活字が大好き

2016-06-26

片岡義男 ”Ten Years After”

高校卒業後10年過ぎた男女3人のトライアングルな話。
何故か猛烈に読みたくなり、四半世紀ぶりの再読。

初めて読んだのは高3の時。覚えているのは、主人公の大学院生の男性がジャズレコードを買って帰宅、聴きながらのんびりともう1人の主人公の女性と電話する場面。都会の大学院生ってこんなものかと思ってました。しかし今なら断言できる、まともな大学院生はバイトからすぐに帰り、コツコツ勉強します(笑)。

話を戻します。猛烈に読みた返したくなった理由は松本が舞台だから、という事にすぐ気付きました。松本の高校生が東京に出て10年後の話だったのです。

叙情性を一切排した文体は、今は少し奇異に感じます。が、昭和情緒の残るバブルの真っ只中の時代に、これは反昭和の実験だったと思います。登場人物の会話、行動、服装、主人公たちの体型すら昭和離れしてます。

1番の謎だった、主人公の女性の行動。今なら少しわかります。なに食わぬ顔をして友人同士の男性と自ら進んで関係を持ってしまう。私もあり得ない行動だと思ったし、読者はみな戸惑いを覚えたと思う。今、30年後になってしまった私から見るとそもそもそんなに大した意味はないのだと思う。明るい不条理、ただ試してみたかった、それだけの、でも切実な理由だと思う。比べられた男性の立場はないよね〜っておばちゃんは思いましたさ。でもかっこいいな、って。女にあっさりとこういう事をされる男を描くのが片岡義男の反昭和なんだと思いました。つまらない感想でごめんなさい。

3日間の短い物語に、おばちゃん(敢えてこの一人称を使います)が続きを考えるとしたら、どっちか気に入った方とあっさり結婚する展開です。すっかりせっかちになったおばちゃんは1時間で読了しましたが、紙一重の会話の妙はちゃんと伝わりましたよ。でも大人が読むには軽いな、、研究書の合間にぴったり。

Ten years after (1982年) (角川文庫)

Ten years after (1982年) (角川文庫)

2016-01-27

井上章一『京都ぎらい』

京都への愛憎と勇気ある内部告発

「京都」と行政区分の京都市は違うのである。京都に住んでいる人には当たり前の事かもしれないが、歴然と違うのだそうだ。それは「川向こうは江戸っ子じゃない」みたいな新興都市江戸の区分より複雑で強力な磁場を持っているらしい。

洛中と洛外。洛外育ちの井上氏は、洛中人士の差別にたびたび会って来たのだが、文化人と呼ばれる人々にその傾向があるらしい。その微妙な差別表現を、井上氏の筆がとてもわかりやすく説明してくれる。

京都は大好きだ。寺社仏閣、美術館、、、でも空気が重い。その重厚さを堪能して東京へ帰ると空気が軽くて開放的でほっとする。私から見れば井上氏だって立派な京都人だ。だって相手の裏の裏の裏まで読んで、やわらかーい嫌みを返せるんだもん。

そんな「京都」も、井上章一という研究者を育てて、その仕事を受け入れる度量はあるのだ。

最後に、、天竜寺は南北朝の南朝の鎮魂のために建立されたのだが、それをめぐっての井上氏の考察、さらに靖国神社の考察は非常に面白い。

京都ぎらい (朝日新書)

京都ぎらい (朝日新書)

2015-11-08

有川浩『旅猫レポート』

娘の推薦図書です。
週刊文春に掲載されていた時は読み飛ばしていました。
大人から小学生まで楽しめる貴重な本です。

中盤以降、何回も泣きました。
終盤はボロボロ。
猫好きにはたまりません。
猫に興味がなくても、これを読んでもし次に捨て猫をみたら素通りできなくなりますよ。
猫のいる生活がどれだけ豊かなのか、教えてくれるお話です。

私も、飼っている猫にいつも見守られています。
お世話しているつもりで、実はお世話されているんだなあ、と
いつもと視点が変わった読後でした。

旅猫リポート (講談社青い鳥文庫)

旅猫リポート (講談社青い鳥文庫)

2015-10-10

中野京子『怖い絵』シリーズ

専門的知識がなくても(私も西洋絵画の事はよく知らないのです)楽しめます。

字が大きくて(ここ大事です、目の疲れ方が違う。)カラー図版も多く、楽しめます。さらっと読めます。
全てが怖いかどうかはよくわかりませんが、ベラスケスの「ラスメニーナス」(スペインハプスブルグ家の可愛い金髪の王女さまの肖像)は確かに怖かった。

研究的に見るとちょっと物足りませんが、とにかく文章が上手いです。こんな風に語彙が豊富だったらなあ、って思います。

シリーズ2、3と『「怖い絵」で人間を読む』を読みました。1はそのうちに。

怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

怖い絵 泣く女篇 (角川文庫)

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

「怖い絵」で人間を読む (生活人新書)

週刊朝日ムック『武将の末裔』

もしご先祖さまが有名な戦国武将だったら?
関ヶ原の戦いと戊辰戦争でどのような行動を取ったかで今がかなり決まります(笑)。

戦国から江戸にかけての大名の末裔が、先祖をどう見ているか、有名人をご先祖に持ってどんな暮らしをして来られたのか、今どんな暮らしをされているかについてインタビューで語っておられます。

明治以降東京にお住まいで会社勤めの方が多いのですが、地元のお祭りには会社を休んでも必ず参加されているとか。歴史上の人物をとてもビビッドに身近に感じられる逸話がいっぱいです。(学習院を出て日本郵船にお勤めの方が多いのはなぜでしょうか?)

特に面白かったのが、「戦国武将ビッグ4(徳川家康、武田信玄、長宗我部元親、真田幸村)末裔座談会」です。徳川宗家のご当主が小さい頃は真田十勇士(反徳川)の大ファンだったというネタで笑いを取るあたり、さすが殿の余裕と貫禄を感じさせます。

あと、吉良上野介が二カ所出て来ますがこれが面白い。吉良家から養子をもらった上杉家から見ると赤穂浪士はテロリストだとか、津和野藩の亀井茲親は吉良を斬ろうとしたが家老の機転でせずに済んだとか、目から鱗なエピソードが満載です。

すぐに読めるけど、情報量はすごい!歴史好きな方にお薦めです。

2015-09-14

中島京子『小さいおうち』

偶然にも『細雪』と同じ時代背景の物語でした。
赤い屋根の洋館に済む美しい奥様とよく出来た忠実な女中。事件は密かに起きた。
細雪』の重厚さ、複雑さには及ばないものの、大変面白かったです。
ずっと前、まだ茅場町にあった頃の山種美術館で見た戦前の美人画が、とても明るい雰囲気を持っていてとても好きなんですが、その絵を思い出しました。タイトルも作者も思い出せないけど、「今日は三越、明日は帝劇」と銀座を闊歩するご婦人の横顔でした。大正の美人画はなぜかみなおどろおどろしいんですが、昭和初期のは不思議と明るいんです。そんな世の中のイケイケ感が戦争への入口だったのかもしれませんが。

小さいおうち (文春文庫)

小さいおうち (文春文庫)