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2018-01-11 ●平成29(行ケ)10080  審決取消請求事件 商標権「レッドブル」行政 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成29(行ケ)10080  審決取消請求事件 商標権「レッドブル」行政訴訟  平成29年12月25日 知財高裁』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/364/087364_hanrei.pdf)について取り上げます。


 本件は、商標登録無効審判事件の棄却審決の取消を求めた審決取消請求事件で、その請求が認められた事案です。


 本件では商標法4条1項15号にいう「他人業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」についての判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 清水 節、裁判官 中島基至、裁判官 岡田慎吾)は、

「1 取消事由1(商標法4条1項15号該当性判断の誤り)について

原告は,本件商標が商標法4条1項15号に該当しないとした審決の認定判断は誤りであると主張するので,以下,検討する。

(1) 商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は,当該商標をその指定商品等に使用したときに,当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ,すなわち,いわゆる広義の混同を生ずるおそれがある商標をも包含するものであり,同号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の関連性の程度,取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決民集54巻6号1848頁参照)。


(2) 本件商標と引用商標との対比

 審決は,本件商標の構成について,前記第2の2(2)イのとおり認定した上で,引用商標と対比し,両者は,背景図形の前に左向きで描かれ,前脚を内向きに,後脚を突き出して,尾を略S字状になびかせた赤色の雄牛の図形を描いてなる点において共通するものであるけれども,両者は,背景図形において,グラデーションが施された薄茶色の盾状の図形と黄色の円図形との違いがあり,雄牛は,本件商標においては背景の盾状図形の中央部分にバランスよく配置されているのに対して,引用商標のそれは,頭部が円図形の中に配置され胴体は円図形の外に配置されており,背景の円図形と雄牛の配置上のバランスを欠くものであり,さらに,全体の姿勢において,本件商標の雄牛は左上方に跳躍している姿勢であるのに対して,引用商標の雄牛は上半身をやや持ち上げた状態で,前方へ突進する姿勢を表してなるものであって,両者は,背景図形と雄牛の配置上のバランスの違い,雄牛が縁取りを有する点とシルエットである点の違い,雄牛の姿勢が左上方に跳躍している状態と左前方へ突進する状態との違いがあることから,両者は,外観上,その印象を異にするものであって,外観において類似するとはいえないというべきであるし,両者は,称呼及び観念上においても類似するとはいえないものであり,その類似性の程度は低いものである旨判断した。これに対し,原告は,本件商標と引用商標とは,雄牛の特徴的な姿勢等が共通しており,審決の認定した上記差異については,些細な点であり,また,取引の実情等を考慮すると,両者の類似性は高いなどと主張する。

ア 本件商標と引用商標の構成

(ア) 本件商標の構成

 本件商標は,前記第2の1(1)のとおりの図柄であり,グラデーションが施された薄茶色の盾状の図形を背景にして,当該盾状図形の中央部分に,左向きの,黒の縁取りを有する赤色の雄牛の図形を描き,当該雄牛は,背を丸め,2本の角を描き,顔と顎を含む頭の部分を前向きにして,両前脚は内向きに軽く曲げ,両後脚は後方に突き出して,尾を略S字状になびかせ,全体として左上方に跳躍している姿勢を表しているとの構成からなるものであって,本件商標の基本的な構成は,概ね,審決が認定したとおりであるといえる。そして,本件商標からは,具体的に描かれた牛の形態に相応して,「跳躍する赤い雄牛」との観念が生じるものと認められるものの,特定の称呼が生じるものとは認められない。

(イ) 引用商標の構成

 引用商標は,前記第2の2(1)アのとおりの図柄であり,黄色い円図形内の右下部分に頭部を配置し,胴体を同円図形の外に配置した,左向きの赤色の雄牛の図形をシルエットで描き,当該雄牛は,背を「く」の字状に曲げ,顎を引いて頭部を低くし,2本の角を前方に突き出し,両前脚は円図形の縁部分に接して,胸元に掻き込むように内向きに曲げ,両後脚は円図形の下側になるように後方に突き出すように配置され,尾を略S字状になびかせ,全体として上半身をやや持ち上げた状態で,前方へ突進するような姿勢を表しているとの構成からなるものであって,引用商標の基本的な構成は,概ね,審決が認定したとおりであるといえる。そして,引用商標からは,具体的に描かれた牛の形態に相応して,「突進する赤い雄牛」との観念が生じるものと認められるものの,特定の称呼が生じるものとは認められない。

イ 本件商標と引用商標との異同

 本件商標と引用商標とは,黄色系暖色調の無地の背景図形の前に,2本の角を突き出し,前脚を内向きに曲げ,後脚を突き出して,尾を略S字状になびかせた左向きの赤色の雄牛の図形という基本的構成において共通するものである。ただし,本件商標と引用商標とを直接対比した場合,背景図形が,本件商標ではグラデーションが施された薄茶色の盾状の図形であるのに対して,引用商標では黄色の円図形である点,雄牛が,本件商標においては背景の盾状図形の中央部分にほぼ全体が配置されているのに対して,引用商標のそれは,頭部が円図形の中に配置され胴体は円図形の外に配置されている点,さらに,全体の姿勢において,本件商標の雄牛は縁取りされ左上方に跳躍している姿勢であるのに対して,引用商標の雄牛はシルエットで上半身をやや持ち上げた状態で,前方へ突進する姿勢を表している点で,それぞれ差異を有することが認められる。

 しかしながら,直接対比した場合の上記視覚上の各差異を考慮しても,本件商標及び引用商標の全体的な構図をみると,本件商標と引用商標とは,いずれも,黄色系暖色調の無地の背景図形の前に,左向きに描かれて角を突き出した赤色の躍動感のある姿勢をした雄牛の図形が配置されるなどの基本的構成をほぼ共通にしており,さらに,雄牛自体の図形の構成上,上記のような様々な一致点を有していることに照らすと,外観上,互いに紛れやすいものというべきである。しかも,本件商標からは跳躍する赤い雄牛との観念が生じ,引用商標からも突進する赤い雄牛との観念が生じるから,本件商標と引用商標は,観念においても,ほぼ同一(又は類似)であるといえる。

 したがって,本件商標は,引用商標と比較的高い類似性を示すものであるということができる。

(3) 引用商標の周知著名性

 ・・・

(4) 引用商標の独創性について

 ・・・

(5) 本件商標の指定商品と引用商標に係る商品

 ・・・

(6) 取引者及び需要者の共通性その他取引の実情について

 ・・・

(7) 混同を生ずるおそれについて

 本件商標と引用商標は,全体的な構図として,黄色系暖色調の無地の背景図形の前に,左向きに描かれて角を突き出した赤色の躍動感のある姿勢をした雄牛の図形が配置されるなどの基本的構成を共通にするものであり,本件商標が使用される商品である自動車用品関連商品等の商品の主たる需要者が,商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者を含む一般消費者を含み,商品の購入に際して払われる注意力はさほど高いものとはいえないことなどの実情や,引用商標が高度の独創性を有するとまではいえないものの我が国において高い周知著名性を有していることなどを考慮すると,本件商標が,指定商品に使用された場合には,これに接した需要者(一般消費者)は,それが引用商標と基本的構成が類似する図形であることに着目し,本件商標における細部の形状などの差異に気付かないおそれがあるといい得る。


 また,引用商標は,自動車関連の分野においても,レッドブル社の商品等を表示するものとして,取引者,需要者の間において著名であり,引用商標をその構成とする使用商標について,多数のライセンス付与され,自動車関連商品等の多様な商品について引用商標を含む使用商標が付されて販売されているところ,本件商標の指定商品には,引用商標の著名性が取引者,需要者に認識されている自動車関連の商品を含むものといえるのであるから,本件商標をその指定商品に使用した場合には,これに接する取引者,需要者は,著名商標である引用商標を連想,想起して,当該商品がレッドブル社又は同社との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるものというべきである。

 したがって,本件商標は,商標法4条1項15号に該当するものとして商標登録を受けることができないというべきであるから,これと異なり,本件商標が同号に該当しないとした審決の判断には誤りがあるといわざるを得ない。

(8) 被告の主張について

ア 被告は,本件商標と引用商標とは,牛の体勢,色彩の差異及び牛以外の構成物の差異により,その印象が明らかに異なるから,外観において容易に区別し得るものであり,いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから,相紛れることのない非類似の商標である旨主張する。

 確かに,本件商標と引用商標とを直接対比すると,前記(2)イのとおり,具体的な構成においていくつかの相違点が認められるものである。

しかしながら,引用商標が高い著名性を有していたことや,本件商標と引用商標からはほぼ同一の観念が生じることなどに照らせば,被告が指摘するような具体的構成における外観上の差異が存在するとしても,引用商標と基本的構成が共通すると認められる本件商標を自動車用品関連の商品を含む本件商標の指定商品に付して使用した場合には,これに接する取引者,需要者において,当該商品がレッドブル社又は同社との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるものというべきである。

 また,本件商標には,外観上,具体的な構成において引用商標と相違する点があるとしても,その基本的構成が引用商標と比較的類似性の高いものであるから,一般の消費者の注意力などを考慮すると,出所の混同を生ずるおそれがあることは前記(6)のとおりである。

 なお,商標法4条1項15号該当性の判断は,当該商標をその指定商品等に使用したときに,当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれが存するかどうかを問題とするものであって,当該商標が他人の商標等に類似するかどうかは,上記判断における考慮要素の一つにすぎないものである。被告が主張するような外観上の差異が存在するとしても,それらの点が,本件商標の構成において格別の出所識別機能を発揮するとはいえないし,単に本件商標と引用商標の外観上の類否のみによって,混同を生じるおそれがあるか否かを判断することはできない。

 したがって,被告の上記主張は採用することができない。

イ 被告は,原告が主張する,ブランドランキング広告費,エナジードリンクの市場シェア,売上本数等は,主として使用商標1及びレッドブル文字商標に係るものであって,引用商標である使用商標2の周知性を立証するものではなく,引用商標の周知性を把握することができないし,レーシングカーの側面,ヘルメットの側面及びゴーグルの側面等に表示されている引用商標は,視覚効果を狙ってデザインされた結果のものであり,レッドブル社がスポンサーとなっていることを表わすロゴにとどまるから,引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,特定の商品ないし役務について,我が国の取引者,需要者の間で広く認識されて著名になっていたと認めることはできない旨主張する。

 しかしながら,引用商標(使用商標2)に接した需要者は,引用商標が,著名なものと認められる使用商標1の構成部分であると容易に認識できるものと推測されることに加え,レッドブルレーシングのレーシングカーやヘルメット等に引用商標(使用商標2)が表示されるなど,引用商標(使用商標2)も使用商標1とは独立して使用されていることは,前記(3)キ認定のとおりである。

 そうすると,引用商標(使用商標2)についても,レッドブル社の業務に係るエナジードリンク(飲料)の商品分野のみならず,自動車関連の分野において,レッドブル社に係る商品等を表示する商標として,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,その取引者,需要者の間に広く認識されており,その著名性は高いものと認められる。

 また,レッドブル社が,使用商標について,多数のライセンスを付与し,自動車関連商品等の多様な商品について引用商標を含む使用商標が付されて販売されていることなどを考慮すると,被告がいうように,レーシングカーやヘルメットの側面等に表示されている引用商標が,直ちに,自動車レース又はレーシングカーのスポンサーであることのみを表わすロゴにとどまるものであるということもできない。

 なお,商標法4条1項15号は,出所の混同を生じるおそれのある商標の登録を阻止する趣旨規定であると解されるところ,同号の「他人の業務に係る商品又は役務」とは,必ずしも他人が現実に行っている業務に限られるものではないから,レッドブル社が,現実に,「自動車レースの企画運営」等の役務や自動車等の製造,販売の業務を行っているか否かは,同号の適用の有無を左右するものではないといえる。

 したがって,被告の上記主張は採用することができない。

ウ 被告は,本件商標の指定商品と引用商標の使用に係る商品(グローブ,ヘルメット,ステッカー等)は,生産部門,販売部門,原材料及び用途のいずれも異なる非類似の商品であり,取引者及び需要者も共通しないから,本件商標は,被告がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標(使用商標2)を想起又は連想させることはなく,その商品の出所について混同を生じるおそれはないものである旨主張する。

 しかしながら,本件商標の指定商品には,日常的に消費される性質の自動車用品関連の商品が含まれ,その需要者は自動車愛好家を始めとした自動車所有者等の一般の消費者であるといえるから,引用商標が現に使用されている分野の商品等とは,共に自動車に関するものとして関連性を有し,需要者を共通にするものであるといえることは前記認定のとおりである。被告が現に具体的に販売している指定商品に係る商品(甲138〜140)と,引用商標が使用されている商品の取引者が異なるからといって,需要者の共通性が否定されることにはならない。

 また,本件商標の指定商品を購入する者が特別の知識を有しない一般の消費者を含むことを考慮すると,需要者全体の注意力が高いと直ちに認めることはできないのであって,本件商標と引用商標とを直接対比した場合に外観上の印象を異にすると考えられる差異についても,需要者の注意が向けられないままに商品の選択,購入がされる場合が少なくないものと考えられる。そして,本件商標は,その全体的な基本的構成が引用商標と類似していることから,外観において引用商標と相紛れる場合が見受けられるのは前記(6)認定のとおりである。

 そして,レッドブル社がライセンス事業等を幅広く行っていることなども考慮すると,いわゆる広義の混同が生じるおそれがあると認めるのが相当である。

 したがって,被告の上記主張は採用することができない。

2 小括

 以上によれば,本件商標が商標法4条1項15号に該当しない旨の審決の判断は誤りであり,原告が主張する取消事由1は理由がある。

 第6 結論

 以上のとおり,原告主張の取消事由1は理由があり,その余の取消事由について判断するまでもなく,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。

なお、本判決の中で引用されている最高裁判決は、商標法4条1項15号の「広義の混同」の意について判示した最高裁判決である『平成10(行ヒ)85 審決取消請求事件 商標権「レールデュタン」 平成12年07月11日 最高裁判所第三小法廷』(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120629363392.pdf

であります。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。