「原形のままでの食品摂取を」−臨時国会で議論白熱

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現在開催されている臨時国会に,食卓の風景を大きく変えそうな法案が提出され,30日から審議がスタートした。平成17年に制定された「食育基本法」改正法案がそれだ。


食育基本法は,国民の健全な心身を養ううえで食育が重要であるとの認識のもと,その基本理念や施策の基本事項等を定めたもの。
ただ,食をめぐっては「食材選別力の涵養」「食品廃棄率の低減」「肥満の防止」など,様々な課題が山積状態にある。
こうした課題を一気に解決すべく,今回の改正法案に盛り込まれたのが「原形のままでの食品摂取推進」だ。


外食・内食を問わず,近年の加工食品の利便性向上には著しいものがある。ただ,そうした利便性は半面,消費者が素の食材自体を見極める機会を失わせている。
このため,自分が食べている食材がどのように生育し,本来はどのような姿なのかを知らない子供達も急増している。
また,食材そのものを知らないことは,食に対する畏敬の念の低下につながり,これが安易に食品を廃棄する心理的背景になっているのではとの指摘もある。
さらに,近年の研究によれば,食材の原形に近い形での摂取には,ダイエット効果があるとされている。
こうしたメリットを追求すべく,原形のままでの食品摂取を推進するべく,食育基本法改正法案が上程されたものだ。


30日の衆議院農林水産委員会でスタートした審議は,改正趣旨自体については与野党ともに理解を示したうえで,具体的な食材の扱いをめぐって激しい議論が戦わされた。


与党・自由民主党のA議員が取り上げたのが「アンコウ」の扱いだ。
アンコウは,冬の鍋料理の王様ともいえる食材。「アンコウの七つ道具」と言われるくらい,あらゆる部位が美味しく食べられる高級魚として知られている。
ただ,その姿自体はグロテスクと感じる人が多いのも事実だ。
A議員はそうした点について,「今後,アンコウ料理はどのように食べることを推奨するのか」と質問。これに対して政府参考人は「例えば鍋料理店では,客席の目の前でいわゆる『吊るし切り』により解体することをお願いしたいと考えている」と答弁,他の出席議員らからは「刺激が強すぎる」「いや,かえって客は喜ぶはずだ」などと不規則発言が相次ぎ,一時場内は騒然とした。

次に質問に立った民主党のB議員は,「ザーサイ」を題材とした質問を行った。
一般には完全に加工された状態でしか知られていないザーサイは,もともとアブラナ科の植物であり,球形状に肥大した茎の根元部分を食べるもの。
したがって,原形で提供しようとすると,直径10〜15cm程度の球形のザーサイを「丸かじり」させることとなる。
この点についてB議員は「ザーサイはそんなに大量に食べられるものではなく,むしろ廃棄ロスの増加に繋がるのではないか」と,ザーサイは対象外にするよう迫った。これに対して政府側からは「一緒に食事をする人たちで切り分けて食べれば問題はない」と突っぱねた。

その後,「タチウオ」「ウミタケ」などに関する議論が続いた後,日本共産党のC議員が行った「酢豚」に関する質問で場内は衝撃に包まれた。
C議員は「原形に近い姿で実際に酢豚を作ってみたので皆さんでご賞味を」と,委員会室内にその料理を運びこんで紹介。
巨大な皿の中央には,子豚の丸揚げが鎮座し,その周囲を丸ごとタマネギ,葉っぱもついたニンジン,皮付きタケノコ,棘が付いたままのパイナップルなどが彩っているというダイナミックな姿。
調理を担当した中華料理店経営の周富徳氏(70)は,「具材が大きすぎて中華鍋に収まらない」「餡がからみにくい」などの問題点を指摘した。
C議員が「さあ,皆さん味見してください」と勧めるものの,他の議員らの箸は全く進まないまま,沈黙の時間が続いた。
その後再開された議論は,大皿の中で異彩を放っていたパイナップルの扱いに集中,「せめて皮は剥いてから投入すべきだ」「いや,そもそも酢豚にパイナップルは不要」等,虚しい議論の応酬が続いた。

11月中には本法案は可決される見通しだが,その先にも難題が待ち構えている。
2020年の東京五輪開催に向け,外国人観光客の「おもてなし」策を検討する必要があるが,原形に近い食材には拒否反応を示す国民・民族が多いのも事実。
そうした観点からの対応など,実施に向けては様々な課題が浮かび上がりそうだ。