特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『大統領選と世論調査』と映画『わたしの自由について〜SEALDs 2015〜』、それに『0506 再稼働反対!首相官邸前抗議』&『安倍政権の退陣を求める国会前抗議行動』

 ゴールデン・ウィークの東京は気持ちが良い天気でした。
 ちょっと強くなってきた陽の光の下で、ツツジが咲き、緑の香りが漂っています。街には地方から東京見物に来た人や外国から来た人が大勢いましたけど、基本的には人も少なくていい感じでした。一年中ゴールデン・ウィークだったらいいのに、too.


 さてアメリカ大統領選の共和党候補はドナルド・トランプがほぼ決まりになったみたいですね。
 日本のマスコミまでトランプのことを大騒ぎしてますけど、日本だって橋下に投票する奴が大勢いるんですから似たようなもんです。普通に考えれば、トランプのほうが2位につけていたテッド・クルーズよりは遥かにマシです。
 クルーズはISをじゅうたん爆撃しろと公言する好戦的な極右であるだけでなく、なお且つ奥さんがゴールドマン・サックスの役員です。しかも進化論や女性の権利を否定するキリスト教原理主義者。トランプより、こんな狂信的な極右兼ウオール街の代理人が大統領になることを心配する方が先です。 

 同じように頭がおかしくても変な信念がない、単なる受け狙いのトランプの方がマシ、に決まっています。トランプはイラク戦争を否定し、オバマケアに賛成しています。こいつは『日本はアメリカの防衛費を全額負担しろ』と言ってるそうですが、それなら日本に関係ないところへ米軍が行動する際は基地の使用料を取ればいいんですよ。日本に基地がなくなって困るのはアメリカの方です(笑)。

●今日のこいつのtweet。共和党の候補になった途端 ヒスパニックに媚を売り始めました。『メキシコ人は強姦魔』って言ってたのに、今度は偽メキシコ料理を食ってメキシコの休日を祝ってます(笑)。こいつは受ければ何でもいいんですよ。言ってることを真に受けたら負け(笑)。                      

       
 民主党の方は直近のインディアナ州の予備選で勝つなどサンダース氏が相変わらず頑張っていますが、やはりヒラリーが濃厚なんでしょう。
 ただヒラリーは敵も多いから本選で勝てるかどうか疑問もあります。既にほぼ勝負がついているにも関わらずインディアナの結果がこうなったということが彼女の問題点を象徴しています。トランプの方が大衆受けすることは否めないですからね。
 
 そのヒラリーが若者に弱い弱点を補うため副大統領候補に、ウォール街占拠の理論的指導者の一人と目されるエリザベス・ウォーレン議員を選ぶ可能性も出てきたそうです。http://www.yomiuri.co.jp/world/20160423-OYT1T50114.html 確かにウォール街の天敵』があだ名のウォーレン議員と組めば、サンダース支持者は取り込める。白人女性二人でコンビを組むかどうかは疑問ですけど。

●ウォーレン氏は、『憎しみと不安が詰まった毒シチューのようなトランプ』がホワイトハウスにたどり着けなくするために闘うと宣言しています。

                                                  
 既にサンダース氏もウォーレン議員の副大統領候補への起用を検討すると表明しています。サンダース氏、副大統領候補にウォーレン氏検討 - WSJ サンダース氏は自分たちの活動目的は『選挙よりアメリカに政治的な革命をもたらすことだ』と公言していますが、彼と支持者たちの粘り強い闘いは確かに効果をもたらしているように見えます。
                                          
 ウォ―ル街と闘ってきたウォーレン氏の存在がこれだけクローズアップされるのも、それだけアメリカの人々のウォ―ル街への怒りは深い、ということでしょう。今週、クリントン政権の労働長官だったロバート・ライシュ先生はアメリカの現状を''No-lose socialism for the rich and Cruel hyper-capitalism for the rest''(金持ちには損をしない社会主義、それ以外には残酷な超競争社会)」と表現していましたRobert Reich (The Third Way: Share-the-Gains Capitalism)。金融業や大企業が政界へのロビーイングで自分に有利な法律を作ったり役所の人事にまで影響力がある現状を良く表していると思います。

 日本はアメリカほどの格差社会ではありませんが、ウォ―ル街と大企業、という怒りを表現すべき相手が明確になっているだけ、アメリカの方がマシな面もあるのかもしれません。日本にはアメリカの金融業やグローバル企業のように力を奮っている企業は殆どないし(可能性があるとして、せいぜいトヨタくらいですか。電力会社や新聞社などの規制で守られた独占企業はむしろ役人の手先です)問題なのは官僚機構や政治家の方かもしれません。

 物事を黒か白かで分けるなんて愚かなことですけど、日本ではまず、はっきりした価値判断の対立軸を立てることから始めなければいけない、と思います。
 絶対譲れない対立軸って何でしょう?『平和』じゃ対立軸になりません。安倍晋三だって安保法制は平和のためだといいますからね。太平洋戦争だって為政者は『平和』を旗印にして始めた筈です。『格差』?もう一歩進めて『機会の平等』、特に若者にとっての機会の平等=チャンスを!、なんかは良さそうな気がします。北海道4区の池田候補の『普通の人から豊かになろう』も実に良かった。埋もれさせてしまうには勿体ない。とにかく、さっさと相続税100%にしろって(笑)。



 5月2日朝日新聞世論調査が掲載されていました。見出しなどは『憲法改正に反対の人が55%』など改憲に否定的な人が増えている、というものです。この結果は各紙共通ですね。

                                              
 ですがボクは、『次の参院選有権者が何をポイントにして投票するか』が気になりました。朝日のデジタル版に元データが載っていたので、有権者の関心度の高い順に政策を並べてみました。
http://www.asahi.com/articles/ASJ4N63MMJ4NUZPS00F.html

                                                
 『重視する政策』も『最も重視する政策』も1位から3位は『景気・雇用』、『社会保障・福祉』、『教育・子育て』が占めています。特に『景気・雇用』や『社会保障・福祉』と比べれば、憲法も安全保障も原発有権者の関心は遥かに低いものになっています。

 つまり、憲法守れ』や『戦争法案反対』と言っても選挙には大して効果ない、ってことです。TPPなんか殆ど誰も興味なし(笑)。ボクだって『安保法案反対』(戦争法案とは言いたくない)や『原発反対』、『改憲反対』と思いますけど、これが現実です。憲法や安保法案に関心を高めることは必要ですけど、それ以前に有権者の関心が1位、2位の政策が明確でなければ選挙にすらならない
                                                  
 野党共闘が少しずつは進んでいるとは言え、安倍晋三に反対する陣営の状況は厳しいです。昨年からデモなどで時々使われる『ノー・パサラン(奴らを通すな)』というコールはボクも好きですが、野党や一部の市民運動の頭の悪さを見ているとスペイン市民戦争での共和国側の無能さもこういう感じだったのか、という危惧が時折頭をよぎります(笑)。一部の頑迷な人たちを除けば、あれよりはマシだとボクは信じてはいるんですけど。
                                                
 5月3日の憲法記念日はいつも通り原宿・渋谷へ出かけてきました。まず横山純氏の写真展『London,Beyond Hatehttp://tokyorainbowpride.com/event/2280有明憲法集会で、カビの生えたつまんない話を聞くよりはいいかな、と思ったので(笑)。
SHERLOCK(シャーロック)や007スペクターにも出演していたアンドリュー・スコット君もレインボー・パレードの最前列に居ます!

ロンドン・プライド・パレード、グライム・シーン、そして極右レイシストに対抗するサッカーサポーター・グループや反ファシストたちなど路上でヘイトに抗う人たちの姿の記録』だそうです。昨年 素晴らしかった映画『パレードへようこそ』の出演者たちが、映画で描かれた実在のLGSM(炭鉱労働者を支援するゲイ・レズビアン・グループ)と一緒にレインボー・パレードに参加した時の写真をどうしても見たかったんです。

                                   
 展示されている写真の数は多くはありませんでしたが、LGSMの活動が80年代から今に至るまでずっと続いていることや実際に映画に出ていた俳優さんたちがデモに参加しているを見て、やっぱり感動しました。

                   
                 
 そのあと 渋谷のアップリンクで映画『わたしの自由について〜SEALDs 2015〜わたしの自由について~SEALDs 2015~

                             
 先行上映の初日ということで場内は満員でした。
 SEALDsの結成直後から密着して活動を記録した3時間です。主にTVドキュメンタリーで活動していたという西原監督は最初 SEALDsに取材依頼のメールを送ったが無視され、抗議の場へ行って奥田君に直談判してカメラを回すことを承知してもらったそうです。UCD君や芝田さん他のSEALDsメンバーは怪しい(笑)と思っていたそうですが、監督が最初に気質がオープンな奥田君に話をできたのはラッキーだったのでしょう。デモでも抗議でも本当に最前列でカメラが回っているので臨場感は大したものです。

 彼らを見ていると、学園祭のようでもあるし、起業みたいでもあると思いました。パソコンでデザインを起こしたり、プラカードを作ったり、皆でコンビニにご飯を買いに行くところは、まるでクラブ活動みたいです。終了後のトークショーで芝田さんが『個人の頭で考えろ、と言ってるUCD君が、コンビニで付和雷同的に他の人と同じ飲み物を選んでいるのが面白かった』と言ってましたが、ごくありふれた普通の学生の課外活動がカメラに収められています。
●6月初め、最初の国会前抗議の時は参加者は500人でした。撤収時の彼らの後ろ姿。

                            
 一方 役割分担を決めたり、対外的な働きかけをしているところは創業したてのベンチャー企業って感じでした。SEALDsはLine上の緩いネットワークでリーダーがない組織だそうですが、必要な仕事が出てくると誰かが手を挙げてやっていくんですね。これがモラルって奴です(笑)。芝田さんが小沢一郎の事務所に電話するところは学生とは思えないくらい、しっかりした物言いで感心しました。学生サークルともベンチャーともつかない彼らが次第に全国各地の学生たちとネットワークが繋がっていくところも面白かった。
                                                     
 奥田君が総がかりか何かの、旧来の市民運動の集会でスピーチしたあと、デモに参加している風景は笑いました。
 あの死ぬほどリズム感の無いシュプレヒコールに奥田君もなかなか、ついていけないんです。画面を通じてみることで酷さが客観視できるのでしょう、会場からも失笑があがります。
 上映後に奥田君たちも言ってましたが、あのリズム感の無さはある意味 先を言っている、まさに前衛的と言っても良いでしょう。リズム感だけでなく、彼らの言っていることの空虚さや無内容さはある意味 自民党より酷い。旧来の市民運動が完全にガラパゴス化しているのを表しているシーンです。

 ボクも今までは、あの人たちはああいうもの、めくじら立てるほどのものでもない、と思っていましたが、本気で世の中を変えようと思ったらまずい、でしょう。あの稚拙なコミュニケーション能力じゃあ、支持は一般に広がりません。昨夏 SEALDsの子たちを見ていて教えてもらったことの一つが画面に再現されていました。

                                    
 国会での証言当日の光景。奥田君は知り合いかなにかの表参道の美容室で茶髪を染めてもらいながら、必死になってスピーチの練習をしていました。付き添いのUCD君の緊張した表情も面白い。証言が終わった後 芝田さんが開口一番、『あの寝ている議員たちは、怪しからんよ』と若い女の子に似合わない口調で怒っているのもおかしかった。

●7月になると参加者の数が膨れ上がってきます。

●クールな印象が強い奥田君も時には声を詰まらせながらスピーチをしていたんですね。気が付きませんでした。

●8月30日の光景。この日は彼らなりに作戦を立てていたのがカメラに収められていました。『国会へ突っ込め』とかいう時代遅れの認知症ジジイどもがボーフラのように湧いてくるのも計算ずくでした。大変面白かった。


                              
 安保法案が成立した翌朝、奥田君は『安保法案は通ってしまったが、何もないところから始めてもボクたちはここまでできた。これを見ていたボクらより若い人たちは将来もっとすごいことができるんじゃないか』とスピーチします。そのあと映画は、高校生たちがSEALDsの子たちにサポートされながら11月に行った渋谷・原宿でのデモ#1108原宿高校生デモ と映画『ミケランジェロ・プロジェクト』 - 特別な1日の光景に切り替わって、終わります。
                               
●有名なシーン。これがSEALDsの子たちを象徴しています。不安定な脚立の上でコールする女の子の足を、自然発生的に大勢の子が手を伸ばして支えている。

                                             
 上映後は監督とSEALDsの奥田君とUCD君、芝田さんの4人でトークショー。3人は高橋源一郎氏と一緒に本を書いたメンバーです。その本では、この子たちは帰国子女だったり、山村留学をしていたり、引き籠っていたり、日本の教育システムから多少ずれているからこそ、こういうことができるんだろうという印象を受けました。確かに日本で普通に受験とか就職とかしているようじゃダメ、なんでしょう(笑)。

 集会ではなく、こういう場で話を聞いてみると屈託のない、ユーモアにあふれた若者たちで、その自然な感じには感心しました。過激なことを言うわけでもなく、怒るわけでもなく、ダメなものはダメというだけで、普通のことを普通に話し、あとは笑っている。30分のトークショーでは冗談を言ってる時間の方が長かった。

 日本の社会って個人をなくしていく仕組みがあると思います。山本七平流にいうと『空気』、『東大話法』の安井東大教授風に言うと『立場主義』でも良いですが、個人を押しつぶしていく仕組みがあります。学校の中でもあるし、社会人になるとそのプレッシャーは一層激しくなる。今の日本で個人であることは結構大変だし、ますます大変になってきていると思います。
 奥田君にしろ、UCD君にしろ、大学卒業後も学校に残る(らしい)のもそれとは無関係ではないでしょう。話を聞いていて、SEALDsの子たちが、これから社会に出てどうなっていくのか興味あるなあ、と思いました。トークショーに出てきた3人は全然大丈夫でしょうけど。

 今度の参院選後にSEALDsが解散する話もしていましたが、芝田さんが『解散しても何か頭に来ることがあったら、どうせ直ぐ奥田君からLineが来るんでしょ』って言ってたのが印象的でした。ネットで『コールする粗大ゴミ』と言われているUCD君が『ネットで学校のゼミの人間が自分のことを批判的に書いていたので直接話してみたら、SEALDsのメンバーだった(笑)。それまでゼミにSEALDsのメンバーが居るのを全然知らなかった(笑)』と言ってたのも面白かったです。本当にそういう緩い組織なんですね。

●左から監督、芝田さん、UCD君、奥田君。有明憲法集会に参加したあとにやってきた奥田君は場所を間違えて遅れてきました(笑)。


                                
 北海道の補選に関わってみて、奥田君は『またSEALDsの最初に戻ったみたいで面白かった』と言っていました。当然の事ながら地域の選挙と東京での抗議活動は違います。政治に人々の意志が反映されていないという点では与党も野党も旧来の市民運動も同じです。もう、そういうのはいい。

 この日はSEALDsの1周年だったそうですが、1年前とは政治をめぐる景色がいかに変わったことか、と思います。この日の憲法集会でも民進党の長妻が共産党の志位と握手したそうですけど、そんなことすら1年前には考えられなかった。SEALDsの子たちが発揮した起業家精神ベンチャースピリット)と言えば良いのでしょうか、現実を少しずつ変えていくのは我々一人一人にかかっているのでしょう。街頭でも、仕事の場でも、家庭でも各自がやれることは必ずある。若い子たちがこれだけの事をやっているのだから、年長者も負けていられません。
                                                                                           
 この映画は5月14日から全国で上映が始まるそうです。劇場だけでなく各地で自主上映も行われます。内容は3時間、全く退屈しなかった(トークショーで彼らは『長すぎる』と監督に文句を言ってました)。2015年に日本でどんなことが起きたのかを記録するドキュメンタリーでもあるし、気恥ずかしくも爽やかな青春映画(笑)でもあります。とてもとても面白かったです。


 と、いうことで、今週も官邸前へ。
 天気予報が外れて今日は生憎の雨。大したことはありませんでしたが、プラカードが丁度入るサイズの鞄を買ったばかりなのに(泣)。参加人数はちょっと少な目。参加者は主催者発表で600人。今日は最初バカ右翼が押しかけてきていました。国会前抗議では珍しいんですけどね。そういう低能の姿を見ると、普段は穏健な抗議を心掛けているボクだって声が大きくなります(笑)。
●抗議風景


安倍晋三の場合はこれ以下。つまり官僚や企業の言ってることすら理解できないところが問題だと思いますけどね(笑)。

            
                                        
そのあと、国会前で高校生たちの『安倍退陣を求める国会前抗議T-nsSOWL (@teensSOWL) / Twitterへ回りました。今日はこちらの方も人数が少なかったので(300〜500人くらい?)、余計に大声を出してしまいました。

●抗議風景


                                                   
 憲法記念日に出た神奈川新聞が話題になっています。なんと新聞がプラカードまで出しているんです。

http://www.kanaloco.jp/sp/company/release_20160503/
                                        
 特にプラカードの左側『委縮しない』にはまさに共感します。安倍政権だけが特別じゃない。そもそも大なり小なり、政府は圧力をかけてくるものです。
 今の状況は委縮するマスコミとそれを鵜呑みにする市民の側が作ってしまっている面が大きい。委縮するっていうのは自分の考えがないからです。だったら一人一人が政府や役人、それにマスコミより賢くなっていくしかありません神奈川新聞エライッ、と思ったので、今日はボクもこのプラカードを持っていきました。

 高校生たちもそう思ったみたいです(笑)。