舞城王太郎『煙か土か食い物』

煙か土か食い物 (講談社文庫)

煙か土か食い物 (講談社文庫)

 でもそんな今でも奈津川家なんて本当は滅びてしまえばいいと思う。俺たち家族なんてバラバラで遠くに離れて何の接点もなく連絡を取り合うこともなく子供も作らず伴侶も作らず生きて死ぬべきなんだと思う。それが世のためだ。俺達は揃って煙か土か食い物になってしまうべきなんだ。
 でも結局家族は生きてるうちに、そして死んでからも引きつけあうのだ。万有引力と同じくそもそも逃れられない力なのだ。……

 舞城王太郎のデビュー作。おもしろいです!カテゴリ的にはミステリーになるのだけれど、そのカテゴリ以上に物語世界の「強さ」が伝わってくるんですよね。「家族」というのが、彼のとても大きなテーマで、それがかなり強く関わっている気がします。何というか、泥臭いというか、重たいというか、地に足がついたというか、そんな話になっている。諸所の引用から垣間見える舞城さんの知性もたまらんです。
 あと、最初に出した伏線を回収することにどこか偏執狂的なこだわりを感じます。そこらへんがやっぱりミステリー小説で、いいところでもあるのだけれど、個人的には、デジタル音源のシャキシャキした曲を聴いてるような感覚を感じたので、もう少しアナログというかおおざっぱなものも好きかなと思いました。「好き好き大好き超愛してる」とかは少しそんな感じだったかな……?もう一回読み直してみよう。

 「文壇」で彼の作品が純文学であるか否かで意見が割れているようですが、そんなの関係ないよ。面白いものは面白いんだ。文学のための文学よりぜーんぜん好きです。