整腸亭日乗 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2013-11-24 「国民経済」こそ大切なのだ

[]街場の憂国街場の憂国論を含むブックマーク 街場の憂国論のブックマークコメント


内田樹『街場の憂国論』(晶文社,2013)は、内田氏による「街場」シリーズだが、きわめて常識的な所論を展開しながら、実に説得的である


街場の憂国論 (犀の教室)

街場の憂国論 (犀の教室)


グローバリズムとは何か。TPPは何を目指しているのか。あるいは、教育市場化はなぜ良くないか、など基本的な問題について、大方のメディア政治・経済コメンテータとは、180度異なり、著者の話はリーダブルであり明解である


順序が前後するが、まずは教育について。内田氏は、ジャック・ラカンのセミネール『フロイト理論精神分析技法における自我から、「教えるという営みの本質についてもっと洞察に富んだ言葉を残した」精神分析家のことばとして引用しながら解説している。



ラカンの文章を、直接引用してみる。

どれほど厳格に考えても、決して悟りが開けるわけではありませんが、それでも次のように考えてみました。教えるということは、非常に問題の多いことで、私は今教卓のこちら側に立っていますが、この場所に連れてこられると、すくなくとも見掛け上は、誰でも一応それなりの役割は果たせます。言葉を換えれば、才能あふれるアメリカ詩人がいみじくも指摘したように、無知ゆえに不適格である教授はいたためしはありません。人は知っている者の立場に立たされている間はつねに十分知っているのです。誰かが教える者としての立場に立つかぎり、その人が役に立たないということなど決してありません。(56p『フロイト理論精神分析技法における自我(下)』)


ラカン言葉を踏まえ、教育に関する内田氏の言説は、「教育ビジネス言葉で語れない」ことを反復している。


内田氏が本書を通して言いたいことは、「貨幣貨幣で買うゲーム」のような市場主義を排して、「国民経済」を基本に考えること、と指摘している。

反グローバリズム立場から自由貿易に進むのではなく、食糧外国に頼ることがないように、警告している。


生産性を上げるという命題は、負のスパイラルに陥ることであり、


今の日本における若者層の雇用環境の悪化は、「多くの人に就業機会を与えるために、生産性は低いが人手を多く要する産業分野が国民経済的には存在しなければならない」という常識統治からも、経営者からも、失われたからではないのか。・・・(中略)・・・完全雇用(食わせること)が国際競争力の向上の「目的」であり、それゆえ、それに「優先する」と断言する人を私は見たことがない。(122p『街場の憂国論』)


国民経済という、きわめて常識的な発想が、いつの間にか、この国から消えてしまったのだ。


内田樹による内田樹

内田樹による内田樹


内田樹氏の、自著解説本、『内田樹による内田樹』(140B,2013)が出版されている。『憂国論』は、これら既刊本において述べられていることであり、基本的な立場は一貫している。他の誰もが言わないこと、しかし、一旦文章化されると、きわめて常識的なことを、内田氏は繰り返し述べているのだ。


下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)

寝ながら学べる構造主義 ((文春新書))

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日本辺境論 (新潮新書)

日本辺境論 (新潮新書)

街場の教育論

街場の教育論

先生はえらい (ちくまプリマー新書)

先生はえらい (ちくまプリマー新書)

ためらいの倫理学―戦争・性・物語 (角川文庫)

ためらいの倫理学―戦争・性・物語 (角川文庫)

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