2009-03-25
新しいFirefoxのタブは円形になるはずがない
(09/03/26追記)
本文で挙げたマイコミジャーナルの記事は、現在、次のような断り書きとともに内容が修正され、タイトルも『新しいFirefoxの新規タブには円形の隠れ蓑が現れる?』に変更済みだ。
本稿は当初、『新しいFirefoxのタブは円形になるかもしれない』という記事として掲載していましたが、内容に誤りがあったため、タイトルおよび本文に対して大きな修正を加えています。ご迷惑をおかけしました読者の皆様、ならびに関係各位には深くお詫び申し上げます。
以下は、この修正が入る前の内容を扱った文章である。
<追記ここまで>
マイコミジャーナルの記事『新しいFirefoxのタブは円形になるかもしれない』を読んで非常に驚いた。理解が完全に間違っているからだ。
同記事では、こう書かれている。
次にMozilla Labsから発表されたのが『Cognitive Shield』と呼ばれるタブスクリーンだ。現在主力のWebブラウザはファイラで使っているタブのイメージをそのまま導入したものだが、『Cognitive Shield』はこれをマウスに対して構築しなおしたような作りになっている。マウスを使っている場合、タブのある上部までマウスを移動させてタブをクリックするのは面倒といえば面倒だ。マウスポイントがある部分にナビゲータを表示させるというのはひとつのアイディアとしてはおもしろい。
画像も原文から引用されているが、"Cognitive Shield"では、円周上にWebページを示す円形のファビコンが8個並ぶ。
同記事の記述を読む限り、これはユーザーナビゲーションのための仕組みだと受け取れる。ちょうどアイコンが並んだアプリケーション・ランチャのように、ファビコンをクリックするとそのタブに移動するといった具合だ。
しかし、実際はそのようなものでは全くない。そもそも、なぜ"Cognitive Shield"(認知的シールド)という名前が付いているのか、記者の方は疑問に思わなかったのだろうか。シールドとは、何を防ぐものなのか。
原文の"Firefox New Tab Page: Cognitive Shield"を読めばすぐにわかることだが、これはユーザーの注意を無用に引きつけるのを防ぐためにあるのだ。決してナビゲーション機能を提供するものではない。
Mozilla Labsが公開しているAbout:Tabアドオンは、当初の想定では、ユーザーの中心的な視野から外れた位置にメニュー(ファビコンを含むWebページのリスト)を置くことで、ユーザーの注意を元の作業からそらさないでおけるはずだった。しかし、実際にはメニューが出ればどうしてもそちらに関心が向いてしまう。パフォーマンスも考慮してサムネイルは外したが、それでも問題は解決しなかった。要するに、この機能を使いたくない人にとっては、メニューが現れること自体、目障りになりかねないのである。他方で、ユーザーが使いたいと思ったときにメニューが手元になければ、いちいちリストを呼び出すのは面倒なので、使われないまま終わってしまうだろう。
この矛盾に対処すべく考え出されたのが、"Cognitive Shield"である。この円形のリストは、目立たないようにあえてグレースケール(白黒)で表示されている。ユーザーのマウス動作に反応して、本来のメニューが現れる仕組みだ。たとえば、[Ctrl]+[T]キーなどのショートカットで新しいタブを開くとしよう。このとき、フォーカスはロケーションバーに移る。ユーザーがURLなどを打ち込んでいる間、マウスカーソルは動かないのでメニューも出ず、邪魔にならない。タブバー上の「+」ボタンを押してタブを開いたときも、マウスカーソルをページ表示領域に移動させなければ、メニューは出ない。ユーザーがロケーションバーに何か文字を打ち込むべく操作していれば、注意をそらされることはない。
これに対し、メニューを使いたいときはマウスカーソルをページ表示領域で動かせばいい。円形のリストがアニメーションとともにメニューへと展開される。うまいアイデアだ。
というわけで、この"Cognitive Shield"は一時的に表示されるものとして作られている。ユーザーがクリックする対象ですらない。
さらにいうと、展開後のメニューは、ユーザーの訪問頻度などをもとに算出された基準によって、履歴からピックアップされたWebページがリスト化されている。ユーザーがその時点で開いているタブ群と直接の関係はない。したがって、仮に今回のケースと違ってMozilla Labsがこうした円形のページランチャを提供していたのだとしても、『Firefoxのタブが円形に〜』というタイトルを付けるのはおかしい。Firefox 3.5から外された「タブプレビューパネル」あたりと勘違いしているのではないか。
教訓:ちゃんと原文は読むべきだ。
Firefox 3.5の表現力
Bluish Coderの"Very nice web technology demo"で紹介されていたのが、"A glimpse of future Web technologies"という技術デモだ。Firefox 3.1 Beta 3以降に対応し、HTML5のきらびやかな世界を垣間見せてくれる。
SVG、MathML、ネイティブVideoサポート、text-shadow、ルビなど、Webの表現力を豊かにする技術が山盛りで、もちろんインタラクティブ性も備えている。
「Play」ボタンを押すと字幕付きでビデオが流れるほか、あちこちのボタンを押すことで、数式や文字などが変化し、画像にブラーがかかって曇りガラスを通して見たようになる。
Sam Ruby氏が"Several Web technologies"で説明しているところによれば、このデモの作者は、W3Cでインタラクティブ・ドメイン・リーダーという要職を務めるPhilippe Le Hegaret氏で、内部ミーティングのプレゼンテーションにこのデモが用いられたそうだ。
なぜFirefox 3.1 Beta 3以降を対象とするデモなのかまでは説明されていないが、察するに、これだけの表現力を備えた一般向けのWebブラウザは、今のところFirefoxしかないためだろう。現に、Google Chrome 2.0の開発版(2.0.170.0)で同じページを表示させても、崩れてしまうばかりか、ボタンを押しても反応しない個所が少なくない。Firefox 3.5がHTML5の実装で先行していることを示す事例といえよう。
なお、ルビの表示だけはネイティブで対応していないので、Piroさんの「XHTMLルビサポート」を使うよう指示されている。W3C公認のアドオンというわけだ。
Development Meeting 2009-03-24
今週のDevelopment Meeting(2009-03-24実施)より。なお、日付は米国太平洋夏時間(PDT)を基準にしているので、日本時間とはずれる。
Firefox 3.5 Beta 4のスケジュールは変わらず。「4月13日の週」のままで、スケジュール表で14日に固定されていることへの言及はなかった。Blockerバグは減り具合が遅く、気になる。これで本当に4月6日のコードフリーズに間に合うのか。
フロントエンドはパッチが出ていないバグが4個しかないとのことで、かなり余裕だが、バックエンドはJavaScriptチーム以外も開発が停滞している印象だ。なお、localStorageをFirefox 3.5に投入するかはなお検討中。
Firefox 3.1 Beta 3は、日常的に利用しているユーザーが47万人を超えた。アドオン側の対応も進みつつある。
Firefox 3.0.8の開発は予定どおり進んでいる模様。3.0.9のスケジュールは今週とのことだが、この会議では出なかった。
Gecko 1.9.2へ向けたプランが練られ始めたが、この会議でも何点か新しい情報が出ている。Contentチーム(DOMや通信機能などを担当)からは、二つ。一つはMac OSのプラグインに「イベントモデル」を導入する"Mac:NPAPI Event Models"。もう一つは、プラグイン一般の"Advanced Key Handling"である。後者が実装されると、プラグイン(Flash、Acrobat、QuickTimeなど)にフォーカスがある場合にキーボードショートカットが使えない問題(Bug 78414)と、プラグイン・ブラウザ間でキーボードからフォーカスを移動できない問題(Bug 93149)が解消されるという。
また、項目だけの記述だが、大きな変更として"XBL2, compositor, OOP plugins"さらに"frameGC/refcounting"とある。Compositor以外は筆者もよくわかっていない。OOPとはオブジェクト指向プログラミングの略らしいが。他方で、"But not process-per-tab..."とされている。Google ChromeやIE8のようにタブごとに独立したプロセスを割り当てる方式は採用しない、との証拠がまた一つ増えた。
メモ:Platformのプラン
昨日に引き続き、Gecko 1.9.2に関するメモ。プラニングのポータルページがMozilla Wiki内に存在していた。それによれば、次の3〜9か月間に作業を行う具体的な内容をまとめたものが、各ワークシートなのだという。言い換えれば、希望リストではなく、実際の作業計画書に当たる。
最長9か月として、その時点で最終β版が完成している必要がある。そこからRCフェーズに移行するので、やはりFirefox.nextは2010年第2四半期のリリースと考えれば計算が合う。
なお、ポータルページでは、Graphicsチーム(描画や画像処理関係を担当)のワークシートも公開されていた。Javascriptチームのものもリンクはあるのだが、まだ中身がない。




