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Mozilla Flux RSSフィード

2009-12-16

プラグインの別プロセス化が開始 動作はかなり不安定

Electrolysis第一弾 プラグインの別プロセス化が早ければ今週にもTrunkに』の続報である。Another 朝顔日記Scene Side B新秀の介の日記などで既報だが、Minefield(3.7a1pre)にElectrolysisプロジェクトの成果が取り込まれ、プラグインの別プロセス化機能(out-of-process plugins:OOPP)の実装が始まった。

デフォルトではオフになっており、about:configから設定画面を呼び出して、dom.ipc.plugins.enabledをtrueに設定してから使うことになる。この状態で、プラグインを呼び出すWebページを閲覧すると、Windows版では、通常のfirefox.exeに加えて、mozilla-runtime.exeが起動する。プラグインのプロセスは後者が扱っているらしい。

しかし、全体の動作はかなり不安定である。Flashプラグインは、動く場合と動かない場合があり、たとえばページに埋め込まれた広告や、YouTubeの動画は閲覧できるが、ニコニコ動画では再生ボタンを押した時点でMinefieldが暴走状態に突入。タスクマネージャからプロセスの削除を余儀なくされる。しかも、mozilla-runtime.exeを終了させただけではfirefox.exeが残ってしまうため、再起動ができない。必ずfirefox.exeを終了させる必要がある(このときはmozilla-runtime.exeも消える)。

なお、Flashプラグインが動く場合でも、若干コンテンツ表示のパフォーマンスは低下しているように感じた。

他方で、JavaプラグインやAdobe Readerプラグインを読み込む際は、確実にクラッシュする(少なくとも筆者の環境では)。java.comにアクセスしただけでMinefieldが落ちるのには参った。他のWebブラウザでみると、トップページでJavaプラグインは起動しないのだが、実際には何か関係があるのだろう。

というわけで、一言でいえば、実用に耐えない。開発者も当然そのことはわかっていて、”Bug 531142 – Tracking: turn on OOPP by default”には「blocking1.9.3: beta1」のフラグが立てられている。つまり、計画では、Firefox 3.7開発版の二つ目のマイルストーンで、オンの状態がデフォルトになる予定だ。それまでは、オンにして使う際、文字どおりMinefieldが地雷原になることを覚悟しておくべし。

(09/12/19追記)
Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 6.0; en-US; rv:1.9.3a1pre) Gecko/20091218 Minefield/3.7a1pre ID:20091218043634

JavaプラグインとAdobe Readerプラグインは読み込み時に落ちることがなくなった。ニコニコ動画はあいかわらず再生しようとすると本体がフリーズする。

種類の異なるプラグインを読み込めるようになったことで判明したが、利用中のプラグインの数だけmozilla-runtime.exeが起動する。つまり、プラグイン単位でプロセスが割り当てられているのだ。そうしておかないと、FlashプラグインのバグのせいでAdobe Readerプラグインが巻き込まれて落ちるといった理不尽なことになるから、考えてみればあたりまえの話だが、一部とはいえFirefoxの「マルチプロセス」を目にするのは感慨深い。

本気か、布石か

ITmediaエンタープライズ『FirefoxユーザーはGoogleよりもBingを――Mozilla幹部が呼び掛け』で紹介されているように、MozillaのエバンジェリストであるAsa Dotzler氏が、ブログ「Firefox and more」の中で、『if you have nothing to hide...』および『he doesn't even understand』という記事を公開し、GoogleのEric Schmidt(エリック・シュミット)CEOを批判している。なお、その続編となる記事が2本公開されていたが、議論に益するところがあまりないとして、現在では削除されている。

Dotzler氏の主な主張は、上記ITmediaエンタープライズの記事にあるとおりだが、シュミットCEOが、プライバシー情報はGoogleを含む検索サービスが収集してしまうものだし、米パトリオット法がある以上、政府に提出される可能性もあるのだとして、そもそも入力しないようにすべきかもしれないとインタビュー中で発言したことに対し、Googleの最高責任者たるものがプライバシーを全く理解していないと批判したものだ。

それだけなら、ここまでのニュースにはならなかったかもしれないのだが、Dotzler氏は、Microsoftが提供する検索サービスBingのほうが、プライバシーポリシーでGoogleよりも優れているとして、Firefoxの検索をGoogleからBingに切り替えるよう勧めた。ここがさまざまな憶測を呼び、ニュースバリューを生んだわけだ。

その背景には、Firefoxがその収入の大半をGoogleとの契約に依存していることがある。Firefoxのデフォルト検索サービスをGoogleにし、起動時にカスタマイズされたGoogleのページが表示されるようにすることで、Googleにアクセスを呼び込み、Googleはその対価を支払う。複数年の契約であり、今すぐ切れるわけでもないし、Dotzler氏の言動からみて、Mozilla側があれをするな、これをするなといった、細かな制約を含む条項にはなっていないのだろう。とはいえ、「デフォルトがGoogle」という点が契約のポイントである以上、MozillaのエバンジェリストがBingに切り替えるべしと公言するのは穏やかではない。

Dotzler氏は、あくまで、個人的にシュミットCEOの発言に怒りを覚えて記事を公開したのだとする。Yahoo!ではなくBingである理由は、同氏のコメントによれば、Yahoo!とMicrosoftが提携し、実質的にサービスがBingに統合されるからだという。一見もっともだが、とりあえずGoogleを避けようということなら、Yahoo!を挙げてもよかったはずだ。Yahoo!のエンジンが後でBingに置き換わり、Bingそのものを使うのと変わりがなくなるとして、だからといって最初からBingを使うべき理由になるだろうか。むしろ、ユーザーの慣れだとか、インターフェイスの洗練度といった点で、Yahoo!を勧める意見があっても不思議はない。加えて、Microsoftがユーザーのプライバシーをどの程度尊重するのか、疑問も残る(『Firefoxが提供する安全なブラウジング』参照)。

これに対し、契約という側面からこの問題を眺めるならば、Yahoo!かBingかは大きな意味を持つ。要は、エンジンのレベルで選択肢がGoogleとBingしかないとなると、Googleとの契約を切れば、Microsoftと契約する可能性が高くなるわけだ。もちろん、Webサイトにアクセスを運ぶ点に着目すれば、Yahoo!という選択肢もなくはないが、Yahoo!自身がMicrosoftに代金を支払ってサービスの提供を受けるのだろうから、Mozillaが安定して高額な収入を得ようとすれば、やはり資金力のあるMicrosoftが契約相手になると考えられる。

それともう一つ、GoogleがGoogle Chromeの改良を急速に重ねていることや、Chrome OSを発表したことも忘れるわけにはいかない。単純にビジネス上の損得を考えれば、25%のシェアをもつFirefoxをGoogleが切れるとは思えないが、Googleの価格交渉力が強まっていることは確かだろう。次の契約更新時に、GoogleがMozillaにどういう条件を提示してくるのかは、Mozillaにとって大きな関心事のはずだ。

ならば、Mozilla側としても、布石を打っておこうと考えるのが自然だろう。Dotzler氏の記事は、そういう意味も併せ持っている可能性があると筆者は考えている。記事へのリアクションは、大きいほどよい。たとえ賛否同数でもだ。Googleに「Bingに乗り換えるかも」と示して交渉の材料にできる。あるいは、もし契約が切れることになって、本当にBingをデフォルトの検索サービスにしたときも、「あのときGoogleにはプライバシーの懸念があると述べました」と説明できる。

まとめると、タイトルに対する答えはこうだ。「本気であり、布石でもある」。単純に割り切ることはできない。

当ブログのThunderbird 3関連の記事リスト

Thunderbird 3が2年半以上の期間を経てようやくリリースされた。2010年前半には3.1に置き換わる可能性もあるが、当面は3.0.xが主流となる。
(10/01/10追記)
Thunderbird Localization (L10n)『Thunderbird 3.0 released in 49 languages』が伝えているように、49ロケールをサポート。Thunderbird 2のリリース時には38ロケールだったが、追加が14、削除が3で49にまで増加したという。

正式版はMozilla Japanにプロダクト紹介リリースノートが置かれているので、当ブログが仮訳を載せる必要はなくなった。代わりに、これまで当ブログでThunderbird 3のトピックを扱った記事のうち、主なものをピックアップしておきたい。2009年に入ってからの開発状況について、その一端を垣間見ることができると思う。