読書:宮脇淳子『最後の遊牧帝国 ジューンガル部の興亡』

読みました。昔読んだ気がするんですが、今読むと、細かいところは修正が入るのかもしれないですし、いまは常識となってるところがたくさんある気がするのですが、それでもやっぱり新鮮でいい感じですわ。

ちゃんと遊牧民の生活構造があって、政治構造があって、それが遊牧社会の歴史的展開を規定しているというのがよくわかります。
結局、土地が固定であるわけではない(放牧地はだいたいしか決まっていないので、動産(家畜)を増やして分配し続けるしか拡大の方法がない。そうすると、何かのきっかけで拡大すると、分配の繰返しになって、分配があるところで止まってしまうと、分裂して内輪もめをはじめる、という。しかも、土地と権利・文書が紐付されていない(動産なので当然)ので、記録(史書)も残りにくい、というわけで。よーくわかるんです。

とっても一般向けだと思うんですよね。下の書籍も含めて。名前が覚えられない、っつうのはまあしょうがない。この点は古代ギリシャとおんなじで仕方ない。

モンゴルの歴史―遊牧民の誕生からモンゴル国まで (刀水歴史全書)

モンゴルの歴史―遊牧民の誕生からモンゴル国まで (刀水歴史全書)

今回の本だけでなくてメチエはもっとバンバン再版すべきだと思うんですけどねえ。一般向けでちょうど読みやすくていいのたくさんあるんだけどな。なんか絶版が多いのは理由あるんですかね…。閑話休題

著者の方もなかなかエキセントリックというか、あんまり本業とは関係ないことをされていて、それで読まれないこととかあるのかな、ということもちょっと思いました。
しかしですよ、一昔前までは、長城以北なんて野蛮人しかいない、研究してるのも野蛮人みたいな風潮があったわけですよ。明末は近代の萌芽やで、とか頭オカシイ話が合ったわけですよ(中国思想系に怒られる発言)。
そりゃ、ひねくれるわ、と思うし、まあ大同団結しますわな。まさにアジア主義。あとがきを拝見しても、なんというか怒りが収まらない感じですし…。

最近は、本業が中心になってきたんですかね。岡田英弘著作集とかでてるし。シリーズものの新しい方は全然ご専門と関係なさそうな責任編集ですが…。

康煕帝の手紙 (〈清朝史叢書〉)

康煕帝の手紙 (〈清朝史叢書〉)

海賊からみた清朝 〔十八~十九世紀の南シナ海〕 (〈清朝史叢書〉)

海賊からみた清朝 〔十八~十九世紀の南シナ海〕 (〈清朝史叢書〉)

ところで、本業のほうは、旦那様の岡田英弘さんの名前が必ず出てくるんだけど、こういうのってよくあるのかなあ。あんまり見たことないんだけど…。師匠と女弟子と結婚した場合は、弟子の業績は師匠に吸収されちゃったりするから目立たないんですかね。なら、このパターンは悪くないんじゃないか。

さらにどうでもいいんだけど、少龍女的なのって学界にあったりしたんですかね。野次馬根性まるだしですが。