10/13/2010
『アイルトン・セナ 〜音速の彼方へ』 (映画)
今年が生誕50周年(!)となるアイルトン・セナの生涯とF1でのキャリアを,F1デビューから事故死までを中心に振り返るドキュメンタリー映画.
主に取り上げられているのは,まずは類稀なる才能と速さで注目を集めたルーキー時代から,名門チームにステップアップしてチャンピオンに駆け上がる過程.
そして最大のライバルである『プロフェッサー』アラン・プロストとの確執や,競技組織(FISA)からの政治的圧力に苦悩しつつも,勝利への意志を持って闘い続けるセナの姿,といったところだろうか.
もちろん,94年のサンマリノでの事故に至る過程と,英雄の死を悼む人々の反応は(一つの伝説となっているフジテレビの「涙の中継」も含めて)本作のクライマックスとして扱われている.
内容的には,「セナ家のプライベート画像」や「ドライバー会議等での生々しいやりとり*1」といった,おそらく初公開と思われる映像により,彼の人間像を描写しようとしている点は目新しいと感じた.
だが,上述の「基本的な筋書き」は既に一般的に知られている内容であり,また随所に挿入される関係者へのインタビューも当時に撮られたものが使われていて,新規性にはやや欠けるかな,という印象.「セナという人物を今,振り返る」という視点から,関係者の現在のインタビュー等があってもよかったかなと感じた.
また話の筋に関しては,セナを取り巻く重要人物(プロスト,バレストル,ロン・デニス,ウィリアムズ等)についての予備知識がないと,ただ「ふーん.何かイヤな感じの奴らばっかりだな」というだけの内容になってしまうかもしれない.*2まあ,ここらへんは結構難しいところである.
ただ,だからといってファン層しか楽しめない内容なのかというと,決してそんなことはないのでは,というのが感想.特に大画面のスクリーン上に映される当時のレース映像・音響は迫力満点で,特にセナ自身の心理(勝利への執念や孤独感)を描写するかのように多用されるオンボード映像は,かなり見応えがある.
レース映像について「見ててこんなにつまらんTV映像はない」ぐらいに思っている人っていうのは,結構多いのではないかと思う.だがそういう人でも,もしかするとモーターレーシングの魅力を感じることができるかもしれない.
僕自身,特に走り屋というわけでもないし,ドライビング理論を理解しているわけでもない.だけど(特にキャリア前半の)セナのドライビング映像はそんな僕の目から見てもアグレッシブそのもので,彼自身の『速く走る』ことに対する純粋さと情熱を感じた気がして少しジーンときてしまった.と同時に,「高度に電子制御・空力パッケージされたマシンを操り,タイヤを労わって走る」という現代のF1ドライバーに求められるスキルはかなり複雑であり,今の状況のような中からは彼のようなスターはもう出てこないのかもしれない,という風にふと感じた.
色々書いてしまったが最後に個人的結論を述べると,「記録としてはシューマッハにそのほとんどを塗り替えられてしまったセナが,それでもなお『史上最高のドライバー』と賞賛されるのは何故なのか?」という問いの答えとなるような,彼の魅力を再発見できた作品かな,,と感じたのでありました.

