「奇妙頂来相模富士」

SL-782008-03-19



1.帰命頂来相模富士
2.第三調整砂漠 〜SD PHONK INTRO〜 feat .WAX
3.渓流にひる便 feat.NORIKIYO
4.WHOLE CITY, ALL CITY... 2
5.SKIT
6.こっちゃさこい feat.ANTY the 紅乃壱,WAX
7.サダメの星 feat.KYN
8.何ひとつうしなわず
9.ROMANTIK CITY
10.WORLD GO ROUND feat.OJIBAH
11.寒空
12.大海へそそぐ feat.TKC
13.サージェイの夜明け (BONUS TRACK)

SD JUNKSTAの中核を担う彼のファースト・ソロは、タイトルリストからして突飛な内容を思わせるが、蓋を開けてみれば自身のスタイルに忠実なシブい一枚となっている。近しいMCがこぞってストリートそのものを描くのに対し、彼のリリックはあくまで自体験を切り取った私小説的なもの。そこにいちいち古風な言い回しで盛り込んだペーソスこそが最大の身上だろう。こもり気味の声質で淡々とラップする様は、こうした世界観との相性もよく、M9のようなメロウチューンの沁みっぷりはこのジャンルではなかなか稀有。一方ハードとしては、たとえばスキルで魅せるNORIKIYOのような「外に向いた力」に欠け、ややインパクト薄。詰め込み系のラップを映やすべくシンプルなビートを多くしたのはいいが、プラスアルファのサムシングがM8やM12の歌っぽいフロウというだけでは、ソロマイカーとしてはちょっと弱い。あるいはむしろM3のように徹底してソリッドな方向に振ってもよかったか。要は基本的にヴァースで光るタイプなのだ。

「BEAUTIFUL TOMORROW」

SL-782008-02-21



1.ショッキング・ダイナマイト feat.スチャダラパー,bird
2.Gift feat.HAB I SCREAM,秋田犬どぶ六
3.Don't Stop My Love feat.村上てつや,Mummy-D,KOHEI JAPAN
4.Happy Turn feat.TARO SOUL,HUNGER,KIN DA SHER ROCK
5.大人の責任 feat.CRAZY KEN,宇多丸,K ダブシャイン
6.3 The Hard Way feat.MURO,BIG-O,AFRA
7.MY WAY feat.SOUL SCREAM
8.Obsession feat.Full Of Harmony
9.Street Dreams Pt.2 feat.ZEEBRA,SIMON,晋平太
10.I'm Proud (Fly High) feat.DABO,SEEDA
11.LOVE @ 1st Sight feat.COMA-CHI,青山テルマ
12.灰のように feat.般若

彼のトラックは、元来そのソツのなさにこそ最大のアドバンテージがある。ポップとまではいかずとも、丁寧に作りこまれた綺麗目なサウンドは、ソウスク本体のような気負わないノリとは絶妙のマッチングをみせる。ところが前作では客演陣の比較的ラフなラップスタイルとのアンマッチからそうした持ち味がスポイルされてしまっていた。その反省を踏まえてか、今回はポジティブなカラーで統一された作風に仕上がっており、大きなハズシがない。ただし飛びぬけた楽曲がないのも確かで、印象として少々キャスティング先行というか、いかにも狙ってる感が鼻につくところも。もちろんそれも彼の、プロデューサーとしての器用さのなせる業なのだが。M5やM10に象徴されるような煮詰め不足がもったいない。M7のしっくり具合と、締めとなるM12での般若の活かし方などはさすがのセンスといえるだろう。M9の若手2人も思ったよりうまくハメていてよかった。

「HEAVEN」

SL-782008-02-08



1.ヒダマリ
2.自由の詩 feat.A-Thug
3.Lost Heaven
4.Homeboy Dopeboy
5.Son gotta see tomorrow
6.空 feat.Luna
7.紙とペンと音と自分
8.光
9.I try
10.Nyce Dream
11.Mary Mary
12.Outro
13.Monkey see Monkey do (BONUS TRACK)

前作から打って変わり、メジャーを離れて制作陣を最小限にとどめたことからもわかるように、スキルの誇示よりも内省的なメッセージに重きを置いた本作。リリックはありふれた日常をベースにしたものが主で、かつてのハードなハスリング描写とは異質だ。ただし、一見ポジティブなテーマを掲げているようでありながら、その実ネガティブな心象風景を描き出す繊細さは失われていない。プロデュースはI-DeAとBACH LOGICのツートップ体制で、前者の楽曲が比較的陰の側面を引き出すのに対し、後者のそれは陽の側面を体現するというコントラストが鮮やか。かように「花と雨」後のキャリアとしてはかなり理想的な作品となっていながら、少々インパクトに欠くかなとも思う。なんとなれば、リスナーが敢えてヒップホップを聴くのは、「ストリート感」を求めてのことだからだ。裏返せば、そんなことは承知の上で、あくまで彼自身の裁量でそこから距離を置いたことで、クリエーションとしての普遍性を得たとも言える。

「HARLEM ver.X」

SL-782008-02-05



1.Hip Hop Song / DJ TAIKI a.k.a.GEEK feat.MUMMY-D,BIG-O,JON-E
2.Up to you / DJ HAZIME feat.Tina,SIMON
3.ON THE RUN / DJ WATARAI feat.JAZZY BLAZE
4.Play da song / DJ SANCON feat.Full Of Harmony,VERBAL(m-flo)
5.We wanna get... / SUNSET the platinum sound feat.GUAN CHAI,KING-K,SOLDIER,AKANE
6.10 Steps 2 Heaven / "E"qual feat.SPHERE of INFLUENCE
7.The Answer / DJ TAIKI a.k.a.GEEK feat.晋平太
8.B-Boy Minded / Mr. BEATS a.k.a.DJ CELORY feat.ANARCHY
9.music PARADISE / Face2fAKE feat.SARA
10.逆天 / JHETT a.k.a. YAKKO feat.E.D.O.
11.24h / DJ HIROnyc feat.椿
12.Good Time / DJ HASEBE feat.JAMOSA

久々のシリーズ第4弾も、前例に倣ってDJ・トラックメイカー主導のフロア向けに特化した構成。冒頭の3曲を筆頭に現場を意識した王道のパーティラップが続く中、あくまでもガチスキルに拘る晋平太や、あくまでもドキュメンタリーを貫くANARCHYのラップがさほど違和感なく並ぶのは、前作にあたるver.3のリリースから3年半の間に日本語ラップデファクトスタンダードが大きく変容した証左と言えよう。SIMONやJAZZY BLAZEも「テクニック的には」今っぽいことをしているが、、ヒップホップ右肩上がりの時代がとうに過ぎた今、フロアチューンにさえ中身や捻りを求めるのはチト期待が過ぎるか。歌モノでは絶妙のコンビネーションをみせるM12が出色の仕上がり。

「after school makin' love」

SL-782008-01-13



1.after school makin' love(INTRO)
2.310
3.ごめんねG.O.D. feat.AMIDA
4.MINT神戸
5.Shake it like 1.17.
6.Take ya clothes off(free sex mafia) feat.THE 9 FAR EAST,遊戯
7.Yeeeah Baby!!
8.Wooooo Baby
9.Where is the LUV?(生理的に大好きPART.3)
10.Stay focusメェーン feat.JAZZY BLAZE
11.放課後
12.Shake it like 1.17.(K-TOWN REMIX) feat.P.D.TOUGH,JAZZY BLAZE
13.生理的に大好きPART.2.1(最後は下唇を噛んで...)
14.We gotta go!! JAZZY BLAZE feat.MINT

韻踏脱退後数年のブランクを経てリリースされた初のソロアルバム。いかに細分化を遂げたとはいえ、現行の日本語ラップの多くはスタイルを問わず何らかの系譜上にあるのが通例であるが、本作はあらゆる潮流とは無縁のところにある。確かに個々の要素をみると狙いは明確なのだが、それらが複合的に歪みながら合わさることでなんともユニークかつアジな仕上がりをみせているのだ。具体的には、サウス系バウンスを基調としたピッチ遅めでシンセバキバキのプロダクション、そこにのっかるラップはキャリアに立脚した日本語的押韻主義が脱力気味に貫かれながらも、リリックの内容は女子高生へのフェテッシュな執着と実話か妄想かよくわからないダメダメ恋愛ネタに終始するという。。この奇妙な取り合わせが、自身のパラノイアックな拘りの上に成り立っているからこそ、たんなる珍作とは趣を異にした極めてアーティスティックな一枚となったことは論を待つまい。

「DOCUMENT」

SL-782007-12-28



1.B DOCUMENT
2.DOPEST BROTHER'S BACK
3.THE MC
4.MY LIFE feat.NOSHAYAH MORGAN
5.RUSH HOUR feat.RUFF NECK and LA BONO
6.NO WAY OUT feat.DELI
7.GET READY TO RUMBLE
8.WHERE IS THE LOVE
9.MUZIKAL GANGSTA feat.JUMBO MAATCH
10.FIGHT MUZIK
11.SO FLY feat.LA BONO and D-ROC
12.JUMP feat.NAUGHTY&YOUNG BERY
13.STREET DREAMS feat.D-ROC
14.IT'S MY TOWN feat.ANARCHY
15.MY HERO MY PEOPLE

先のEP以降は、自レーベルの看板ラッパーANARCHYのプロデュースに主力を置いていた感のある彼が、今一度ベテランMCとしての存在感を示すべく乾坤一擲リリースされたファースト・フル。今回多数を占める硬質で重ための海外産トラックは、往々にして日本人の線の細いラップと相性がよくなかったりするものだが、最大の持ち味であるドスの効いたフロウがまったく音負けしていないのはさすが。内容的には総じてコンベンショナルなハーコーラップが展開されており、ストーリーもののM6やコンシャスなM8あたりで新味を出している。こうしたいわゆる「ハズシ」もソツなくこなしてはいるものの、やり方としては少々文法にのっとり過ぎで、もう少し軽快さがあってもいいかなとも思う。逆に言えば、特にこの分野では近年めっきり少なくなった質実剛健な作品と言えるだろう。それにしてもM2やM9などを聴くにつけ、やっぱいい声してるなァ。

「SPECIAL FORCE」

SL-782007-12-04



1.SPECIAL FORCE
2.DEAD HEAT feat.KASHI DA HANDSOME
3.ナクナイ?
4.NIGHT RAID-Tokyo state of mind-
5.侵略
6.JUNGLE FEVER
7.AM 2:00
8.ボンバーマン
9.アルカトラズ
10.行動
11.PM 5:30
12.ONE NIGHT feat.MURO
13.楽団
14.PRAYER
15.THE PRESENT 4 REAL
16.SPEND THE TIME

ファーストで奇跡的に発明された「ニトロっぽさ」にがんじがらめになりつつも、各人がそれを必死に追求したようなセカンドから3年を経てリリースされた本作。まず、各MCの傾向としては以下のような印象。

S-WORD:ワンパターンながら、依然「ニトロのセンター」を全うしている。
MACKA-CHIN:特に変わりなし。もはやさほどラップに執着なさそう。
SUIKEN:要所要所にキレは健在ながら、大ワザが減った。相対的な存在感は減退気味。
DABO:相変わらずの安定感。が、出番多すぎで飽きる。あとフックがどれも退屈。
DELI:今風のくだけた感じのフロウにしているが、まったく声と合っていない。かなり耳障り。
BIGZ:上手い下手以前に、なぜかくもメンタリティに進歩がないのか。キャラとはいえ…
XBS:あまり熱いのもらしくないが、なかなか頑張ってる感はある。
GORE-TEX:毒々しさ・ハチャメチャさが随分戻ってきた。本作のMVP。

総じて言えるのは、がっつきや窮屈さはもはやなく、手馴れた感じさえ漂っているということ。だから前作のように聴いてて疲れることはないが、正直ダルイ。重ためのトラックが多いのも、そうした印象を強くしている。しかれどM1路線ばかりでもキツイが。。ベストトラックは方向性が一番ハマったM4。それにしても、時代が求める「ヒップホップ的なモノ」とリスナーが求める「ニトロ的なモノ」は違うのだなァとつくづく思わされた。