「東京ヴァンパイア・ファイナンス」

「ぬはッ、はっ、ぬは、ぬはははははははははははははははははははッ、おまえら都市の怪物どもはぐるぐる溶けて混ざってバターになれ。
ひしめきあってぶつかりあって、もっともっと無限に殖(ふ)えろ!」


あらすじ

破格の超低金利で高額融資をする<090金融>ヴァンパイア・ファイナンスを営む万城小夜。そんな彼女は、今日も融資客を求めて都会の夜に蠢く。

  • 送りオオカミをめざす"ひのけん"
  • 性転換手術を望む"美佐季"
  • 振り込め詐欺グループへの復讐を目論む"<やえざくら会>の老人たち"
  • ドラッグ・デザイナーを辞めたがっている"しずか"

各々様々な問題を抱える彼らは小夜に出会い、高額の融資を受けることにする。が、小夜は融資をするばかりかそれぞれの問題に勝手に首を突っ込んできて―


オチが…

第15回電撃小説大賞「銀賞」受賞作。作者は他にもダ・ヴィンチ文学賞「大賞」とか日本ホラー小説大賞「大賞」等で4冠らしい。著者近影を見てみたら「ああ、なんかダ・ヴィンチっぽい(?)なぁ」と不覚にも思った。


絵師が佐々木少年だったりするので、読むまでは都会を舞台にした吸血鬼物かと思ってたがそんなことはなかったぜ。
結構面白かったのだが、オチの部分で(悪い意味で)やられてしまいました。
ジャンル的には、ポップなノワール物という認識でいいのだろうか。『池袋ウエストゲートパーク』みたいな?アンダーグラウンドな事柄を扱いつつも、その実あんまり暗くならない展開は一般的なラノベだとあまり見られないもので、意外性もあって楽しめた。個人個人だと結構重めの問題もあったりするので暗い展開になりそうなものだが、その辺りは小夜の言動に助けられている気がする。「不夜城都市」で「むてきのゆうえんち」ってルビがつくような雰囲気は割りと好み。
お話の構成は、群像劇ということで債務者4者のお話がシャッフルして交互に進んでいく感じ。『バッカーノ』っぽいかも。ただ、ある程度は相互に関連する部分があるものの、実際には結末部分程度くらいしか関わりが無いのも同然っちゃ同然だったのでシャッフルに意味はあるの?という感はある。今は時間で章を分けてるけど、視点別で章分けでも良かったのではないか。ちなみに一つ一つの話自体はそれぞれ単体でも驚きの展開っぽいのもあって結構面白いと思う。ただ、"しずか"の話だけはスイーツ会議でジャンクション化してる関係もあって単体だとどうしても起伏に欠けるとは思ったが。
で、問題の終章部分。シャッフル如何は置いておいても、散々煽って結末がお前それで良いのか?確かにヴァンパイアはお亡くなりになってますし、辻褄はあってますけどー

「だから、理由はないの!」

って( ゚д゚)ポカーン
あと各章の冒頭に押絵が入る形なのでネタバレ防ぐには仕方ないことなのでしょうけど、普段着ない大人しい服+黒ストで照れる小夜の押絵が無いのが実に惜しい…ッ

4048675192東京ヴァンパイア・ファイナンス (電撃文庫)
真藤 順丈
アスキーメディアワークス 2009-02