新・凡々ブログ

主にクトゥルー神話のことなど。

まずい寿司

 まずい寿司を私が食わされたというわけではなく、これはシェリー=プリーストのクトゥルー神話小説の題名だ。The Book of Cthulhu に収録されており、原題は"Bad Sushi"という。
 主人公は米国の寿司屋で働く日本人の板前。78歳で、かつて日本軍の兵士としてガダルカナル島で戦ったことがある。バクという名前なのだが、漢字で何と書くのかは不明。普通に寿司を握っているだけでネタの善し悪しが判断できてしまうほど嗅覚が鍛えられているという一流の職人らしい。
 ある日、板場に立っている最中にバクさんは戦場のことを思い出した。ガダルカナル島から撤退するとき、触手を備えた謎の生き物につかまって海の底に引きずりこまれそうになったもんだ……。しかし、なぜ急に思い出したんだろうか?
 一方、バクさんの勤めている寿司屋は経費削減のためにネタの仕入先を変えていた。想像に難くないだろうが、新しい仕入先の背後には深きものどもがいたのである。切り身の形で納入されるのでわからなかったのだが、彼らが売っているのはガダルカナル島でバクさんを襲ったのと同じ怪生物の肉だった。道理で戦地のことを思い出すわけだ。
 海魔の肉を食べたものは心身に変調を来し、怪物化してしまう。気がつくと、バクさんの周りは客も同僚も深きものだらけだった。彼らの追跡を振り切ったバクさんは意を決し、刺身包丁を手に敵の拠点へと乗りこんでいくのだった……。
 板前対深きものどもという冗談みたいな話だが、おもしろく読むことができた。作中で描写されている寿司が猛烈にまずそうなのだが、何しろ題名が題名なので、おそらく意図的なものなのだろう。

The Book of Cthulhu

The Book of Cthulhu

  • 作者: Cherie Priest,Joe R. Lansdale,Charles Stross,Caitlin R. Kiernan
  • 出版社/メーカー: Night Shade Books
  • 発売日: 2011/09/01
  • メディア: ペーパーバック
  • クリック: 3回
  • この商品を含むブログを見る