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2017-05-21 小説家と詩人による共同生活の記録

[]夫・車谷長吉 夫・車谷長吉を含むブックマーク 夫・車谷長吉のブックマークコメント


高橋順子さんが、『夫・車谷長吉』を、三回忌に合わせて、書き下ろしとして出版された。異端文学者女流詩人の組み合わせ、結婚に至るまでが冒頭に置かれ、たしかにこの二人はどのようにして、出会ったのだろうかという疑問に答えている。



それにしても、実に疲れるカップルだ。車谷長吉は私小説家で、極端な芸術至上主義者。自己および自分家族親族、友人、知人など、題材となるものは全て「文学作品」と考えていた気配がある。文学者特権として、許される範囲だと思うが、訴訟となる場合もある。物書きとしての自負が、生き方規定するのは当然だろう。

いわゆる晩婚だった二人については、車谷長吉エッセイ集を通して読んできたが、一種のおのろけとして読んできた。しかし、この『夫・車谷長吉』を読むと、ただならぬ夫婦であったことがわかるし、文学者詩人の同居は、車谷氏の他界とともに、別の様相を呈してくる。

赤目四十八瀧心中未遂』が発売されたあとのこと、特に直木賞受賞直後は、以下の書き出しから始まる。


まったくお祭り騒ぎだった。贅沢な話だが、電話、祝電、宅配便を受け取るだけで疲労困憊した。

(157頁)

その後、白洲正子さん他界に続き、作中に語られる多くの身近な人々の死、それは突然の死であり、受入れが難しい。

とりわけ、夫・車谷長吉の死の受容は、時間の経過や、文章化することで昇華されているようだ。既に、車谷氏の著書『世界一周恐怖航海記』や『四国八十八ヶ所巡礼』などによって知りえていた情報を、同行者であった詩人によって、改めて回想され記されると別の様相が視えてくる。


世界一周恐怖航海記 (文春文庫)

世界一周恐怖航海記 (文春文庫)

四国八十八ヶ所感情巡礼

四国八十八ヶ所感情巡礼


二人が、共に過ごした時間は、多くの場所で出かけ、文や俳句の共同作業、なにより長吉原稿最初に読むのが、詩人の妻だったというところは、泣けてくる。20年余の結婚生活は、車谷からみても、また詩人高橋順子さんからみても奇跡カップルしか言いようがない。

拙ブログでも、しばしば車谷長吉著作について取り上げ、言及してきた。

文士の生魑魅

文士の生魑魅


「私は鴎外、露伴漱石、一葉、荷風の驥尾に付したい」と『文士の生魑魅』で記しているが、作風・傾向は、近代作家五人とは、全く異なる。独特の世界を造型している。小説への文体の拘りは異常に強く、作家の執念のようなものを感じたことを思い出す。

車谷氏の代表作は、

『鹽壺(しおつぼ)の匙』

塩壷の匙 (新潮文庫)

塩壷の匙 (新潮文庫)

漂流物

漂流物 (新潮文庫)

漂流物 (新潮文庫)

赤目四十八瀧心中未遂

赤目四十八瀧心中未遂 (文春文庫)

赤目四十八瀧心中未遂 (文春文庫)

白痴群』

白痴群

白痴群

『贋世捨人』

贋世捨人 (文春文庫)

贋世捨人 (文春文庫)


あたりだろうか。

随筆集としては次の二冊か。

文士の魂』

文士の魂

文士の魂

『錢金について』

銭金について

銭金について


高橋順子氏による『夫・車谷長吉』は、興味深く一気に読んだ。夫=死者に捧げる回想録として、距離を置きながらも、情愛が伝わってくる。

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