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2012-12-31 書物の環境はどう変わるのか

[]書物論2012 書物論2012を含むブックマーク 書物論2012のブックマークコメント

「本の収穫2012」の掲載漏れ、前半の書物論関係の本について補足する。


◎書物の環境

柴野京子『書物の環境論』(弘文堂,2012-07)

書物の環境論 (現代社会学ライブラリー4)

書物の環境論 (現代社会学ライブラリー4)


柴野京子『書物の環境論』は、「本の世界」を書物の流通からみた『書棚と平台』(弘文堂,2009)で日本出版学会奨励章を受賞した著者が、第二部「デジタルインターネット時代出版」をメインに、「現代社会ライブラリーの第一弾の一冊として7月末に刊行されたものであり、興味深く読んだ。


書棚と平台―出版流通というメディア

書棚と平台―出版流通というメディア


書物を流通からみる柴野氏によれば、電子書籍についてアップルアマゾン比較しながら、次のように述べている。


キンドル世界中を驚かせ、「電子書籍元年」の強力な根拠になった理由はそれが、世界一出版流通グループ企業アマゾン接続する端末だったからである。(p.89)


iPadKindleは、事業モデルデバイスも対照的だが、流通を事業デザインの要においている点で共通している。(p.90)


ウェブ社会を中心に、デジタル化が進む情報メディアの速さと、そのつど新しい媒体の発売。商業ベースに乗せられた私たちは、常に新しいツールに飛びついて、やれ、これで社会が変わるだの、高度情報化社会が来ただの、文字どおり情報化に振り回されてきた。

書物のデジタル化に関しても、「電子書籍元年」という言葉がこの10年間で、何回繰り返されただろう。いささか、うんざりしている。


柴野氏は言う。

ほんとうに大事テーマは「デジタルアナログ凌駕するのか」ではないのでないか。むしろ、「手放したくないもの」のほう、すなわち、「本や出版私たち生活果たしてきた役割機能とは何か」というところにあるのではないだろうか。・・・アナログからデジタルへという直線コースを一度はずれて、出版について考える・・・回り道のように思えても本や出版デジタル化をとらえる一番の近道は、本や出版を理解することなのだ。(p.13-14)


柴野京子『書物の環境論』は、流通から見る本の環境について、見取り図を描いてみせ、心が落ちつく良い書物だ。



本棚の中のニッポン

江上敏哲『本棚の中のニッポン 海外日本図書館日本研究』(笠間書院,2012-05)


本棚の中のニッポン―海外の日本図書館と日本研究

本棚の中のニッポン―海外の日本図書館と日本研究


海外における日本図書館は、どうなっているのか、良く分からなかった。例えば、国立国会図書館書誌データをOCLC Worldcatへ提供するという情報2010年頃にあったが、日本語の図書(書誌レコード)を検索できる割合が、2010年6月で約300万件、2011年6月では2.5倍の750万件でやっと英独仏西に次ぐ5位にランクアップしていることが紹介されている。(157頁)

また、海外提供される日本語データベースとして、JapanKnowledgeが北米から広く世界展開されていることも分かり、日本語データベースの整備問題が浮き上がってくる。海外での日本研究が進むかどうかは、日本のe-resource整備如何にかかっていることが指摘されている。(187頁以下の「アクセスされるニッポン」参照)


著者は「あとがき」で次のように記している。


日本から海外効率的効果的に資料提供情報発信できるかどうか、そうしようという姿勢を持てるかどうか、それによって最終的に影響が及ぶのは日本自身だろう、と考えています。(283頁)


松丸本舗主義

松岡正剛松丸本舗主義 奇蹟の本屋、3年間挑戦』(青幻舎,2012-10)


松丸本舗主義 奇蹟の本屋、3年間の挑戦。

松丸本舗主義 奇蹟の本屋、3年間の挑戦。


江戸文化再考

中野三敏江戸文化再考』(笠間書院,2012-07)



書物の環境がどう変わるのかとは、「本や出版私たち生活果たしてきた役割機能」(柴野)を再考することだろう。

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2012-12-30 坂口安吾全集の完結

[]本の収穫2012 本の収穫2012を含むブックマーク 本の収穫2012のブックマークコメント


今年前半は、情報論・書物論関係に集中し、後半は漱石関係の図書(古書)・論文を読んでいたので、新刊本の収穫は多くない。それでも例年どおり、リストアップしてみたい。


まず、次のアンケートを読んでいただきたい。

1.あなたが好意を持たれる政治家は?

2.その理由

一人もをりません。私の好む政治家は政策を持つこと、人性について理解をもつこと、人間性に裏打ちされた人生観生き方をもつことを条件としますので、全然ゼロですよ、政治家といふ連中は。現代日本階層で、政治家の素質がケタ違いに貧困と存じております。(坂口安吾


◎『坂口安吾全集別巻』(筑摩書房,2012-12


まず、何より慶賀したいのは、『坂口安吾全集』の別巻刊行による全集完結であろう。第17巻以後12年間まち続けた。上記アンケート文芸冊子)は、坂口安吾が回答したものである。『坂口安吾全集別巻』13頁に採録されている。1947(昭和22)年4月発行の『文芸冊子』に掲載されたものであり、安吾の回答は、65年前のものだが、現在政治家に対しての回答としても十分納得できるものだ。



川本三郎『白秋望景』(新書館,2012.01)

白秋望景

白秋望景

拙ブログ2012-05-08に記載済み。


原田マハ『楽園のカンヴァス 』(新潮社,2012-01)

楽園のカンヴァス

楽園のカンヴァス

アンリ・ルソーの作品の真贋を判定する、美術ミステリーとして、楽しく読ませていただいた。2013年本屋大賞に近い位置にあると思う。


阿部公彦『小説的思考のススメ』(東京大学出版会,2012-03)

小説的思考のススメ: 「気になる部分」だらけの日本文学

小説的思考のススメ: 「気になる部分」だらけの日本文学

拙ブログ2012-05-08に記載済み。


内田樹『街場の読書論』(大田出版,2012-04)

内田樹街場の文体論』(ミシマ社,2012-07)

街場の読書論

街場の読書論

街場の文体論

街場の文体論

内田氏の二著は、内田節全開の好著ではあるが、リーダビリティや読み手に届くことなど、内田氏おなじみのお話で、愛読者としては安心して読むことができた。


水村美苗『母の遺産―新聞小説』(中央公論新社,2012-03)

母の遺産―新聞小説

母の遺産―新聞小説

今年最高の問題小説


橋本武『〈銀の匙〉の国語授業』(岩波ジュニア新書,2012-03)

〈銀の匙〉の国語授業 (岩波ジュニア新書)

〈銀の匙〉の国語授業 (岩波ジュニア新書)

国語授業の、見事な実用的なお手本。


小林千草『『明暗』夫婦言語力学』(東海教育研究所,2012-12

『明暗』夫婦の言語力学

『明暗』夫婦の言語力学

熊倉千之『漱石のたくらみ―秘められた『明暗』の謎をとく 』(筑摩書房2006-10)を読了した後に、タイミング良く、出版された。国語学者による、漱石が到達した文学世界を、言語的に解釈し書かれざる結末を予想する。しかし、小林千草氏は、書かれた188章で完結と捉え、極めて前衛的作品と評価する。

「妻のお延が死ぬ」(小宮豊隆)や、「(津田)は宿痾を再発して死ぬ」(江藤淳)、あるいは「清子が死ぬ」(大岡昇平)とは異なった、私なりの『明暗』結末予測は、熊倉千之氏や小林千草氏に近づくだろうと思う。


森まゆみ千駄木漱石』(筑摩書房,2012-10

千駄木の漱石

千駄木の漱石

帰朝後、帝大の教授をしながら、『猫』執筆前後千駄木住まい漱石を探っている。


蓮實重彦夏目漱石論』(講談社文芸文庫,2012-09)

夏目漱石論 (講談社文芸文庫)

夏目漱石論 (講談社文芸文庫)

青土社版で読んだのが、蓮實重彦文芸評論映画批評に関心を抱かせた、原点となった。巻末の「著者から読者へ」を読むために購入した。著者によれば、2013年には待望の『「ボヴァリー夫人」論』刊行が予告されているが、『ジョン・フォード論』への言及はない。


北川扶生子『漱石の文法』(水声社,2012-05)

漱石の文法

漱石の文法

2012年出版で購入し、「『虞美人草』と美文の時代」のみ読み、他は未読。

本書も漱石本の一冊だが、毎年、10冊以上の漱石関連本が3出版されている。

それにしても、漱石文献の多さにうんざりした。漱石研究本が、1000冊以上、論文が毎年100篇以上発表され累積論文が数千ある。精確な数は、様々な文献目録書誌を調べても判然としない。近代文学では、漱石ひとり勝ちだ。100年後の21世紀漱石は常に新しく、刺激的である


菅原孝雄『本の透視図: その過去未来 』( 国書刊行会,2012-11

本の透視図: その過去と未来

本の透視図: その過去と未来

書物の電子化をめぐり、グーテンベルク以前の写本の時代から、著者は見直している。読書中。


想田和弘演劇 vs. 映画――ドキュメンタリーは「虚構」を映せるか 』(岩波書店,2012-10

演劇 vs. 映画――ドキュメンタリーは「虚構」を映せるか

演劇 vs. 映画――ドキュメンタリーは「虚構」を映せるか

観察映画演劇1』『演劇2』の製作過程の思いを綴った記録であり、読み応えがある。平田オリザ青年団を、駒場にある「こまばアゴラ劇場」を中心にカメラを回し、ある時は地方公演へ、また演劇ワークショップを全国各地の学校実践していく平田を捉える。最後は、フランスでの公演をめぐる現場を撮っている。必見映画であり、今年度のベスト映画であることは、「映画ベストテン2012」でも記載した。



メディアではあまり報じられないが、吉本隆明の死去は思想界にとって大きい。

◎『吉本隆明が語る親鸞』 (東京糸井重里事務所,2012-01)

吉本隆明が語る親鸞

吉本隆明が語る親鸞

吉本氏が、親鸞について語った講演を収録。CDROM 版付き。

戦後最大の思想家の死。『共同幻想論』『言語にとって美とは何か』『心的現象論』の三大著作と、『最後親鸞』『源実朝』『島尾敏雄論』など、その著作の多さ。初期・中期までは追いかけていたが、2000年代からリアルタイムで読まなくなった。それでも、吉本氏の存在の大きさは今後も否定できないだろう。

吉本隆明最後に遺した三十万字(上)(下)』(ロッキングオン)が、12月末に刊行された。未入手。上巻のみ購入予定。上巻には、主著の自己解説が収録されているようだ。

吉本隆明が最後に遺した三十万字〈上巻〉「吉本隆明、自著を語る」

吉本隆明が最後に遺した三十万字〈上巻〉「吉本隆明、自著を語る」

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2012-12-28 想田和弘『演劇1』『演劇2』は、映画と演劇を繋いだ大傑作

[]映画ベストテン2012 映画ベストテン2012を含むブックマーク 映画ベストテン2012のブックマークコメント


2012年映画館で観た本数は90本。『キネマ旬報12月下旬号』掲載のベストテン選出用リストに該当する作品の中から選出した。


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今年の映画は、想田和弘監督の観察映画第3弾『演劇1』、第4弾『演劇2』に尽きるだろう。脚本家演出家として著名な平田オリザを観察対象とした、ドキュメンタリーだが、音楽テロップ、更に説明のナレーションなど一切ない。ひたすら映像を観ることが、要請される。しかしながら、その背後に膨大なフィルムがあり、「平田オリザ世界」と「平田オリザ世界」に編集するのに、4年を費やしている。なによりもその映像が圧倒的に面白いのだ。


日本映画

1.演劇1・演劇2(想田和弘

2.僕達急行・A列車で行こう(森田芳光

3.ロボジー矢口史靖

4. わが母の記(原田眞人

5. 黄金を抱いて翔べ井筒和幸

6. 終の信託周防正行

7. アウトレイジビヨンド北野武

8. 夢売るふたり西川美和

9. 鍵泥棒のメソッド内田けんじ)

10. 天地明察滝田洋二郎

次点 のぼうの城犬童一心樋口真嗣


僕達急行 A列車で行こう [DVD]

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ロボジー スタンダード・エディション [DVD]

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わが母の記 [DVD]

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アウトレイジ ビヨンド [DVD]

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夢売るふたり [DVD]

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あなたへ降旗康男

北のカナリアたち阪本順治

ヒミズ園子温

テルマエ・ロマエ竹内英樹)


外国映画

外国映画は、ドラマが描かれているかが選択のポイントであり、『ヘルプ』は人種差別が通常であったアメリカ南部女性記者の眼で捉えた感動的ドラマであった。タル・ベーラニーチェの馬』は、映像の根源に迫るフィルム凝視させられた。

1. ニーチェの馬タル・ベーラ

2. ヘルプ 心がつなぐストーリーテイト・テイラー

3. 最高のふたりエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ)

4. メランコリアラース・フォン・トリアー

5. アーティストミシェル・アザナヴィシウス

6. ドラゴン・タトゥーの女デビッド・フィンチャー

7. ルートアイリッシュケン・ローチ

8. 人生の特等席ロバート・ロレンツ

9. ロボット完全版(シャンカール

10. スカイフォールサム・メンデス

次点.マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(フィリダ・ロイド

ニーチェの馬 [DVD]

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メランコリア [DVD]

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ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]

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ルート・アイリッシュ [DVD]

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ロボット [DVD]

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ヒューゴの不思議な発明マーティン・スコセッシ

コロンビアーナオリヴィエメガトン)

ファミリー・ツリーアレクサンダー・ペイン

私が、生きる肌ペドロ・アルモドバル

◎愛の残像フィリップ・ガレル

三重スパイエリック・ロメール

スーパー・チューズデージョージ・クルーニー

フランケンウィニーティム・バートン

ローマ法王の休日ナンニ・モレッティ

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