春日狂想

『orange』

 わさびドラの映画定番ネタで「温かい目〜」というのがある。翔を囲む面々が揃いも揃ってそんな訳知り顔の温かい目をしはじめてからは、とにかくいたたまれない気持ちになった。逃げて、翔、と思った。
 作中言われるような形でパラレル世界が分岐生成されるのだとしたら、より悪い結果に至った世界だってありえたはずで。その中から都合のいいパラレル世界の夢を見せられたに過ぎない、そんな印象をどうにも拭えない。
 手紙の言いなりに振り回されることは、現在を無みするようで、何よりそれがつらい。ツァラトゥストラ的肯定を、とまでは言わないにせよ。