横田増生「ユニクロ帝国の光と影 (文春文庫)」

山口の紳士服店を一大企業へと成長させた柳井社長、そしてその周辺へのインタビューを通して、ユニクロの経営手法と働く現場の光と影を浮かび上がらせたドキュメント。少々取材対象を悪く言う方向が強い部分がないではないが、全般としてはとても中立的に書…

内田和俊「最強チームのつくり方 「依存する人」が「変化を起こす人」に成る (日経ビジネス人文庫)」

献本御礼。七年前に書かれた単行本の増補改訂版とのことだが、仕事の現場で問題となってくる人間関係への目配りの良さは、全く古さを感じさせない。 けっこうな意欲作、人によっては問題作だな、と感じさせられたのが、仕事には「職務遂行能力」だけでなく「…

浦久俊彦「フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか (新潮新書)」

タイトルがもっと直球だったら目に留まる人も多いのでは、少しタイトルで損をしているな、というなかなか面白い一冊。 何年か前にブタペストを訪れたことがある。そこにフランツ・リストが弟子をたくさん育てた「リスト音楽院」があり、非常にその展示と、リ…

「植物の軸と情報」特定領域研究班「植物の生存戦略―「じっとしているという知恵」に学ぶ (朝日選書 821)」

「動かない」植物が、どのように環境に合わせて生きているのか、その生存戦略がさまざまな研究により明らかになってきている。本書は、そうした研究に関わる植物科学系の研究者が、その知見を広く一般に向けてまとめたものである。 と書くと普通だが、この本…

手塚眞「父・手塚治虫の素顔 (新潮文庫)」

実際に読んだのは2年以上前。子どもができて今、あらためてぱらぱらとめくると、仕事が大好きな人間が、どうやって自分の子どもと向き合うか、ということについて考えさせられる。 本当に忙しい時、父は家族の前に滅多に姿を現しません。まるで天然記念物の…

木村俊介「「調べる」論 しつこさで壁を破った20人 (NHK出版新書)」

インタビュアーの達した一つの結論として、これほど「話を聞くこと」「話をすること」の面白さに迫ったものはないかもしれないと思った著者の言葉から。 「相当な大物であっても、話が目の前の人にも興味深いものかどうかと不安を感じがちである」(p268) …

遠山顕「脱・「英語人間」 (生活人新書)」

いいかげん、海外の研究者と国際学会などで積極的にコミュニケーションを取る必要に迫られている。立ちはだかるのは、英語という壁。単に、不安なだけなのかもしれないと思いながら、足を踏み出せずにいるのだ。 この本をたまたま再読したのは実にぴったりな…

羽生善治・白石康次郎「勝負師と冒険家―常識にとらわれない「問題解決」のヒント」

「勝負師」こと、トップ棋士の羽生さんと、「冒険家」こと、海洋冒険家・ヨット乗りの白石さんの対談。とある講演会で出会った全く違うバックグラウンドを持つふたりの、意気投合して語り合う姿が目に浮かぶ。 常に何かにこだわらず、偏らず、正直に、自分が…

「桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)」

面白いという話を目にしながら、日々の忙しさに追われ見ないでいる…そんな映画はいくらでもある。今回は、日ごろからそのセンスと考え方を尊敬している後輩に勧められ、「よしっ」と思い見てみた。ある高校の、たった何日かの出来事と人間関係を描いただけの…

竹内薫「科学嫌いが日本を滅ぼす」[rakuten:hmvjapan:11741057:image]

「サイエンス」「ネイチャー」と言えば科学者でなくても知っている二大科学誌である。本書は、多方面で活躍中のサイエンスライターが、この二大科学誌の創刊の歴史、少しずつ違うコンセプト、それらに載せてきた科学者たちのスキャンダルなどを語りつつ、日…

藤堂具紀「最新型ウイルスでがんを滅ぼす (文春新書)」

著者は東大医科学研究所の研究者。この本で焦点を当てられているのは「難治がん」と呼ばれる悪性脳腫瘍などのがんである。なかでもグリオーマと呼ばれる脳腫瘍の四分の一を占めるタイプの腫瘍は、『周囲の脳に浸み込むように広がっていき、正常な脳との境界…

羽生善治「直感力 (PHP新書)」

何やらアマゾンのレビューにそんなことが書いてあった気がするが、これは、研究者にとっては、かなりすごい本である。いろいろな言い方があると思うが、この本に結びつく形で書けば、自然科学の研究とは、自然界の法則を探る営みである。こういう結果が出た…

羽生善治「決断力 (角川oneテーマ21)」

最近、ふたたび将棋に熱中しだした。しばらくの間離れていたのだが、久しぶりに触れてみると、いろいろと得るもの、考えるところがあっておもしろい。棋界の第一人者、羽生さんのこの本は、2005年のもの。もちろん出ていることは知っていたが、当時は、…

島朗「島研ノート 心の鍛え方」

将棋の本であるが、一切棋譜はない。タイトルどおり、何かを極めるためにどういった心の持ちようが必要なのかを一般の人々に語る、エッセイである。著者は、将棋棋士である。一般的な認知度は高くないかもしれないが、ぼくが将棋にはまっていた小学生のころ…

齋藤孝「上昇力! 仕事の壁を突き破る「テンシュカク」仕事術 (PHPビジネス新書)」

何となく仕事にやる気がなく、衝動的に買ってしまった。日々のテンションを高めることが大事、と述べる部分で、「ビジネス啓蒙書を読むだけでもいい」「手軽に読んで上がったテンションは、賞味期限も短い」と書きつつ「忘れてしまうなら、毎日読めばいいだ…

長野慶太「部下は育てるな! 取り替えろ!! : 勝つ組織を作るために (知恵の森文庫)」

「焚書」と表紙にあり、かなり過激でうさんくさいと著者自ら述べるビジネス書であるが、実にこれがまっとうで、これのどこが過激で焚書ものなのかと、世間の組織のあり方を疑問に思わざるを得ない。 例えば、タイトルの、部下への接しかたについては、こう書…

内田樹「先生はえらい (ちくまプリマー新書)」

思うところあり再読。前に読んだのはもう6、7年も前のことだ。そのときは、こんなことを書いた。 著者曰く、師が何を知っているかは弟子にとって問題でない。弟子が、「師が自分の知らないことを知っているはずだ。それはなんだろう、何を伝えようとしているのだ…

佐藤優「人間の叡智 (文春新書 869)」

彼の本は難しい、という声があり、編集者の求めに応じて語り下ろし形式で書いた、と著者が述べるこの一冊。語られるのは、お得意の国際関係、政治のありかたについてであるが、それが日常の仕事や生活に結びついてくるようなところが、語り下ろしの良さとい…

竹内健「世界で勝負する仕事術 最先端ITに挑むエンジニアの激走記 (幻冬舎新書)」

一人の世界的エンジニアが世界を相手にハードな競争に挑む…というイメージだったが、良い意味で読んだ印象は少々違った。企業への就職など考えていなかった一人の若者が、熱い思いを語る先輩に感化されて半導体のエンジニアの世界に入り、世界と勝負するに至…

山口周「天職は寝て待て 新しい転職・就活・キャリア論 (光文社新書)」

筆者は、幸せな職業人生を歩むためには、転職活動そのものを表面的にうまくこなすよりも、実際に転職活動に至るまでの、ごく普通の日常をどのように過ごすか、あるいは転職後しばらくして陥りがちな落とし穴をどう避けていくか、といった点のほうがずっと大…

鈴木宗男・魚住昭・佐藤優「鈴木宗男が考える日本 (洋泉社新書y)」

「戦後保守政治家の末裔」という呼び方が大げさながらも的確な政治家、鈴木宗男。一度は政治の世界から葬り去られたと思われた彼がなぜ、今また活躍しているのか。彼を良く知る二人が、彼のスタイル・政治信条とともにその秘密を語る。 消費税増税で国会が揉…

湯川豊「須賀敦子を読む (新潮文庫)」

担当編集者が語る須賀敦子。彼女の回想風のエッセイはどれも、その美しい文章とはっとさせられる人間ドラマで何度読み返しても飽きない。 須賀敦子が多くの人に読まれる文章を書き始めたのは、彼女が50代半ばになってからである。自分で文章を書きたいと願い…

岡崎京子「チワワちゃん (単行本コミックス)」

最近映画で話題をさらった岡崎京子の本のうち、何冊か有名なもので家になかったのを読んでみることに。まずはこれ。 どれも、女の子たちの刹那的な生き方と、満たされない毎日と、そんな彼女らにとっての幸せとは、といったことがクスッと笑わされるウィット…

細将貴「右利きのヘビ仮説―追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化 (フィールドの生物学)」

「フィールドの生物学」と名付けられたシリーズにふさわしく、フィールド感・現場感にあふれる生物学が展開されるわくわくする一冊であった。 分子生物学実験にやりがいを感じない学部生時代を過ごしていた著者は、旅行と生物が好きな若手研究者である。大学…

相原孝夫「会社人生は「評判」で決まる 日経プレミアシリーズ」

個人の自立、組織からの独立、属さない生き方…そういうキーワードで仕事のしかたが語られることが多い近年、しかし、そうした本を読んでもピンと来ない人も少なくないはずである。この本は、そういう風潮に疑問を抱き、真っ正面から、組織で仕事をする人のあ…

小林秀雄・岡潔「人間の建設 (新潮文庫)」

後輩に借りてさらっと読んだ。言わずとしれた小林秀雄と、大数学者岡潔による対談である。 むずかしければむずかしいほど面白いということは、だれにでもわかることですよ。そういう教育をしなければならないと僕は思う。(p11) という小林秀雄のコメントか…

小松達也「英語で話すヒント――通訳者が教える上達法 (岩波新書)」

ひさびさに英語勉強本を。同時通訳の現場で活躍する著者が、我々はいかに日本語を生かしながら英語「で」話すべきか、についてアドバイスしてくれる一冊である。 相手に分かりやすく話すためには,まず頭の中で考えをまとめ整理することが大切です.そしてこ…

吉澤大「儲かる会社にすぐ変わる! 社長の時間の使い方」

税理士・中小企業診断士などの資格を持ちコンサルティングを行っている著者が、儲かる会社にするために社長がどのように仕事をすべきか、についてアドバイスする一冊。『自らコントロールできる時間領域がはるかに大きい(p3)』社長だからこそできる仕事術…

堀正岳「理系のためのクラウド知的生産術―メール処理から論文執筆まで (ブルーバックス)」

話題の一冊。もはや説明不要のG mail、Dropbox、Evernoteから、Mendeleyというソフトによる文献管理、それらのより応用的な使い方まで懇切丁寧に解説している。理系研究者以外にも役に立つのは間違いないが、ますます雑用が忙しく時間のなくなる時代、クラウ…

駒崎弘樹「働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)」

『常に忙しいことに、僕は誇りを感じていた。(p34)』というベンチャー企業の経営者が、ふとしたきっかけから、自分の働き方のスタイルの変革を試みる。いろいろな試みにより職場での仕事の効率化をはかり、たどり着いたのは、家族のこと、自分の身体のメン…