常念岳(六座目/百)〜蝶ヶ岳縦走2/2


三股からの登りで疲労困憊の身体に酒を注ぎこみ、身動きすらできず、眠れず明けた二日目。

午前3時にはご来光を見ようと登山準備を開始する客のゴソゴソで騒然とし始める。元より眠れなかった私はやむなく起きる。二日酔いというよりもまだ酔いそのものが残っている状態でとにかく最悪な気分。朝食は5時から先着順ということだけど、この客の数では何時にありつけるか分からない。出発が遅れればあとの行程に響くので、朝食は諦めて4:00に出発。
設備の整った綺麗で良い山小屋なんだけど、こんだけ詰め込んで客商売としてよく良心が痛まないよな。何目線の達観なのか、山小屋はそれが普通だとかぬけぬけと言う人もいるが、こんなもん普通じゃないよ。



4:50日の出。とっくに山頂についてても良い時間だけど、体調最悪だし寒いし暗いし、もたもた歩きまだ道半ば。暗いうちから常念山頂に続く登山道はヘッドランプが連なり、遠く槍ヶ岳山頂にもライトが瞬いていた。



朝日に赤く染まる北アルプス。ああ綺麗。こういう景色は単純に心動かされる。しかし、ご来光を有難がる太陽信仰ってのが私には全く理解できない。そんなに有難いなら下界でももっと太陽に感謝なさい。



5:50常念山頂。人が10人も立てばいっぱいになってしまうこの尖った山頂に、先ほどまで随分多くのご来光登山者が陣取っていた。やっぱ私にはそういうのが、運動会の場所取りをする保護者みたいにあさましく感じる。狭い場所で我先に所有権を主張して腰に根を生やし座り込む人は邪魔だし嫌い。とかいつも牛歩で渋滞を引き起こす糞邪魔な私が言ってみる。
まあ私も常念小屋から常念山頂まで2時間もかけてなにやってんだよって話だが、そんな混雑を避けることができたので結果オーライなのである。



山頂から見下ろす安曇野の町。いつの間にか雲海は去っていたのでよく見える。さぞ厳しい寒さだろうが、こんなところで暮らせるって羨ましい。いつか長野県民になりたい。



蝶ヶ岳への縦走路。小屋はあれほどの大混雑だったけど、こっちに進んでくる人はほとんどいない。



そろりそろり



そろりそろり



7:45、樹林帯へ。そろりそろりの下山が、ほぼ徹夜(しかも二日酔い)の身体に酷くこたえて、黙り込んで歩き続ける。



草原の道を再び登り返す。今更ながら、縦走って登ったり下りたりするんだなあ……と気付いて泣きたくなる。登るとかもうね……



ゼエハアしながら進む。眼前に広がるこのそうそうたる雄大な光景もそれがどうしたの、て感じ。ああ慣れって恐ろしい!とにかく疲れてたの私。



10:30、蝶ヶ岳ヒュッテ到着。無言。あったかいものを食べたかったけど、食事の提供は11時からということだったので諦め、持ってきたパンを食う。冷たい。でも文句も言わない。無言。



ここまで散々歩いてきたけど、ここからがようやく下山。足の肉球のとこと、親指が痛くて堪らず歩きがどんどん遅くなる。無言。



下りる(無言)



下りる(無言)



着いた……。

14:20三股登山口に到着。しかしここから車まで1キロ以上ある。この、登山口からの歩きってあらゆる面において苦行。この辛さ、登山道の比じゃない。
槍穂を見られたのは良かった。でもあとは苦いことが多かった。次来るなら蝶ヶ岳ヒュッテに来たい。ていうか根本的に体力が必要。