ヴァンパイアノイズム

ヴァンパイアノイズム (一迅社文庫)

ヴァンパイアノイズム (一迅社文庫)

■ ストーリー
 僕には何もなかった。

 ただただ惰性のように生き、ただそれに流され続けていた。

 フラっと僕の部屋に尋ねてくる幼馴染である四条詩歌が何もせずにくつろぐ様を眺めたり、学校に行っては暇なときに変人だが美人でもある小野塚那智をただ眺めたり。ただ、その程度の生活だった。

 そんなある日、不意に一人の少女と出逢った。彼女はふらふらと死に近づき非常に危なっかしかったので思わず後を付けてその行方を見守った。

 やがて彼女は僕の尾行に気付いた。そして彼女はこう言うのだ。

「わたしは吸血鬼になりたいの」

「わたしを手伝ってくれない」

 それは吸血鬼になりたい彼女――萩原季穂と、何も無い僕との青春物語。

■ 最近
 随分と死を身近に感じるようになりました。

 私の好きな作家さんが亡くなられたり、私自身も交通事故にあったり、『あなたのための物語』を読んだりして、死は何処にでもありふれていることなんだと認識させられました。

 それはこの物語でも例外ではありません。

■ もし
 死が避けられないがゆえに、死に怯えてしまったら? 一度でも死の妄想に取りつかれてしまったら?

 考えるだけで恐ろしいですね。

 それ故にありもしない、しかしあってほしいと誰もが願う抗えない誇大妄想はどこまでも転がりゆくのでしょう。

「だから言ったでしょう。わたしは自分の死を想像しないことにしているのよ。それが途方もなく怖いことだと知っているから。あなたは愚かね、片桐」


■ それでも
 死が近いからこそ生の幸せを感じることが出来る。

 こんな僕でも話しかけてくれる人がいる。貴女のそばには僕がいる。僕のそばには貴女がいる。

 それがあったことは間違いはないのですから。

■ 評価としては
 しっとりと落ち着いて星4つ。死は見つめるだけでも辛いものですね。