『万葉 王族歌人群像』(29/100)

第4次飛鳥時代ブーム継続中。読了日は3/5。

万葉 王族歌人群像 (SEKAISHISO SEMINAR)

万葉 王族歌人群像 (SEKAISHISO SEMINAR)

万葉集』に挽歌が載せられている王族(=皇族)15人*1をピックアップ。『日本書紀』やその他の資料も交えながら、各王族の人となりや悲劇のエピソード、陵墓の場所について判りやすく検証した本。
大津皇子が謀反の罪に問われたのは、本当に親友・川島皇子が密告したからだったのか?とか、父・天武天皇が主催する天神地祇の祭りの当日、十市皇女が急死した理由は?など、飛鳥時代好きの人ならかなり興味深いテーマが取り上げられている。『天上の虹』ファンや、宝塚の一連の古代ロマン*2好きの人にもおすすめ。


全体が2部構成になっているのだけど、主に陵墓の場所を探る第2部よりも、やはり悲劇のエピソードに関する新解釈が続々登場する第1部が面白かった。また、王族1人につき1章が当てられているので、ちょこちょこと拾い読みできるのもよい。
ただ、万葉集の歌そのものの意味が書かれていないことが多くて、一読しただけでは歌意を理解できない私には、そこがちょっと物足りなかった。大学時代にきちんと勉強しておけばよかったよ。


ちなみに、本書では恋仲だったということで2人1組扱いされている、十市皇女高市皇子と、但馬皇女&穂積皇子。4人はいずれも天武天皇の子供だったりする(母親は4人とも別)。
十市皇女は、夫・大友皇子天智天皇の息子)を亡くして独り身になっても、高市皇子とは天武の長男・長女同士ゆえ、皇位継承問題に影響を及ぼすせいで容易に結婚できない。その高市皇子のもとに妻として迎えられるのが、穂積皇子と相思相愛の但馬皇女。何だか上手くいかないねぇというか、王族同士の婚姻は政治の道具としてみなされ、自由に愛し合えない時代だったんだなぁ……と改めて思う。まあ、腹違いの兄妹同士が結婚させられるというのが、現代ではありえないことなのだけど。

*1:有間皇子十市皇女高市皇子大津皇子但馬皇女、穂積皇子、安積皇子、天智天皇天武天皇草壁皇子川島皇子弓削皇子、明日香皇女、志貴皇子長屋王

*2:『あかねさす紫の花』『あしびきの山の雫に』『たまゆらの記』『飛鳥夕映え』とか