徹底抗戦

徹底抗戦

徹底抗戦

ホリエモンライブドア事件を彼なりに振り返った本。無罪の主張は要点だけに止め、むしろ容疑者生活をちょっとした冒険譚に見立てた内容と言えるだろう。彼に対する評価はどうあれ、純粋に読み物として面白い。
彼のブログや著作に触れたことのある方ならそう感じる方も多いと思うが、ホリエモンは世間のイメージとは異なり、ネアカで純朴な側面がある。そんな彼が、拘置所や司法にどんな印象を抱いたのかセキララに語った内容。つまらないはずがない。
現代に至っても粉歯磨きやクレンザー粉を使っている拘置所の古めかしさや、長期間の孤独を強いられる勾留の辛さ、刑務官の優しさ、拘置所内でも起きる男性の生理現象についてまでがケッコー明るい筆致で悲喜こもごも、リアルに描かれている。

教師という人種

今度は自分の体験談になるが、ミュージカルを見たときに、ある国語教師は言った。
「彼らは有名な劇団でもないし、おそらく一生世間に認められることはないかもしれないが、貧しい中でも頑張っているんだ」
また、その教師は授業中にはこんなことも言った。
ラッセンの絵なんて本物じゃない。僕には浅薄な落書きにしか見えないね」
古典の説明の誤りを何度も生徒に指摘されていたその教師は、なぜラッセンの絵をそこまで貶めたかったのだろうか。

○思ったこと×事実

小学生の頃読んだ、灰谷健次郎の本のどれか(確か兎の眼だったと思う)に、先生が「文章は思ったことを書け。事実はいらん」ということを生徒に語っていたシーンがあった。
その後の読書経験から、それは間違った教えだと判断しているが、少なくともステレオタイプな教師が生徒に何を求めているかは浮き彫りにしたシーンだと思う。

近頃の若者はなぜダメなのか

近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」 (光文社新書)

近頃の若者はなぜダメなのか 携帯世代と「新村社会」 (光文社新書)

実際に筆者が1000人もの若者と触れ合いその実情を描いた本。その点は高く評価できるし、単なる若者批判本とは一線を画している。
しかし、本のタイトルに興味を惹かれるような世代にとっては鮮烈な内容なのかもしれないが、著者が言うところの「若者」に当てはまる私としては、あまり真新しいことが書いてあるわけではないなぁ、という印象。
携帯を中心としたネットワークを駆使してどんどん人脈を広げていく「リア充」と、逆にどんどんネットワークを狭めて行って、例え大都市の大学に入学したとしても地元の友人との付き合いしかないフリーター、その究極とも言えるニートを対比的に取り上げている。
ところで、こういう若者像は現代特有のものなのだろうか?
昔を知らないので断言はできないが、街に出たら必ず知人に出会ってしまうような人気者や、ずっと地元のコミュニティに引き籠もっている奥手な人は、いつの時代にもいるように思う。
1000人に出会ったと言っても、挙げられている例が「若者」としても特殊すぎて、どうもセンセーショナルを意識しすぎた内容という印象が拭えない。
余談ながら。筆者は博報堂に勤めている方だが、平均年収が1400万円近い企業にいながら「妻が専業主婦なので生活が苦しい」と書くのはどうかと思う。

ラクをしないと成果は出ない

ラクをしないと成果は出ない

ラクをしないと成果は出ない

自己啓発書というのは、往々にして、もの凄い優秀な人向けに書かれている気がするものだが、この本は比較的誰にでも使える方法が書かれている。
興味のあるものにはどんどん手を広げていき、興味を失ったら切り捨てていく。仕方なくやることは上手いこと「圧縮」していく。口幅ったい言い方をすれば「フロー状態」の生き方を賛美する内容。
この作者の本は衒いが鼻につくことが多く、この本もその例に漏れないのだが、内容自体は奇抜すぎずオーソドックスなものになっている。


(2012年5月4日再読)
ほぼ内面化できました。