シンプル


ビル・エヴァンスは「自分がよくわかっていないものを演奏するよりも、シンプルな演奏をすることを好んだ」。また「今やジャズの素材としてのポピュラー・ソングやブルースはタネ切れになった観がある」との言葉に「僕はそうは思わない」と切りかえした。


自分がよくわかっていないものを演奏する方が、スリリングだし、探求的で、未来へ開かれているような気がする。自分にもよくわからない何かに取り組むことで、何か得体の知れない力を掴み出す契機になる。それはおそらくそのとおりだろう。


しかしここでビル・エヴァンスが言ってることは「自分がよくわかっていないもの」と言葉でいうとき、その言葉の枠でラッピングしてしまったものがすでに「シンプルじゃない」というような意味なのではないかとも思う。


自分がよくわかってないものに取り組んで、それを演奏するということが、音楽とは別の、ひとつの約束になってしまうことをおそれる。それは実際のところ「自分が最初からよくわかっているもの」を演奏し続ける事に驚くほど近づいてしまいかねない危険があるのではないか。


「自分がよくわかっていないもの」と、あらかじめラッピングしてしまった時点で、ポピュラー・ソングやブルースを「ジャズの素材」「タネ」と考える事と変わらない。そうではなく、よりシンプルに始めるということだ。そういえばビル・エヴァンスの演奏や、あのインタープレイは「自分がよくわかっていないもの」を演奏しているようにも「変わったことをやっている」ようにも感じられない。要するに、こう言ってよければ、全然「前衛的」な感じがしない。単に聴いてるだけでは、何かすごいのか、よくわからないのだ。


ちなみにビル・エヴァンスは、クラシック演奏をするピアニストのように繊細なタッチで、はじめてジャズを演奏した、と言う事はできるだろう。あとビーチボーイズは、フォー・フレッシュメンのような素晴らしいコーラスを、ロックバンドのワイルドでグルーヴィなビートにはじめて乗せた、と言う事もできるだろう。


ところで、身体が不調。とは言っても全然大した事ない。口内炎と足の痛み。


口内炎は毎度毎度、しょっちゅう出来るので、もう口の中に口内炎があるときの方が多いくらいかもしれない。しかし先週くらいから舌の先に出来たやつは、ここ数年で経験したヤツの中でも飛び抜けて強烈な痛みをともなうもので、本当に痛くて、痛みで頭がぼんやりしてくるほどだ。日常生活にかなりの支障をきたしており、じわじわと消耗させられている。過去経験した口内炎被害の中でもおそらく最大規模と言って過言ではない。記念に台風みたいに名前を付けるか。


あと、足も痛い。先週末からだ。歩くと痛いのだ。あーもう…ほんとうに嫌になるのですけど、うちみとか捻挫とか、そういう感じの痛み。歩き始めがすごく痛くて、片足を負傷した人みたいな歩き方になってしまうのだが、五分もすると痛みが和らいできて、しばらくすると忘れてしまうくらいになる。でもまた立ち止まったりして、しばらくして再び歩くと、痛みも復活していて、また痛いという事のくりかえし。


でも今日はかなり回復して来た感じがする。痛みが薄らいで来た。良かった。明日の朝がまたどうかによる。


ちなみにビル・エヴァンスって、ウェールズアメリカ人の父親とスラヴ人の母親とのハーフなんですってね。