として用いる透明薄膜電界効果型トランジスタ」平成29年12月7日 知財高裁(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/329/087329_hanrei.pdf)』について取り上げます。


 本件は、特許無効審判の棄却審決の取消した求めた審決取消訴訟事件で、その請求が棄却された事案です。

 本件では、まず、取消事由2(実施可能要件に関する判断の誤り)についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第2部 裁判長裁判官 森義之、裁判官 永田早苗、裁判官 古庄研)は、

『3 取消事由2(実施可能要件に関する判断の誤り)について

(1) 本件明細書に本件化合物のアモルファス薄膜の作製法記載されていない旨の主張(前記第3の2(1))について

ア 前記第2の3(3)アのとおり,原告は,本件審判において,本件明細書の発明の詳細な説明には,活性層として用いることができるホモロガス化合物のアモルファス薄膜の作製法についての実施例の記載はなく,具体的に説明されていないとの主張をしていたのであるから,実施可能要件違反の主張のうち,前記第3の2(1)の主張は,本件審判において審理判断の対象となっていたものと認められる。原告の本件審判における具体的主張が本件訴訟における主張と異なる点があるとしても,審理判断の対象となっていたとの上記の判断が左右されるものではない。


イ(ア) 物の発明における発明の実施とは,その物の生産使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号),物の発明について実施可能要件を充足するか否かについては,当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その物を製造し,使用することができる程度の記載があるか否かによるというべきである。

 ・・・

ウ 原告は,第一判決や別件判決においてアモルファスの本件化合物に進歩性が認められたのは,本件化合物のキャリア濃度を制御することが困難であることを理由にしたのであるから,これに反する被告らの主張は,禁反言の法理に触れる,と主張する。

 しかし,第一次判決及び別件判決は,本件化合物のキャリア濃度を制御することが困難であったことを理由として,本件化合物を透明電界効果型トランジスタの活性層に用いることを容易に想到することはないと判断したものであって,本件化合物を透明電界効果型トランジスタの活性層に用いることが記載されている本件明細書の記載に基づいて,本件化合物のキャリア濃度を上記活性層に用いることができるよう制御して本件発明を実施することが困難であると判断したものではない。したがって,上記各判決と被告らの主張が矛盾するものではなく,被告らの主張が禁反言の法理に触れるものではない。

(2) 本件明細書に本件発明が発明の課題を解決することができる程度に開示されていない旨の主張(前記第3の2(2))について

ア 原告は,本件明細書には,本件発明が発明の課題を解決することができる程度に開示されていないから,実施可能要件を欠く,と主張する。

特許法は,特許無効の審判について,そこで争われる特許無効の原因が特定されて当事者らに明確にされることを要求し,審判手続においては,上記特定された無効原因をめぐって攻防が行われ,かつ,審判官による審理判断もこの争点に限定してされるという手続構造採用していることが明らかである。したがって,特許無効審判の審決に対する取消しの訴えにおいて,その判断の違法が争われる場合には,専ら審判手続において現実に争われ,かつ,審理判断された特定の無効原因に関するもののみが審理の対象とされるべきである(最高裁昭和51年3月10日大法廷判決・民集30巻2号79頁参照)。


本件審判において,原告が主張していた無効理由5は,前記第2の3(3)アのとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,活性層として用いることができるホモロガス化合物のアモルファス薄膜の作製法についての実施例の記載はなく,具体的に説明されていない,というものであり,本件発明の課題を解決することができるようなトランジスタを作製し,使用することが可能であったといえない旨は,実施可能要件の主張としては,述べられていなかった。そして,実施可能要件とサポート要件とは,適用法条を異にするから,別異の無効理由を構成すると解すべきであり,同様の理由がサポート要件についての無効理由として主張されていないからといって,実施可能要件の無効理由として主張されていたと解することはできない。

 したがって,原告の上記主張は,本件審判手続で現実に争われ,審理判断された特定の無効原因に関するものではないから,主張自体失当である。

(3) 以上より,取消事由2には,理由がない。』

 と判示されました。

なお、本件で引用している最高裁判決は、

●『昭和42(行ツ)28 審決取消請求 特許権 行政訴訟「メリヤス編み機事件」昭和51年03月10日 最高裁判所大法廷』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/170/053170_hanrei.pdf

です。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。