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2006-02-12 ウェブは進化するが、人心は変わらない

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ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)


梅田望夫ウェブ進化論』を読む。「インターネット」「チープ革命」「オープンソース」をキーワードに、ウェブの進化する方向性はおおむね首肯できる。「ロングテール」や「Web 2.0」も理解できる。おそらく、梅田氏の志向する方向へ、進化するだろう。


無数の表現者予備軍には、表現機会がほとんど与えらえなかった。しかしブログの登場が、そのロングテール部分を豊かに潤し始めた。これまでは、表現者の供給量を上手にコントロールしていたメディアだったが、ロングテール部分に自由参入を許すブログの出現によって、コンテンツ全体の需給バランスが崩れはじめたのだ。(p.146)

個の信用創造装置・舞台装置としてのブログ意味合いは、今後ますます大きくる。・・・

もう一つ重要なのは、ブログは個にとっての大いなる知的成長の場であるということだ。

(p.165-166)

この梅田氏の見解は妥当であり、賛同する。ブログは知的成長の場である。

223頁の図「ウェブ進化の方向」に従って、進むべき方向が示される。

これからのウェブの進化は、「あちら側・信頼あり」のボックスが牽引していく。Web 2.0時代とは、突き詰めていけば、そういうことである。本書で詳述したネット上の新事象群に世界中若者たちが興奮するのは、ネット全体がこの方向に動けば、若い世代に新しいチャンスが巡ってくると直感しているからである。(p.224)

あとがき」で次のように述べる。

シリコンバレーにあって日本にないもの、それは若い世代の創造性や果敢な行動を刺激する「オプティミズムに支えられたビジョン」である。(p.246)


さて、本書における「ウェブ進化」のための「ネット世界の三大法則」について、35頁の図とともに、「インターネット」「チープ革命」「オープンソース」が相乗効果により、ネット世界は発展するという。梅田氏のいう「三大法則」とは


第一法則:神の視点からの世界理解

第二法則:ネット上に作った人間の分身がカネを稼いでくれる新しい経済

第三法則:(無限大)×(ゼロ)=Something、あるいは、消えて失われていったはずの価値の集積(p.34)


となる。ここで、「神の視点」なる言葉が使われている。グーグルの検索万能主義からきた発想だろうが、まさしく、「オプティミズムに支えられたビジョン」であり、「神」のみぞ知る人間の「心」「魂」が欠落している。梅田氏の本書のなかには、人間生き方とか、「人はいかに生きるべきか」*1といった視点がない。「もの」が対象とされる楽観主義に支えられている。


「神の視点からの世界理解」とは、およそ宗教らしきものがない日本人にとって可能のごとく思えるけれど、シリコンバレーに住むアメリカ人を筆頭に彼らはキリスト教なり、ユダヤ教なり、イスラム教なりの、「神」を持っている。従って、「神の視点からの世界理解」という言葉を、例えば「鳥瞰的世界理解」という言葉におきかえると分かりやすい。


たしかに、市場原理からいえば、梅田氏の方向に進むであろう。それが、グローバル化した高度資本主義社会の行き着くところから必然かもしれない。


ウェブ進化論』は、刺激的な書物であり、面白いし、若者たちの心理を理解している。若者たちを鼓舞するエールになっている。*2一方で、既存のメディア批判であり、梅田氏より上の世代批判の書でもある。私個人として、また「はてなブログ利用者としては、「一読の価値あり」と申し上げておくにとどめたい。*3


西垣通情報学転回』の、「ITユダヤキリスト教的な一神教進歩思想の産物」という見解もある。

情報学的転回―IT社会のゆくえ

情報学的転回―IT社会のゆくえ

*1:「人はいかに生きるべきか」とは、あまりに小林秀雄的と自己反省している。小林秀雄は、講演CD現代思想について」の中で、伊藤仁斎京都で塾を開いていたとき、武士から町人まで多くの庶民が学問を楽しみにやってきたという。さんざん道楽をし尽くした商人が、「学問」は道楽以上に楽しいと述べている。ここで云う「学問」とは、「人生いかに生きるべきか」を学ぶものと規定している。本書に人生云々を求めてはいけないと知りながら、「神の視点」なる言葉があるため、論点がズレているのを承知で、敢えて書いていることを了解いただきたい。

*2梅田氏は二極化した若者の「上側のスピリッツと潜在能力」を高く評価している。ネットに集う若者全体ではなく、「Web 2.0」世代を担うエリート層に期待している。

*3:私は、Web上における著作権については、Wikipediaの方向、つまりコピーレフト派だし、OSは「オープンソース」とすべきだと考える。一旦、IT化された社会は後戻りすることはできない。Web未来を楽観的に捉える本書は、バイアスがかっていることを承知した上で、読む態度が要請されよう。それは、いかなる思想エクリチュール)も、何らかのバイアスがかかっているのと同断である。