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2018-11-29 濱口竜介と三宅唱

[]寝ても覚めても 寝ても覚めてもを含むブックマーク 寝ても覚めてものブックマークコメント


濱口竜介商業映画第一作『寝ても覚めても』(2018)が、雑誌ユリイカ』で特集されるなど、今の若手監督では最も注目すべき作家だろう。2015年に公開された『ハッピーアワー』は、素人俳優ロカルノ映画祭で4人が主演女優賞を獲得したこと話題となって。小生は遅れて翌2016年に5時間17分の大長編を見た感想拙ブログ(2016−04−07)で言及した。映画は90分前後であるべきことなど苦言を呈しておいた。


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さて『寝ても覚めても』は、東出昌大が麦と会社員亮平の二役を演じている。朝子(唐田えりか)は麦と運命的な出会いより一瞬で恋に落ちる。しかしながら、麦はある日突然消息を絶つ。

東京に出て喫茶店仕事をする朝子は、コーヒー出前サービス会社員亮平に出会う。麦に瓜二つの亮平に関心を持つ。同様に亮平(東出昌大)も彼女に惹かれる。

亮平と朝子・二人の出会いから大きく発展する契機となるのは、「牛腸茂雄写真展」であった。「双子女の子」の写真に惹かれる朝子。

映画の梗概を記すことはしない。瓜二つの男二人の間で揺れる一人の女性、朝子の8年間の生活


蓮實重彦は以下のように評価している。

向かいあうこともなく二人の男女が並び立つラストショットの途方もない美しさ。しかも、ここには、二十一世紀世界映画史もっとも美しいロングショットさえ含まれている。濱口監督の新作とともに、日本映画はその第三の黄金期へと孤独に、だが確実に足を踏み入れる。

ブルー基調とした映像が、美しい。


論集 蓮實重彦

論集 蓮實重彦


工藤 庸子編『論集 蓮實重彦』(羽鳥書店,2016)に、若手映画監督である濱口竜介三宅唱寄稿している。

いわば同時代的に蓮實重彦に影響を受けた世代ではなく、遅れてきた蓮實読者である

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その二人が2018年に、柴崎友香原作寝ても覚めても』と、佐藤泰志原作の『きみの鳥はうたえる』を映画化した三宅唱監督。二人に共通するのは「画面」の映画だ。青春時代のある種の雰囲気ブルー基調とする色彩。


きみの鳥はうたえる (河出文庫)

きみの鳥はうたえる (河出文庫)


三宅唱きみの鳥はうたえる』(2018)は、ひと夏が過ぎたあと、染谷将太の回想のことばで始まる。僕こと柄本佑は、書店アルバイト石橋静河出会い、親密な関係になる。同居者である染谷将太との三角関係青春というある種ほろ苦い、もどかしさが、映像に切り取られている。


ラストショットは、『寝ても覚めても』と『きみの鳥はうたえる』の二作とも唐突に終わり、続きへの余韻が漂う。唐突といえば、『寝ても覚めても』の中で、瀬戸康史唐田えりかの友人・山下リオが出演しているチェーホフ戯曲『三人姉妹』の演技を批判する、映画の中で浮いてるシーンがある、演劇批評のシーンの挿入の意図は呑みこみにくい。


さて、この作品にも蓮實重彦の評がある。

窮屈そうな二段ベッドで柄本佑としなやかに愛を交わした石橋静河が、Tシャツをまとって真っ赤なトマトを頬ばっていると、いきなり同居人染谷将太が姿を見せ、初めましてと鄭重な挨拶を送る。この美しい瞬間に成立するあぶなっかしいトリオ行方から、誰も目が離せまい。上映時間があと七分半短ければ、真の傑作となっただろう。


上映時間にこだわっている。106分という長さから蓮實重彦の言う7.5分を引くと、98.5分が最適な長さということになる。ちなみに、『寝ても覚めても』は119分。小生から見れば、どちらもそれなりの長さを必要としたのであろう。120分以下であることは許容範囲である


シネマの記憶装置 新装版

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蓮實重彦との出会いは二人とも、東大総長時代映画から距離を置いていた時期であり、総長の式辞中に眠った経験を持つ濱口竜介と、『村上龍対談集』で蓮實重彦映画についての語りに惹かれた三宅唱


『論集 蓮實重彦』には、蓮實の立教大学映画表現論講義第一世代である周防正行黒沢清青山真治などは寄稿しいていない。いわば第二世代の登場ということか。映画を撮ることの困難さを知る新世代が現れたことが今年の収穫であった。


濱口竜介は、「遭遇と動揺」(p547『論集 蓮實重彦』)でつぎのように指摘している。


蓮實重彦は稀大の聞き手でもあった。・・・ゴダールからシュミット、アレキサンドル・トローネから中古から厚田雄春から驚きとともに(「そんなことを指摘されたのは初めてです!」)言葉漏れ出すあの瞬間。



小津安二郎撮影監督厚田雄春や、成瀬巳喜男美術担当中古智、数多くの名作の美術設計をしたアレクサンドル・トロネル*1などの名前は、すべて蓮實重彦書物から教えれたことを思い出す。

光をめぐって―映画インタビュー集 (リュミエール叢書)

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成瀬巳喜男の設計―美術監督は回想する (リュミエール叢書)

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映画に目が眩んで

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