特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『ソーセージ・パーティー』と『何者』

日本時間の水曜日に迫ったアメリカの大統領選、どうなるでしょうか。最終日はとうとう、ブルース・スプリングスティーンがヒラリーの応援、それも大トリで登壇するそうです。

選挙戦最終日、トランプ氏4州遊説 クリントン氏は著名人登壇 :日本経済新聞


オバマの選挙戦終盤は、白人票、労働者票の獲得の為にずっと彼がつきっきりでした。今回 ヒラリーへの支持は打ち出していませんでしたが、背に腹は代えられない、ということなんでしょう。今回の選挙は『最低』と『最悪』の闘いと揶揄されていますけど、どちらかマシな方を選んで、更にもっとマシな方向へ引っ張っていくしかない。ボクは『オバマ大統領の選出に繋がった「新しい米国」連合(独身女性、アフリカ系、ラテン系、アジア系の米国人、勤労女性、若年層、同性愛者)コラム:「トランプ敗北」で道連れになる白人労働者階級 | ロイターに希望を持っているんです。日本に希望があるとしたら、そういう『連合』ができることじゃないかなと。日本もアメリカも共通していると思いますが既存の政治家とか組合、農協や東電みたいな既得権益を握る団体や独占企業要するに右左関係なく、汚いオヤジ連中(と、それと同じフィロソフィを持ってる連中)は用済みなんですよ。

                                                  
アメリカは日本に比べれば、選択肢があるだけマシ、なんだと思います。先週 小泉純一郎が講演して、原発政策を明確に主張できない民進党に対して電力関係、原発推進の労組票は50万もない。500万、5千万の票をどうして獲得しようと思わないのか』と言ったのはまったく正しいと思います。民進党は国民と組合、どちらが大事なのか。冷静に考えれば、簡単なことです。こんな基本的なことも判断できないのが野党第1党です。勿論 こんな連中に政権担当能力なんかあるわけありません。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161104-00000071-asahi-pol

●今朝の産経一面。4野党が共闘すれば衆院選は与党の3分の2は阻止可能。産経ですら与党の危機感を煽っているのに。

【衆院選シミュレーション】4野党共闘ならば47選挙区で当落逆転 与党326→279 全野党共闘ならば84選挙区で逆転…(1/2ページ) - 産経ニュース

●おまけ。先週土曜の朝はニハリ。骨付きの羊の脚の塊をレモンとスパイス、コリアンダーで煮たもの。やっぱり肉は骨の周りが美味しいです。朝から汗をかいて、肉体的にも精神的にも週末のデトックス(笑)。



今週ご紹介する映画はどちらもAクラスの滅茶苦茶面白い作品です。ある意味 テーマは共通しています。精神的な自由をどうやって手に入れるか、の物語、です。
                         
まず、六本木で映画『ソーセージ・パーティー映画『ソーセージ・パーティー』 | オフィシャルサイト | ソニー・ピクチャーズ

スーパーマーケットで、ソーセージのフランク(声:セス・ローゲン)は恋人であるホットドック用パンのブレンダ(クリスティン・ウィッグ)と人間に買われてホットドッグになることを夢見ていた。食材たちはスーパーの外には自由があると信じていたからだ。独立記念日セールの日、一緒にカートに入れられ喜ぶフランクとブレンダだったが、ふとしたことから外の世界の真実を知ることになる。

セス・ローゲンという人はボクは大好きです。俳優、脚本家、監督と多彩な面を持っていますが、作風・芸風はバカで幼稚で気が弱くマリファナが大好きで権力が大嫌い、それに男女平等や宗教の自由が常に貫かれていますそして時にはホロリと泣かせる
●ジョゼフ・ゴードン・レヴィット君が主役の笑えて泣かせて、穏やかな気持ちになれる難病ものの傑作。後ろのデブが脚本も書いたセス・ローゲン

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アメリカでは大スターですが、日本での知名度はいまいち。一番有名なのは彼が主演・監督の『ザ・インタビュー』が北朝鮮の脅迫を受けたことでしょう。彼が演じるインタビュアーがケツの穴に隠した武器で金正恩をぶち殺すという映画にさすがにマヌケな独裁者も激怒した(笑)。それよりNHKのニュースのトップで、デブのセス・ローゲンのお尻が映ったのにはボクは狂喜してゲラゲラ笑ってました。たぶん世界中のニュースで流れたんじゃないでしょうか。それだけでもセス・ローゲンの勝ち(笑)!
●主人公のソーセージと恋人のホットドック用バンズ、それにユダヤのベーグル、アラブのパン(右端)がスーパーを舞台に冒険を繰り広げます。

今回は制作・脚本をセス・ローゲンが担当したアニメです。監督はマダガスカル3やきかんしゃトーマスを担当した人。音楽は『美女と野獣』や『アラジン』でアカデミー賞受賞のアラン・メンケン。声はセス・ローゲンに加えて、『ゴーストバスターズ』のクリステン・ウィグ、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などのジョナ・ヒル 、それにハンサムなジェームズ・フランコ、知的で男前のエドワード・ノートンらのセス・ローゲンのアホ仲間、そしてリベラルな姿勢で知られる豪華スターが勢ぞろい、アメリカでは1億ドル以上の興収で大ヒットした作品です。確か1位になったと思います。にもかかわらず、日本では彼の作品は冷遇されているので、公開初日に出かけました。東京でも外人客が多い六本木でしかやってないんです。でもボクが行った回は満員でした。
●一見子供向けの映画に見えますが勿論R15指定(笑)。

                            
内容は勿論 下ネタとマリファナネタの嵐(笑)。ボクは下ネタ嫌いですが、セス・ローゲンの書くお話は知的だから好きなんです。
マリファナを吸う酒(笑)

主人公のピンチにアラブとユダヤの連合軍!が助けにくるところは思わず、涙しましたしセス・ローゲンユダヤ人)、主人公がスーパーの食材たちに真実を伝えて反乱を呼びかけるところはまさに政治運動のことを描いています。映画の題名は極右のティー・パーティをコケにしているそうですし、こういう内容で宗教も政治も人種差別も同性愛差別も笑い飛ばしているんですから、セス・ローゲン絶好調です。
●主人公の仲間のタコス(右)は同性愛者という設定です(笑)

アラン・ランキンの音楽も重厚で豪華ですが、海外では大スターなのに日本では全く人気がない、ボクの大好きなロック歌手ミート・ローフがフィーチャーされていたのも泣かせました。これだけでも凄い。とんでもない映画ですが(笑)、滅茶苦茶 面白いです! 
●内容説明はこのツイートで充分。放送作家の町山氏(町山智浩氏の妹)のtweet。良い子はダメよ(笑)


                    
                                
もうひとつ、こちらも超面白かった映画です。渋谷で映画『何者

スルー予定でしたが、評判が良いので見に行ってみました。『桐島、部活やめるってよ』の朝井リョウ直木賞受賞作を 劇団ポツドールを主宰する三浦大輔監督が映画化したもの。
就職活動のため部屋に集まった5人の大学生が、お互いの会話やネットで発する言葉の中に見え隠れする本音や自意識によって関係性が変わっていくさまを描く。出演は佐藤健有村架純二階堂ふみ菅田将暉岡田将生

                                           
ボクは三浦大輔という人の作品の映画を見るのはこれが3度目です。1作目は『モテキ』の大根仁が監督した『恋の渦』、2作目は三浦大輔氏自らが監督した『愛の渦』。『恋の渦』はヤンキーが集まったアパートの部屋、『愛の渦』は六本木での乱交パーティ、と舞台設定は違いますが、密室での対話劇、お互いが会話を続けているうちに人間性の隠れた部分が露呈してくる、という構造はまったく同じです。

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どちらも良く出来ていましたが、密室で会話を続けるうちに人間のダークな本性が露呈してくるお話は、個人的にはあんまり好きにはなれませんでした。『人間なんかロクなもんじゃないんだよ。だから何が言いたいの?』と思ってしまうんです。ただ『愛の渦』のほうは今を時めく門脇麦が出ていたのと、クライマックスで、主人公がボクの実家の前の路地を突っ走るというシーンがあったので(笑)、印象としては非常に強く残っています。昔、犬と散歩してた路地が画面に出てきたときはびっくりしましたよ。

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今回は学生時代 演劇をやっていた拓人(佐藤健)、バンドをやっていた光太郎(菅田将暉)、光太郎の元彼女の瑞月(有村架純)、帰国子女の意識高い系、理香(二階堂ふみ)、ライターを目指す意識高い系の隆良(岡田将生)、と言った若手俳優を起用して、就職活動に励む大学生たちを描いた群像劇です。客席は大学生らしい年代の子で一杯でした。これも珍しい。リクルートスーツ姿の子も大勢いたし。
●主人公の佐藤健など、就活を控えた学生たちがアパートの一室で行う会話劇です。


                                                         
ボクも遥か昔 就職試験を受けたこともあるし、なんどか就職試験の面接をやったこともあるので、そういう意味では引き付けられました。今の就職試験って大変ですよね。良くも悪くも情報が溢れているし、一人何十社も受ける(受けられる)みたいですし。

まず思ったのは今の就活って社会的に資源のムダ、ってことです。どこの企業に就職するかは一生を左右する問題ですから、大学生にしてみれば大変なのは判ります。企業にしたって、終身雇用としたらその人に2億〜3億は給料を払い続けるのですから大きな投資です。だけど、学生にしたって、企業にしたって、ちょっと試験や面接をしたくらいで実際のところは判るわけありません。結局 リクルートなど企業と学生の間で仲介している企業が儲けているだけなんですよね。
                                     
●1枚目は入学当時の学生たち。2枚目は在学中バンドをやっていた役の菅田君(それなりに演奏してました、立派)。3枚目は就職シーズンの彼ら(笑)。


 
                               
問題は学生も企業もお互い、賭けるものが大きすぎるってことです。今の新卒一括採用は良い点も多々あるとは思うんですが、それがメインルートになっているというのはかなり問題がある。間違った場合、中々やり直しがきかない。だから学生の側だってネットでくだらない情報集めをしたくなるし、企業の側だってグループディスカッションみたいなくだらない試験をしたくなる。お互いの時間も労力も壮大なムダです。
ちなみにボクが面接をやるときはいつも、学生さんに『あなたはどんなことが好きなんですか?』しか聞きませんでした。お互い、一緒に働きたいかどうか、相性が合うかどうかだと思うんですよね。人間の優劣なんか少し面接したくらいで判るわけないでしょ。面接の時もはっきりそう言ってました。お互い対等の立場だし、ボクは君たちの能力なんか判るほど立派じゃない。お見合いと一緒でお互いの相性を考えているだけだからって。
有村架純と菅田君は元恋人役という設定。

就職活動のバカバカしさも背景に、映画は学生たちの姿を滑稽に描写します。就職活動を進める登場人物たちはネットで情報を集め、幾つもの会社にエントリーして、部屋に集まって情報交換をします。そこで交わされるのは表面上の会話です。主人公(佐藤健)は演劇をやっていましたがそれを諦め就職しようとしていますが、演劇を続けているかってのパートナーのことが気になってなりません。
主人公のルームメイトの光太郎(菅田将暉)はバンドを諦め、就職するために染めている髪を黒に戻します。光太郎の元彼女(有村架純)は母親が離婚したことで、安定した会社に早く就職したいと内心 焦っています。海外ボランティアをやったり、やたらと意識が高い里香(二階堂ふみ)は表面上は自信満々です。理香の彼氏兼ルームメイトの隆良(岡田将生)はライターになりたくてサラリーマンをバカにしています。みんな、就職がなかなか決まらない。ところが少しずつ就職が決まる者が出てくると段々本音が出てきます。今はSNSが有りますから、ある意味 余計露骨です。
●意識高い系(笑)の学生役の二階堂ふみちゃん(左)。いかにもインチキ臭い(笑)。

                                          
彼らは付和雷同、ネットの情報や評判に振り回されてばかりの癖に、口では小賢しいことを言っています。最初は『こいつら、あまりにもウルトラ・バカ過ぎ。これじゃ、全然ダメだろ』と思いながら見ていました(笑)。屁理屈こいている割に全然 自分の意志がないんですよ。ボクの大嫌いなタイプ(笑)です。『お前ら、一生 他人の奴隷やってろ』と思ってしまう。

そんな人間の暗部を抉り出す監督の作風は、やっぱり あんまり好きじゃありません。面白くはあるんだけど、今までの作品では『だからなんなの?』と思ってました。

                                          
今回も最初はそう思ってましたが、一味違いました。主人公たちに次第に共感が湧いてくる。登場人物たちは『何者か』になろうとしている。でも就職ごときで『何者』になんかなれるはずがないんです(笑)。そういうジタバタする人生って誰のものでもあるでしょう。
ネタバレになっちゃうので言えませんが、今回は監督の作風自体が構造化され、脱構築されています。ずっと猫をかぶっている役だった二階堂ふみちゃんのド迫力の邪悪演技(笑)で物語は一気に逆転する。数年前 NHKの大河ドラマ淀君をやったのを思い出しました。この人、ゼッタイに悪役の方がいい。SNSというものの特性もうまく使われていました。邪悪さが一気に噴出することで物語のカタルシスがあります。
●時折挿入される演劇シーンは効果的に使われています。

                                 
他の登場人物たち、菅田将暉君の能天気演技もほんと良かった。『そこのみにて光輝く』に続いて爽やかさを失わないダメ男(笑)という役を説得力を持って演じられるのは素晴らしい。有村架純も下膨れの顔をわざと晒して頑張ってました。

主人公の佐藤健もいいけど、やや、ウザかったかな。

                                                    
穏やかなラストシーンは素晴らしかったです。周りだけでなく、自分のダメさに振り回されるだけだったダメ男の主人公がやっと目が覚める。自分の力で現実を乗り越えてみせます
就活ということだけでなく、年齢に関係なく、日々の生活と人間関係に晒された中の人間の弱さと希望が描写されている映画です。とても面白かった、Aクラスの作品。DVDが出たら、高校生の姪っ子ちゃんに送ろうと思います。