Naked alchemist

2010-11-09

[][]トイストーリー

今更ですが書きました。良すぎたので。超長い&ネタバレ注意。

トイストーリーシリーズ。夢と冒険がいっぱい詰まった心の底から楽しい作品だ。10人以上いる脚本家によって時間をかけてじっくり練りこまれたストーリーは常にアイディアに富み、破綻無く、誠実さに溢れている。それが3作目ともなるとキャラ転がしが巧みも巧み!新キャラも含め全てのキャラクターが丹念に描きこまれ、画面に映る全ての要素が人の手によって美しく制御され、1時間30分の間一瞬たりとも退屈さを感じさせない。

今作はそんなこれまで以上の楽しさを詰め込んだ大冒険を繰り広げつつも、2作目で提示された「子供はいつか大人になりおもちゃを捨てる日が来る」という問題にも真正面から切り込み一つの解答を出した、消費社会の寓話とも呼べる大作となった。

物語全体のフックとして用意された大仕掛けは「脱走劇」。1作目を踏襲したのか、物語の骨子はちゃんと西部劇風になっている。悲しい過去を持つ男(ロッツォ)が流れ着いた街を恐怖によって支配し、そこへ同じくなんらかの理由で放浪していた元保安官(ウッディ)がやってきてその街を解放する。まさしく西部劇って感じだけど街→幼稚園という舞台設定等、おもちゃの世界への落としこみがおもしろおかしく鮮やかだ。

そしてこの愉快な活劇と平行して描かれるのが、別れと恐怖だ。今作ではアンディは進学の為に引越しをする時期である。もうおもちゃで遊ぶような年頃ではない。それでも愛着のあるおもちゃ達は遊ばれる事はないものの大切に保管してある。母親からはどうするのか急かされ、まだ小さな妹には「まだこんなの持ってたんだ」とからかわれる。アンディは決断しなくてはならない。

物語冒頭、ウッディ達はアンディに遊んでもらう為にある作戦を決行する。作戦の半分は成功し、ウッディ達は久しぶりにアンディの目に触れるが結局遊んでもらう事は叶わない。レックスの触れたれた事への無邪気な喜びの言葉が切ない。このように物語の起点から既に愛した者から忘れられる恐怖、捨てられる恐怖を予感的に味わい、幼稚園という牢獄へと舞台を移してからは更に直接的な恐怖を次から次へと体験していくことになる。遊び方を知らない子供達からの拷問のような仕打ちに始まり、ゴミ捨て場、収集車、集積場、そして焼却炉。捨てられるかもしれないという予感から始まり、段階を経て物理的な死へと紡がれる旅路はまるでダンテ神曲、おもちゃ地獄巡り。特に焼却炉のシーンは煉獄を想起させるような見事なライティングで、ウッディ達の表情が劇画のようにくっきりと映し出される。この一瞬、彼らは絶望し、悲しげな表情で手を取り合い、死の運命を受け入れ殉じようとする。あの楽しく愉快な仲間達からは想像もできないような重苦しく悲しいシーンだけど、トイストーリーだからこそ描けた屈指の名シーンだ。

底抜けの楽しさと底抜けの悲しさを感情のジェットコースターに乗って味わった終着点は穏やかな別れのシーケンス。ここまででも既に名作足りえる完成度なんだけど、ここからラストまでが完璧すぎて名作度100倍くらい押し上げてる。

アンディは当初の予定通り、一番思い入れのあるウッディだけを大学へ連れて行き、他のおもちゃ達を屋根裏部屋へ保管するつもりだ。もちろんウッディもアンディの意思に従うつもりだった。だけどアンディママがからっぽの彼の部屋を観て我が子が出て行く事を実感し涙する姿を観てウッディも観ている我々もハッとさせられる。ウッディはアンディの親友として、成長を見守り続けてきた男として、アンディの理想のヒーロー像を彼自身の遊びの中で演じ続けてきたおもちゃとして、アンディの側ではなく仲間達と共にいる事を決断する。ウッディは仲間想いで絶対に仲間を寂しがらせたりはしない、そんなキャラクターを想像しながら遊んできたのは他ならぬアンディだから。

このウッディの決断と機転から、もともと誰にも譲るつもりのなかったおもちゃ達はアンディ自身の手によってある女の子に渡される事になるんだけど、この一連のシーンでのアンディの表情、行動、セリフ、全てが涙腺をザクザク攻撃する!ゆっくり時間をかけて一人一人紹介していくのも、最期に女の子と一緒におもちゃ遊びをするのも、なんかもう全てが愛に溢れていて感動に打ち震えずにはいられない。唯一大学へ連れて行くはずだったウッディをダンボール箱の中に見つけてから手渡すまでの逡巡に、アンディはおもちゃ遊びで培った想像力で思考したのだ。ウッディはきっと仲間が寂しがらないように自分からおもちゃ達の元に戻ってきたのだと。ウッディの行動とアンディの想像がかつて一緒に遊んでいた時のようにここでリンクする。言葉を交わした事がなくても二人はしっかりと当然のように通じ合っていた。

人間であるアンディが中心にいるこのシーケンスでは側にいるおもちゃ達はただのおもちゃとして画面に映る。動きもしなければ表情もない。それでも観ている我々はありありとその感情を、その幸福感をアンディの視点から読み取る事ができる。稀に見るほど優しく美しいシーン。これが映画だ。

2010-02-24

[]The Killers Live From The Royal Albert Hall

2度の来日公演キャンセルでこのバンドから心が離れた人も、多分これを見たらまた好きなっちゃうよ。そこらへんのライブDVDとは一味違う、映像作品として高品質な素晴らしいものになっている。

イギリスで100年以上の歴史を誇る演劇場ロイヤル・アルバート・ホールの豪華絢爛な雰囲気にThe Killersというバンドの今現在の姿、音楽が見事に映える。まるでThe Killersの為に用意されたかのような舞台だ。バンドの初DVD製作の舞台にこのアルバート・ホール公演を選んだのは最高すぎる選択だ。この最高のシチュエーションを最高の状態で残そうと潤沢な資金を使って把握しきれないほどのカメラが用意されており、各ポイントの定点カメラはもちろんの事、手持ちカメラで舞台裏を移動するメンバーの姿まで追っかけてライブの迫力を余す事無く伝える事に成功している。The Killersとしてもこの舞台で演奏する事に深い意義を感じていたらしく、パフォーマンスの気合の入り方も半端ない。Youtubeで観たフェスでのブランドンのパフォーマンスは興奮しすぎていてお世辞にも安定しているとは思えなかったけど、この映像の中の彼は高揚しながらもどこか落ち着いていて風格さえ漂っている。

ハイライトは「Sam's Town」から本編終了までの一連の流れ。アルバート・ホールの華美な内装に熱の篭ったパフォーマンス、熱狂する観客、そしてそこに流れる時間と音楽、すべてが完璧で美しい。

この映像作品の舞台に居合わせる事ができた観客達はめちゃめちゃ幸せ者だ。見ればわかる。観客みんなすげーいい表情してんだもん。正直2度もこのバンドを観る機会を失ったのはすげー悔しい。でもだからこそいつかどんな手を使ってでもこのバンドのライブを観てやろうと心に決めた。

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本編は是非Blue-RayやDVDの美しい映像で楽しんで欲しい。少なくともDVDなら喋りに全部字幕が付くよ。日本語字幕は日本盤独自に製作された訳じゃなくて米国内で作られたっぽいのでフォントが汚いけど我慢できる程度。

2009-12-10

[]MICHEL GONDRY 2 more videos before & after DVD 1

結構前にWeb記事で存在を知ってめちゃくちゃ欲しかったけどオフィシャル限定通販だったから諦めてたらインポートがいつの間にかタワレコに置いてやがりましたので即確保。Directers Labelから漏れた作品やリリース後に作成されたビデオ、ドキュメンタリーなんかが収められてる。あとオマケで「ザ・シンプソンズ」The White Stripesがゲストの回のビデオパロディ部分が収録されてるよ。インポートだから当然ドキュメンタリーなんかには字幕無し。日本盤出してー。

見たことないミュージックビデオいっぱいあってうれしいかったけど、見たことないビデオは総じて退屈なのが多かったな。本当に興味深いおもしろいビデオはとっくに有名になってるもんな。

今回たいしておもしろいビデオではないと思ってたのに撮影方法を知って驚いたのがコレ。

Paul McCartney - Dance Tonight

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The White Stripesの「Dead Leaves And The Dirty Ground」のビデオも同じ手法だったのかな。普通に合成でしょって思っちゃうんだけど、驚いた事にこれ合成は一切してないんだよ。合成無しでどうやって撮ったかというと、この部屋のセットと鏡合わせのようにまったく同じ裏セットがカメラの後ろに組んであるんだよ。でカメラと本セットの間に大きなガラスが貼られてるの。ビデオに登場する半透明のゴースト達は裏セットの中で演じている人がガラスに映りこんでるだけなんだ!つーか俺のへたくそな説明を読むよりメイキング見たほうが早い。

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アイディアはシンプルなのに手が込みすぎ。合成したほうが早い気がするけど合成で同じような演出をする場合、1つのカットだけでもカメラをまったく同じアングル・動きで2回撮影しなきゃならない為、機械制御の大掛かりなカメラセットが必要になるしセット内でのカメラの動きに制限ができてしまう。逆にこのガラス映りこみ撮影だと自由に撮影できるメリットがあり、手持ちカメラによるホームビデオのような温かみのあるカメラ演出を実現できる。ちゃっかりポールとの競演まで果たしちゃってる図太さも含め、やっぱりミシェル・ゴンドリーはすげぇや。


ちなみにオマケのドキュメンタリーに日系人女性が出ていて、なんか見たことあるなーと思ったら藤谷文子だった。映画「TOKYO!」繋がりですな。見てないけど。インタビュー受けてるんだけど英語の為何の話をしているのかわからず。しかしインタビュー途中、突然電話に出たと思ったら関西弁を繰り出す藤谷さん。

「パパ?」

セガールだー!セガールきたー!どうやら電話でミシェルがインタビューしたがっていると交渉してくれているようだ。結局スティーブン・セガールのインタビューは実現する訳なんだけど、セガールさんは娘さんと話す時は極力日本語を使うようにしてるみたいだね。なんか素敵パパでほのぼのした。でも結局なんのインタビューだったのか全然意味がわからんかったよ!リスニング能力が欲しい。

2009-11-26

[][]ウィッカーマン

ウィッカーマン 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]友人に借りたその1。

ぶっ飛んでるなぁ。噂に名高い作品なのでラストシーンとか知ってたんだけども、探偵物っぽい構成のミステリなのにところどころミュージカル仕立てになってるのにすげー驚いた。動物のお面とか仮装パレードのシーンはイカスな。「サンタ・サングレ」のサーカス団による葬列とか変なかっこした人がいっぱいいる絵面って大好きだ。

スコットランドの島を舞台とした古い土着信仰に関するお話で、歌と踊りとフリーセックスなんつーラブ&ピースな教義の数々に敬虔なクリスチャンである主人公の警官は嫌悪感を隠さないんだけど、なんかこれヒッピーやジプシー達が集まって享楽的なお祭りを始める昔のグラストンベリーフェスティバルの映像とオーバーラップするわ。ストーンヘンジ出てくるし。当時の地元の人達にとってはさぞ気味が悪かったろうな。後味悪くて薄ら寒いエンディングだけど中毒性あるな。この映画はきっと何度も観たくなる。


[][]ファニーゲーム

ファニーゲーム [DVD]友人に借りたその2。

同じように後味悪いけど中毒性なんてねーよ。オリジナルのドイツ版。こちらもいろいろと悪い噂を聞き知っててかなりの覚悟を持って見たけど絵的には思ってたよりずっと上品だった。気分悪くなるような緊張感がずーっと続くけど暴力描写が画面に収められないのでグロシーン祭りな「SAW」みたいな映像的な不快感はない。ただ画面の中でチープなグロ演出を見せ付けないからこそ自由にリアルな想像ができちゃう訳で、人の手によって作られたグロ画像見せられるよりよっぽどキツいかもしれん。

オープニングから地味に凝った作りでむかつきながらも感心したわ。幸せそうな家族が車の中でオペラのCDの曲当てクイズなんていうおハイソなゲームをしている。画面の中の家族はそのクイズを笑顔で楽しみ続けるが映画を観る客にはタイトル表示と同時にアホみたいなデスメタルを聞かせる。まるで客は「こっち側」だと宣言されているようだ。人を食ったような演出だけど客の感情をコントロールする巧みさにはしびれるね。

この映画の何がひどいって、めちゃめちゃリアルな演技と緊張感溢れる演出で胸糞悪い状況を見せときながら要所要所で映画中最強最悪のキャラがカメラの向こうの客に向かってメタ視点なセリフを吐くんだよ。映画中一番最低な悪役がメタなセリフを吐く事で見ている俺は安心させられちゃう訳だ、「これはフィクションなんだ」って。

終盤、一番起きて欲しくなかった出来事が起きてからの長大な1カット長回しシーンの絶望感。そこにはウェルメイドな演出は一切無く、ただ絶望的な時間が流れるだけ。見ている我々は夫婦の絶望に寄り添うしかない。この絶望感を味わいたくないのならば映画を観るのをやめるか、少なくともこの映画を観ている間だけは悪役の悪ふざけ目線に乗っかる他ない。なんとも胸糞悪くて見事な映画。