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2018-01-12 ●平成29(行ケ)10048審決取消請求事件 意匠権「建築扉用把手」行政 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

 本日は、『平成29(行ケ)10048 審決取消請求事件 意匠権「建築扉用把手」行政訴訟 平成29年9月27日 知財高裁 』(http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/109/087109_hanrei.pdf)について取り上げます。


 本件は、意匠登録無効審判事件の棄却審決の取消を求めた審決取消請求事件で、その請求が棄却がされた事案です。


 本件では、取消事由2(類否判断の誤り)及び本件意匠の要部認定の判断が参考になるかと思います。


 つまり、知財高裁(第1部 裁判長裁判官 清水節、裁判官 中島基至、裁判官 岡田慎吾)は、

「2 取消事由2(類否判断の誤り)について

(1) 本件意匠の類否等について

ア 意匠の類否の判断基準

 登録意匠と対比すべき相手方の意匠が類似であるか否かの判断は,需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとされている(意匠法24条2項)。この場合には,意匠を全体として観察するとともに,意匠に係る物品の性質用途及び使用態様並びに公知意匠にはない新規創作部分の存否等を参酌して,取引者,需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,登録意匠と相手方意匠とが,意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを重視して,美感の共通性の有無に基づき判断するのが相当である。

イ 本件意匠の要部

 本件意匠に係る物品は,建物の扉に使用される把手であり,把手は,使用者が把持して扉を開閉するという機能を有するほか,それ全体が建物の扉の美感にも大きく影響を及ぼすものである。現に,取引時に用いられる建物扉用の把手のカタログにおいては,建物の扉に接合される把手の底面部を除き,建物の扉に取り付けられた把手全体の写真製品画像として掲載されている(甲2,乙1ないし6)。

 乙1ないし6記載の各製品が原告の製品であり,当該各製品に係る各意匠が公知意匠であることについては当事者間に争いがない(第2回口頭弁論期日調書参照)。そして,参考意匠1及び2並びに上記各意匠によれば,横長棒状で底面が平坦面状であって側面中間部が凹んでいる建築扉用の把手は,原告はもとより,取引者,需要者にとって周知なものであったと認めるのが相当である(乙1ないし6)。

 上記認定事実によれば,取引時に用いられる建物用扉の把手に係る意匠については,取引の実情を踏まえると,建物の扉に取り付けられた底面部を除き,把手全体の外観が最も重視されるものといえる。また,把手を利用する者は,扉を開ける際に側面中間部の凹みを掴むことになるから,側面中間部の凹み周辺の形態も取引者,需要者の注意を惹く部分であるといえる。そして,本件意匠のうち,横長棒状で底面が平坦面状であって側面中間部が凹んでいるという基本的構成態様は,取引者,需要者にとって周知であったことが認められる。

 これらの事情の下においては,取引者,需要者の最も注意を惹きやすい部分は,横長棒状の全体形状及び側面中間部の凹み周辺の形態であるというべきである。

 したがって,本件意匠の要部は,正面の外形状が左右対称の略扁平台形状であることに加えて,側面中央部の凹みの左右縁が略凹弧状に表されている形態であると認めるのが相当である。

ウ 本件意匠と甲1意匠の類否

 横長棒状の全体形状については,正面から見て,本件意匠が左右対称の略扁平台形状であるのに対し,甲1意匠は左右非対称の略扁平行四辺形状であり,とりわけ,その左端部上部が略逆コ字状に突出している。そのため,取引者,需要者にとって,本件意匠及び甲1意匠は,全体として美感に大きな差異があることが認められる。

 また,側面中間部の凹み周辺の形態については,本件意匠では,凹みの左右縁は略凹弧状に表されているのに対し,甲1意匠では,凹みの上部が鋭く屈曲して,下部が緩やかな略S字状に表されており,甲1意匠の凹み周辺の厚みが本件意匠に比べて薄くなっている。そのため,把手の使用感を大きく左右する部分についても,美感に一定の差異があることが認められる。

 上記認定事実によれば,本件意匠と甲1意匠とは,要部である正面の外形上の全体形状の美感に大きな差異があるとともに,使用感を左右する凹み周辺の形態の美感にまで一定の差異があることからすると,基本的構成態様が類似していることを考慮しても,両意匠を全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。

 したがって,両意匠が類似するものと認めることはできない。

(2) 原告の主張について

ア 原告は,参考意匠1及び2は,一見したのみでは作成真正や公開日が明らかでなく,本件事実を認めることはできないなどと主張する。

 確かに,参考意匠1及び2は,公開日が不明である上,斜視図が各1つずつ掲載されるにとどまるため,具体的な構成態様は必ずしも明らかではない。しかしながら,参考意匠1及び2に加えて,原告自身の製品である乙1ないし6記載の合計6つの建築用ドアハンドルも,全体が略横長棒体で底面が平坦面状であり,側面から見て中間部が凹んでいるものであることからすれば,本件事実を前提とした審決の判断には誤りがないというべきである。

 したがって,原告の主張は,採用することができない。

イ 原告は,取引者,需要者は把持する部分の周辺の形態に最も注目するから,必然的に端の部分に対する注意は薄くなることを前提として,把持する部分の周辺の形態は,?一端側又は他端側から見ると,両側面の湾曲した窪みを境にして,扉に固定する側において脚が曲線状の略台形状を有しており,使用者が把持する側が細長い円形状を有し,?扉に固定する略台形状の脚の縦幅及び横幅が,細長い円形状の把持部におけるそれらよりも,それぞれ長いという点において,本件意匠と甲1意匠との間で共通するから,参考意匠1及び2を公知意匠として参酌したとしても,上記の共通点は,本件意匠と甲1意匠の類否判断の結論に影響を及ぼすことになるなどと主張する。

 しかしながら,上記把持する部分の周辺の形態をみても,本件意匠と甲1意匠では一定の異なる美感を与えることは,上記(1)ウで説示したとおりである。のみならず,把手は,扉を開けるという機能を有するほか,それ全体が建物の扉の美感にも大きく影響を及ぼすものである。現に,建物扉用の把手のカタログには底面部を除く把手全体の写真が掲載されているという取引の実情を踏まえると,建物扉用の把手については,その底面部を除き,全体の外観が最も重視されるものといえる。

 したがって,原告の主張は,その前提を欠くものであり,採用することができない。

ウ 原告は,本件意匠と甲1意匠に係る物品は建築扉用の把手であり,使用者は,把持した場合の使用感を重視するため,把持する部分の周辺の形態に注目するから,必然的に端の部分に対する注意は薄くなり,端まで観察することによって初めて認識できる審決認定に係る差異点によって,両意匠が非類似になることはないなどと主張する。

 しかしながら,前記イのとおり,把手は,扉を開けるという機能を有するほか,それ全体が建物の扉の美感にも大きく影響を及ぼすものであるから,底面部を除き端の部分も含めた把手全体の外観が最も重視されるというべきである。

 したがって,原告の主張は,採用することができない。

(3) 小括

 以上のとおり,本件意匠が甲1意匠と類似しないとした審決の結論に誤りは認められず,そのほか,原告の縷々主張するところは,いずれも実質的には本件事実の認定の誤りをいうものに帰し,上記判断を左右するものとは認められない。

第6 結論

よって,取消事由はいずれも理由がないから,原告の請求を棄却することとして,主文のとおり判決する。』

 と判示されました。

 詳細は、本判決文を参照して下さい。