マチェーテ 【Machete:2010】

というわけで本当は今日はパスしようと思ったけれど、よく考えると見に行けるのは今日しかなかったので夜の回を見に行った。レイトショーの一本手前。


『マチェーテ』(過激な何かが出てくるらしいので注意)


いやー、数ヶ月前にネット上で予告のビデオを見ていたときから予感はあったけれど、それを上回るまれにみる見事なアホ映画だった。


出てくる連中の顔の濃いことといったら『ウエスタン』以上でしょ。そういう連中が揃っているにもかかわらずなお目立ってしょうがないほど、濃くて暑苦しくて皮が分厚くて醜い顔をしているのが主役のマチェーテを演じているダニー・トレホ。けっこう見覚えのある顔だけど主役でみたのはこれが初めて。ひょっとしたら主演したのが初めてかもしれない。でもこの人の顔でこそ、という映画のような気もする。


内容は家族を殺された元メキシコの警察官・捜査官のマチェーテアメリカで陰謀に巻き込まれ、悪党どもと戦っているうちに妻と娘を殺した敵トーレススティーヴン・セガール)と対決するというもので、シンプルで悪くない。ただこうあちこちにコメディの要素を入れていて、あれはもうちょっと少なくてもいいんじゃないのかなーとか思った。笑ったけどね。


マチェーテを陰謀に直接ひきいれた悪役のブースというおっちゃんが渋くていいんだわ。ひげ面でスーツが似合ってでかい銃を軽々と扱いチンピラどもをぶち殺す。頭は悪いけど、脚本からくる要請だろうな。もったいない。あ、このひとジェフ・フェイヒーっていうのね。ひげがないとだめな顔だな。ずっと生やしておけ。


ロバート・デ・ニーロが悪い上院議員やっていてなぜか途中で『ヒート』になったと思ったら…最後まで面白い、一粒で二度おいしい感じの役だった。それに引きかえ、自警団のリーダーをやっていたドン・ジョンソンはしょぼく、最期すら映ってなかった。まだマーロン・ブランドが若くて元気な爺さんならぴったりだし(『チョコレート』の影響かも)、最期もちゃんと見せ場を作ってもらえたかもしれない。


ま、濃い顔のおっさんが多いので余計にそう思うのかもしれないけど、ジェシカ・アルバかわえええええええええええええ!たまらんな。もうピンヒール履きながら捜査とか寝ぼけたこと言ってても許しますよもちろん。私もそこそこ紳士なので隣で寝かせてください。


リンジー・ローハンも頑張ってたけど、いまいちだな。すっぽんぽんになってたけど乳首は死守しましたって感じだった。そこもぼーんと出しちゃえばよかったんだよ。母親のなんていらんいらん。


この映画、メキシコ人だらけのアホ映画ということで『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を思い出したけどダニー・トレホ出てたよな、確か。あの映画を外に向けてどどーんと広げてうまくいったのがこの『マチェーテ』で、やりたいこと取りあえず全部ぶち込んでみましたといって失敗したのが『ドゥームズ・デイ』という感じ。もちろん『マチェーテ』が一番いい、というかこれしか良くない。


実は私、この映画見てビリビリ来たんだけど、それは、この映画くらいのテンションとスピード感とアクションの重さを持った日本の映画がどうしても見たいと常々思っているから。で、このまえ『十三人の刺客』を見に行ったのも、ひょっとしたら三池崇史監督ならそういう映画が撮れるかもしれない、と思っていたのでそれを確かめる目的もあった。三池監督で方向性はいいかもしれない、とか思ったけども『マチェーテ』みたら吹っ飛んでしまった。


私は生きているうちにどうしても見たい日本映画がある。それはこれ。


キリコ 1 (モーニングKC)

キリコ 1 (モーニングKC)




この木葉功一が描いた『キリコ』を日本の映画として見たい。見たい。普段どんな題材でもアニメーション映画で気にならない、あるいはアニメーションで良かったと思っているんだけど、こればかりはアニメーションじゃ駄目。実写でこれを撮ってほしい。それもこの『マチェーテ』の1.2倍ほどの勢いとパワーで最初から最後まで2時間ぶっ飛ばすような映画にしてほしい。誰でもいいから撮ってくれ。舞台も登場人物も原作通りでないといけない。画面のトーンは東京ではグレー、東南アジアではうっすら黄色がかって粘っこい湿度の高そうな感じで緑が濃く見えるようなやつで。


原作はある。でも撮れる監督が見つからない。主役を演じる役者も見つからない。元刑事の遊佐朗はでっかい体でなくてはいけない。まっすぐ向かって来る自動車にむかって自転車ぶち込んで運転手を殺すんだから。つないでいる鎖ごと壁をはがさないといけないんだから。


でもそんな役者いない。体だけでいえば坂口憲二ぐらいあればいい。いいというよりぴったりだ。いいけど坂口憲二に獰猛で野獣のような遊佐の役は出来ない。どう見たって清潔でまっすぐな優等生しかできない。役者として化けてくれれば私の知る限り坂口憲二が一番いいんだけど。あとキリコも見つからない。いま日本でキリコ役、とかいうと黒木メイサとかになっちゃうんだろ?駄目なんだよな。


人とは思えない、というより化けものとしか見えない殺し屋・朧崎もCGじゃ駄目だ。人間の動きではないけれどそこは撮影でなんとかしろ。撮り方編集のやり方でなんとかしろ。


とにかく『キリコ』を実写の日本映画で見たい。これ1本撮ってくれたらこれまで見てきた糞みたいな邦画全部許すからさ。これから先の糞邦画だって許すよ。