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2010-12-29

[]キック・アス

ヒット・ガール、萌え

『ロック・ストック〜』シリーズのプロデューサーであり『レイヤー・ケーキ』で監督デビューしたマシュー・ボーンの最新作。『レイヤー・ケーキ』を撮った彼らしい、オフビートで黒い笑いに溢れたアメコミ映画の傑作。今年観た映画で一番好きかも。

特殊能力なんて何も無いただのマンガ好きのボンクラが本気でヒーロー目指したらどうなるかっていう、既存のアメコミへのパロディ要素から始まっている映画なんだけど、『ウォッチメン』や『ダーク・ナイト』でも描かれた「ヒーローとは何ぞや?」というテーマへも深く言及できていて、馬鹿馬鹿しくて笑えるだけじゃなく最期には熱く燃える傑作になっていた。

Youtubeをきっかけに一躍有名になったり仕事の依頼はMyspaceだったり、現代的な要素を生かしてるのがおもしろかったな。ヒーロースーツがダブダブだったりマイスペのフレンド数気にしてたり、正義の味方としてはあまりにもふがいなさ過ぎるキック・アスだけど、ボコボコにされながら「見ているだけのヤツらが許せない」と語る情念の一瞬の悲しみにはグッときた。いつも被害者の側であったであろう彼がヒーローを目指すのは、ただ目立ちたいだけではなく社会への復讐も兼ねているのだ。

そしてなんといってもヒット・ガール(殺人女児)!この映画の見所の8割は彼女が担っていると言っても過言ではないくらい魅力的な活躍。こんなに直接的に子供が沢山の大人を殺す映画初めて観た!ヒーローとしては心意気だけで身体性が伴っていないキック・アスに対して、ヒット・ガールはこの世界において唯一超人性を獲得しているキャラクターだ。しかしその力は復讐の為に備わったものであり、やはりヒーローと呼ぶには程遠い。ヒーロー不在のまま進行するヒーロー映画という構造もおもしろいし、なにより最期はこの二人のヒーロー的な共闘によって幕が閉じられる点も正しく熱い!

この映画はアメコミ映画でありながらアメコミ的世界観に憧れているのは主人公だけなので、典型的ヴィランとしての派手な悪役も登場しない。そのかわりに出てくるのがマフィアキック・アスのヒーローごっこが不可抗力で思わぬ成果を挙げてしまった為にマフィアに目を付けられることになる。映画的には当然このマフィアのボスがラスボスとして立ちはだかるわけなんだけども、実はこのマフィア以上に邪悪なキャラクターなのがヒット・ガールの父、ビッグ・ダディだ。

確かにマフィアのボスはマフィアのボスらしく冷酷で無慈悲なキャラクターなんだけど、家族愛には溢れてるんだよね。うまくいってるのかは息子の捻くれ具合を見ると微妙だけど、一緒に映画を見に行く時間を大事にしたり、家族の前ではなるべく仕事の話を控えたりと、すごく家族を大事にしていて、良き父であろうと努力しているように見える。対してビッグ・ダディは一見仲睦まじい親子に見えるし、娘に対して優しく愛に溢れているようにも見えるんだけど、実際は自分の復讐心の為だけに幼い我が子を殺人の道具に使っている。幼い子供が激しい殺陣を難なくこなすところがこの映画のキモでもあるんだけど、この「業」の深さがそのまま映画自体にも深みを与えていて素晴らしい。そしてだからこそビッグ・ダディはこの映画の中で一番苦しく惨たらしい死に方をしている。最期までこんなイカれた親父を父親として健気に愛したヒット・ガールの純粋さが泣ける。

コミックとは全然違うというイギリス人監督らしい皮肉たっぷりな終わり方も見事。一見大団円に見えるけど、世の中にヒーロー気取りが増殖し、更にヒーローに憧れたレッドミストはヴィランとして生まれ変わってるし、多分この先報復に次ぐ報復が繰り返される暴力の歴史が紡がれる世界になるんだろうなぁ。まさしく『ヒストリー・オブ・バイオレンス』!

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