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書業無上

2011-09-17

裁判員の同窓会

裁判員地裁仲介で「同窓会」 守秘義務の苦悩軽減に*1

 昨年9月、東京地裁で審理した裁判員経験者が、都内で「同窓会」を開いた。裁判の時に連絡先を交換していたわけではなく、後日、裁判所の計らいで連絡を取り合って実現した。

 開催のきっかけをつくったのは、東京都練馬区不動産業、田口真義さん(35)。元俳優が保護責任者遺棄致死罪に問われた事件の裁判員裁判を担当した。「あの時の裁判員や補充裁判員と再会したい」と思い、判決から約1カ月後に「ほかのメンバーに自分の連絡先を伝えてほしい」と地裁に頼んだが、「できない」と言われた。

 しかし、今年2月、最高裁の「裁判員制度の運用等に関する有識者懇談会」で、委員からの質問に対し、事務総局幹部が「それぞれの方の同意があれば(裁判所仲介も)問題はない」と説明。田口さんが4月に再度、地裁に問い合わせると、「相手方の同意を得られれば、連絡先を通知します」と方針転換を告げられた。

 田口さんはそれまでに、裁判員経験者の交流組織などで3人と再会していたが、残る5人のうち、同意した4人とも連絡先を交換できた。13日の「同窓会」に集まったのは3人だったが、参加した40代の会社員女性は「久々に連絡を取り合えた時は、ほっとした。守秘義務で家族にも言えないことがあるのは、ストレス。こうした機会は必要だと思う」と語った。会社員の金井達昌さん(49)も「裁判所が仲立ちしてくれたことを評価したい」と話した。


 裁判員裁判の同窓会、当初見出しを見たときには「不祥事」かと思った。記事中にあるように、かつてこのような運用については、一般的にできないものとされてきたからである。

 しかし、裁判員裁判は論理の上では素晴らしいシステムであっても、実際に裁判員となって犯罪に向き合い、そして量刑を下すとなれば、それぞれの人ごとに受ける影響は違うのであって、一概にシステムではどうこうできない部分も出てくるだろう。その点、今回そうしたものを、ケースバイケースとは言えないものの補完する形でこうした同窓会が実現されたことは、非常に興味深いことと思われる。

 ところで、私は裁判員裁判での審理の中身や法廷での質問よりもむしろ、裁判員同士が裁判以外の、いわば”フォーマルな場でのインフォーマル”としてどのように交わっていたか、さらには、よく「裁判官の方が分かりやすく説明してくれ…」とかいう感想を聞くが、そうした裁判官裁判員に対して、やはりインフォーマルな部分でどのように関わっていったのか、ということに興味がある。

 私は同意しかねるものの、「裁判官は世間知らず」という認識は未だに根強い。そうした裁判官が、法廷における絶対的な立場を通じて交わる”世間”(すなわち被告人原告被告)ではなく、同じく審理に参加する立場としての”世間”(すなわち裁判員)とどのように関わっているのかということは、単なるインフォーマルなものとして断じることができない論点が存在すると思う。

 以上のように考えたのは、単純にアイディアとして、この中に審理を担当した裁判官も混ざればよいではないか、ということが出発点だ。当然、事件そのものについては語ることができないだろうが、こうした同窓会を通じて、裁判官が普段感じているようなことを裁判員に伝えられれば、やはり守秘義務の苦悩軽減になると思われるし、何よりもポストとしての裁判官ではなく、生身の人間としての裁判官に触れることができるのではないかと思う。*2

*1毎日新聞 2011年9月17日 15時00分

*2:これは、機械的な裁判官像という、やや無理のある仮定をおいての話ではある。この仮定は現実と乖離しているし、またそうであってほしいと願っているが、それでも上に挙げたような”インフォーマルとしての裁判官”が裁判員とどのように関わるのか、新聞記事では見えにくいこうした部分を追い求めていくことも、裁判員制度の更なる普及に資するのではないかと感じる。

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