水元公園に行って、木のかげにシートを敷いて横になって、空を背景にした木の幹のかたち、葉のかたちを見ていたり、安いワイン飲んでサンドイッチを食べたりしながら本を読んで、そのあと居眠りした。


起きてから水生植物園まで歩いた。湿った黒い土と細かい枯れ枝や葉が一箇所に集まって水に浮かんでいるのをしげしげと眺める。土と水の境目は、まさに交通空間という感じがする。ゴミや屑や残骸が溜まるし、草も苔も水と外の境界にあって、上からじっと見ていると、どこかの都市を飛行機から見下ろしているみたい。


大きな池の一面にスイレンの葉が波紋のように浮かんでいる。太陽の光を反射して水と葉に色の差がなくなって、水がレリーフ状に葉の形を浮き彫りにされているようにみえる。池の真ん中辺に、一羽の水鳥が、植物みたいにすっと静止している。じっと、斜め下を見ている。何か、水の中に動くものを見つめているのか、あるいは何か、凄くショックな出来事でもあって呆然としているのか。


これから青々と繁盛していこうとする植物達もいれば、蓮の葉が朽ちて水のところどころから突き出てくの字に曲がっていて、廃墟のようにもなっていたし、植物は植物で、今の自分の過程に忙しそうだ。皆がいっせいに育ったり枯れたりするわけでもなく、枯れるのもいれば育つのもいて、そのおかげで、池や水際はいつもあれほど賑やかで汚らしい。湿地というのはそう簡単にキレイなものを見せてくれるわけではないが、いつでも見るべきものがある。