【Book】新・自虐の詩 ロボット小雪

業田良家 著、
竹書房 刊、
人間は自分の力だけでは幸せになれないのか。

 ロボットが普及した時代。高校生の拓郎は、友人広瀬と恋人ロボットを自慢し合っていた。
 広瀬の恋人ロボットはレンタルの最新型で、呼吸も食事もするし感情表現も豊かで人間と見分けがつかない。それに対して拓郎の恋人ロボット・小雪は、旧式で機能も低い。料理は下手でおにぎりは正三角形、風呂で背中を流すのに防水スーツを着込み、ネットの情報が晴れなら実際に雨が降っていても洗濯物を取り込まない気の利かなさである。
 そんな小雪だったが、拓郎と暮らし続ける内に細かい作業や仕草を覚え知識も豊富になり、徐々に成長していくのだった。

 ここまでが起・承にあたる話である。ロボット物では珍しくない展開だが、コミカルな中に毒があり、著者独特の味付けが巧妙で新鮮に味わうことができる。
 そして転・結は想いもよらない方向に話が進む。著者が「自虐の詩」シリーズとして描くからにはこのままでは終わらないだろうと思っていたが、こういう展開は予想していなかった。
 ラスト1ページは、明日への希望とも、破滅への序曲とも解釈できる。

■著者情報
業田良家 - Wikipedia

■書誌情報
新・自虐の詩 ロボット小雪(2008.07.30/2008.08.06)

■装丁
関善之(VOLARE inc)