Oxonian’s

韓国の大学で働いてます。EBSラジオ『たのしい日本語』も担当中です。

「カレッジ」という制度について

友人などから、よく「カレッジって何?」という質問を受けることがあります。この質問、意外と答えるのが難しいんです。今日は、このブログで僕なりの答えを出してみようと思います。

まず、"college"という単語自体は、中学生か高校生の時に習うと思います。その時に習う意味は「(単科)大学」です。ただ、オックスフォードで "college" という用語を使う際には、この意味では使われていません。

実際に、英語の辞書を弾いてみると、次のような記述があります。
1.⦅主に米⦆(一般に)大学, カレッジ
途中省略
5.⦅英国用法⦆(Oxford, Cambridge大学などの一部をなす自治組織としての)学寮

つまり、"college" という単語は、オックスフォードやケンブリッジなどの一部の大学で使われる場合には特別な意味を持っており、日本語では「学寮」と訳されます。

では、そもそも「学寮」とは何でしょうか。まず、注意しなければならないのは、「学寮」は「学部」とは異なる概念です。オックスフォードには40近くの「学寮」がありますが、これは「物理学部」や「医学部」などの「学部」とは異なるものです。例えば、僕の所属する St. Catherine's College という学寮には、法律を学ぶ学生もいれば、数学を専攻する学生もいます。つまり、学生は、学寮と学科のそれぞれに所属することになります。

ここまでのことを、ちょっとまとめておきましょう。ポイントは次の2つです。
1. オックスフォードやケンブリッジなどで "college" という用語を使う場合は、特別の意味で用いられている。この意味で用いられる場合は、日本語では「学寮」と訳される。
2. 「学寮」は「学科」とは異なる概念であり、学生は学寮と学科の双方に所属することになる。

ちなみに、学寮と学部は別の概念ですが、双方が全く無関係というわけではありません。というのも、学寮によっては力を入れている分野が異なるからです。例えば僕の St. Catherine's College では、化学が特に強いです。だから、St. Catherine's College には、化学科に属する学生が比較的多いです。

オックスフォードに出願する際に、学生は希望のカレッジを特定しなければなりません。カレッジの選択は、学問に関する要因だけではなく、奨学金や指導教官など、他の様々な要因が絡んできます。周辺的な要因としては、例えば、ハリー・ポッターみたいな生活をしてみたいという人がいれば、Christ Church College が良いでしょう。また、Arne Jacobsen 設計の建物で過ごしたいというのであれば、僕の所属する St. Catherine's College になります。

また、「オックスフォードの学生はカレッジに住んでいる」という話をよく聞きます。実際、インターネットなどでオックスフォードの紹介を見ると、このように書いてあることが少なくありません。でも、これは正確には正しくありません。確かに各カレッジは寮を持っていますが、部屋には限りがあるので、全員が寮に住めるわけではありません。例えば、St. Catherine's College では、大学院生は通常は1年間しか寮に住めません。大学生でも、確か、3年間しか住めなかったと思います。だから、就学期間が長い医学部などに所属する学生は、数年間はカレッジ以外に住むことになります。

カレッジに関する説明は、大体以上のような感じになります。これを口頭で説明するのは、なかなか難しいです。なので、最近は「カレッジって何ですか?」と聞かれた時には「ハリー・ポッターで言えば、グリフィンドールとかスリザリンのようなものです。」と答えることにしています。回答としては、当たらずとも遠からずといった感じでしょうか。

下の写真は Bariol College です。この快晴、いつまで続くのか。