Sagittarius_Arrowの経済・金融日記

2018-02-19

「円高株安」のセオリーが通用しなくなった理由

ドル円はついに一時105円台に突入した。為替市場ではドル全面安が継続。しかし、同じ「リスク回避通貨」とされるスイスフランや金と比べても、円高傾向が突出している。

そもそも、「株高なら円安地合い」という従来のセオリーがまったく機能しなくなっており、投機筋、特にトレンド追随アルゴリズム系プレーヤーがドル円を標的に「下攻め」を加速させていると疑われる。

彼らにとってファンダメンタルズは重要でなく、「昨年9月の安値(107.32円)を割り込んだ」という純粋にチャート的な観点から下値余地を試しにきているとみられる。こうなってしまうと、強力な口先介入など、明確な円安材料が提供されない限り、相場は止まらない恐れがある。

「米金利上昇ならドル高」「株高なら円安」というセオリーが、なぜ効かなくなったのか。考えられる1つの仮説としては「グローバルな中央銀行勢によるドル保有高の縮小、他通貨への分散」がある。

彼らは外貨準備として、主要通貨を国債のかたちで保有しており、ドル売りは米国債の売却に直結する。つまり、「ドル安、米金利上昇」の原因となる。

では、何がきっかけで「脱米ドル、脱米国債」の動きを加速させたのか。「米金利上昇にもかかわらずドル安」という新現象が発生したのは、昨年11月である。米議会で減税法案が成立する可能性が高まっていた時期に一致するのは偶然ではあるまい。財政リスクの観点から、「米国債は割高」との評価が下されたことは十分あり得る。

一方、欧州については政治リスクの後退とともに、ユーロおよび欧州債(特に周縁国国債)の保有高を引き上げる方向性とも一致した可能性がある。中銀勢がドル保有高の縮小を最優先し、他通貨に満遍なく分散させたとすれば、ユーロ買いに加え、円買いにもつながっただろう。

このように、グローバルな中央銀行による米国債売却、ドル売りの動きが昨年11月から強まったとすると、季節的には年末年始でマクロヘッジファンド勢がおとなしかったことも重なり、米金利上昇、ドル安のインパクトを大きくしてしまった可能性がある。

ひとたび、従来の「米金利上昇でドル高」の相関が崩れると、新しいトレンド(米金利上昇でドル安)は、それに追随するアルゴリズム系プレーヤーによってさらに強化されることになる。このようにして「セオリー無視」のドル安が、現在まで引き継がれている状況なのではないか。

では、このような一方的なドル安はいつまで続くのか。アルゴ勢にはファンダメンタルズが通用しないだけに読みは難しいと言わざるを得ない。105円が大底になる保証はない。

しかし、米10年金利が3.0%に達し、安定すれば、中銀勢をはじめグローバルな長期運用機関にとっては米国債の割安感が徐々に強まると見込まれる。この観点からは、米金利上昇、ドル安の同時進行はそろそろ終着点に近づきつつあると言えるかもしれない。

なお、シカゴ先物市場における「投機的ドルロング・円ショート」のデータは、米金利上昇とともに金利稼ぎを狙う、いわば「ドル貯金」のような根雪部分が積み上がっている。「大規模な円ショート解消で円高圧力になる」との目安にはならない。

より有用なのは為替トレーダーの肌感覚を聞いて回ることであり、投機ポジションは「110円」あるいは「108円」を割り込んでから、「ドルショート・円ロングに傾いている」との声が多い。投機だけで動かせるドル円の値幅は通常5円程度であり、そうであれば105円から103円で一段落するとみるのが妥当なのではないか。

投機勢が利食いに動けば、あっけなく元の水準に戻る可能性もある。「長期ドル安トレンド」と断じるのは危険である。

2018-02-05

投資信託のコストをおさらい

投資信託を購入、保有するにはコストが掛かる。その中で最も大きいのが、「購入時手数料」と「信託報酬(運用管理費用)」の2つ。

これ以外にも細かく見れば、監査費用、組入有価証券の売買コストなども、投資信託の保有者が負担するコストに含まれるが、まずは2大コストである「購入時手数料」と「信託報酬」が本当に妥当なものであるかどうかを考えてみたい。

購入時手数料は文字どおり、投資信託を購入したときに発生する手数料で、一度きりのものである。そして、投資信託を購入した人が払った購入時手数料は、全額が販売金融機関のものになる。

これに対して信託報酬は、投資信託を保有しているかぎり、ずっと取られる。仮に年率2.0%が信託報酬の料率だとすると、日々その365分の1に相当する0.00547%(100万円購入すると、約55円)が、基準価額から自動的に引き落とされていくことになる。投資信託会社は、この「信託報酬の一部」を収益源として得て、会社としての経営を維持している。調査にかかわる費用は当然のこと、ファンドマネジャーやアナリスト、その他さまざまな計理・事務作業などを行っている社員の給料も、ここから支払われているのだ。

また「信託報酬の一部」といったように、信託報酬は投資信託会社だけの収入源ではない。信託銀行にも、投資信託の資産を管理しているという仕事に対する対価として、信託報酬の一部が支払われているのである。

ただ、ここでひとつ気になるのは、信託報酬の半分程度、もしくはそれ以上が販売金融機関にも払われているという事実であろう。

販売金融機関は、投資信託の保有者に対して情報提供を行っているという名目で、信託報酬の一部を「代行手数料」として受け取っている。具体的に、代行手数料がどの程度なのかということだが、仮に信託報酬が年率1.6%だとすると、この内訳は、たとえば信託銀行の取り分が年0.1%、投資信託会社が0.75%、販売金融機関の代行手数料が0.75%といった割り振りになる。

つまり、販売金融機関は、購入時手数料だけでなく、信託報酬の約半分(時に半分以上)を受け取るのだ。

では、販売金融機関は代行手数料を受け取る代わりに、投資信託の保有者に対して、どのようなサービスを提供しているのだろうか。

おそらく、ほとんどの販売担当者からは「お客様への情報提供をはじめとした継続フォローをさせていただいている」という答えが返ってくることだろう。

でも、情報提供って何なのだろうか?今時、多くの人がパソコンスマートフォンを通じて、運用会社のホームページアクセスできる環境を持っている。投資信託の基準価額が直近でいくらなのかは、リアルタイムでわかるし、運用レポートも読むことができる。

おそらく情報提供といっても、年に1回か2回、投資信託が決算を迎えた後に作成される運用報告書を郵送する程度のこと。その運用報告書も、最近では電子交付に切り替わりつつある。こうなると、はたして販売金融機関に代行手数料を払う意味が、どの程度あるのかという疑問が浮かんでくる。

最近はETF(上場投資信託)など、インデックス運用の投資信託が個人の間で人気を集めるなか、「投資信託のコストは、安ければ安いほど良い」というのが半ば常識化している。確かに、投資家サイドから見て、リターンを最大化させるのであればそのとおりだ。

しかし、信託報酬の一部を収益源としている投資信託会社は、信託報酬が下がれば下がるほど、投資信託のリターンを支える運用業務の充実化に、経営資源を割けなくなる。最初にカットされるのが調査関連費用で、次が人件費です。コスト削減の行きすぎがリターンの低下につながるような事態になったら、それこそ本末転倒だろう。

国内外の株式などに投資するアクティブ運用の投資信託については、販売金融機関の代行手数料を引き下げれば、その分信託報酬の料率をかなり下げることができる。たとえば、前出の例で言えば、信託報酬が年率1.6%で、信託銀行の取り分が年0.1%、投資信託会社が0.75%、販売金融機関の代行手数料が0.75%だとしたら、代行手数料を除いた部分の信託報酬の料率は0.85%ということになる。

しかし、販売金融機関は現在も、できるだけ自分たちの取り分を増やそうと必死だ。某大手投資信託会社が運用している、世界の割安株で運用する投資信託の信託報酬の料率(手数料)は、実に奇妙だ。税抜きの料率は年1.120%で、その内訳は投資信託会社が0.4%、信託銀行が0.02%、販売金融機関が0.7%というように、販売金融機関に大きく傾斜配分されている。

興味深いのは、このお互いの取り分は、純資産総額が250億円未満のものだということ。250億円以上になると、投資信託会社の料率が0.4%から0.3%に引き下げられ、販売金融機関の料率が0.7%から0.8%に引き上げられるのだ。つまり、この料率設定は、販売金融機関にインセンティブを与えているとしか考えられない。

一方、「販売時手数料が無料(ノーロード)」の投資信託の方が安くていい」という「常識」も時には疑ってかかるべきだろう。本来もっと安くあるべき信託報酬が相当高くなっている投資信託があるからだ。こうして見ていくと、金融機関が「フィデュシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営に関する原則)宣言」をしている意味とは何か、当事者は、もう一度考える必要があろう。投資信託を選ぶ基準はさまざまだが、信託報酬も判断基準のひとつであることには違いない。少なくとも、投資信託会社と販売金融機関の料率が同一か、販売金融機関の料率が投資信託会社のそれを上回っている投資信託は、再検討の余地があると言ってもよさそうだ。

2018-02-02

仮想通貨の価格変動もヘッジファンドには儲けのタネ

ヘッジファンドのうち、ディストレス型と呼ばれるタイプは、破綻懸念があり価格が著しく下がっている企業株式などに投資する。その種のファンドが仮想通貨「NEM」に注目しているという。彼らの見立てはこうだ。

コインチェック事件ハッカーの口座は特定されても、保有者は特定できない。盗んだ大量のNEMを現金化すれば、その時点で「足がつく」から犯人は退蔵せざるを得なくなる。その結果、マーケット感覚ではNEMの供給が激減して需給が締まるので買い材料となる。さらに、現在は疑念を持たれているコインチェックの返金480億円が本当に実現するようなら、NEMは本格反騰のシナリオも描けてくる。

そこで、コインチェック事件を嫌気して、ビットコイン先物(米国市場上場)価格が急落すれば、、ディストレス型ヘッジファンドには買いのチャンスと映る。仮想通貨市場で日本は5割近いシェアを持つので、日本の動きは米国市場にも直接的影響を与えることになろう。

価格のグラフを見ても、コインチェック事件が発覚した1月26日には、米国ビットコイン先物価格が1万1500ドル台から1万200ドル台まで急落した。週が明けると1万1000ドル台を回復したものの、直近では9000ドル割れと乱高下している。

ビットコインが華々しく米国先物取引所に上場されたが、参入が期待された機関投資家は模様眺めの様相で、流動性はいまいちといったところ。だが、皮肉なことに、コインチェック事件が市場の流動性を高める結果になるのかもしれない。

2018-01-25

ドル円は久々の108円台突入だが

黒田総裁金融緩和縮小を否定したことにより、日銀の緩和縮小観測円高に振れていたのが円高圧力が和らぐだろうと言われていたが、2時間ぐらいしかもたなかった。一瞬円安方向に動いたが、ロンドン時間が始まったら堰を切ったような円高の流れになった。

事前予想で大勢が思っていた方向とは逆に向かったわけだが、こんなことはよくある話。そもそも為替取引投機的なものだからだ。

株や不動産資産なので、キャッシュフロー利益などから資産としてその価値を評価する方法で値がつけられているが、通貨は交換レートなので、一方の通貨が高くなった安くなったというだけのことである。為替の世界では金利差で為替が動くと言われているが、現在の名目金利差、実質金利差はドル高を示唆しているものの、今の為替レートは真逆をいっている。つまり金利差でいえば現在の円高は全然説明がつかない円高だと考えられる。今はこのように理屈になっていないようなことで為替は動いているので過度に気にする必要はないだろう。

日経平均株価については、1月25日は300円近く下がったものの、24,000円の水準まできている。これはどういう水準かというと、年初から3日続伸して3日続落、2日続伸して2日続落というリズムできていて、今は結局最初の3日続伸3日続落のところにもどったところ。つまり年初から1000円以上上げてその後200円くらい下げた水準にきているだけの話である。今後もこのように上がったり下がったりしながら徐々に水準が上がってくればよいわけで、昨年末の水準の23,000円を抜けなかったのが年初から一気に抜けて24,000円まできた、為替がこれだけ円高になってもそれが少し押した程度だと考えれば、短中期的にはそれほど悲観する必要はないといえるのではないか。

2018-01-23

今年の金相場の行方やいかに

特に近年、ドル建て金相場とドル金利の「逆相関の関係」が目立っている。つまり、ドル金利が低下するとき、ドル建て金相場は上昇、逆にドル金利が上昇する時、ドル建て金相場は下落、という関係である。

これは、世界の基軸通貨である“ドル”の金利が上昇してドルを保有する妙味が高まるときには、金を保有する妙味が薄れ、逆にドルの金利が低下してドルを保有する妙味が薄まるときには、金を保有する妙味が高まる、という関係に則した、各種投資家投資行動によるものだと考えられる。

ということは、さまざまなメディアで報じられているとおり、今年は昨年に続いて“米国での利上げ”が大きなテーマになりそうだ。

この点から考えれば、ドル金利の上昇を背景に、今年のドル建て金相場は上値を伸ばしにくくなることが予想される。

しかし、“米国での利上げ”だけではなく、“地政学リスク”もまた、今年の大きなテーマであると考えられる。

昨年の8月以降、北朝鮮ミサイル発射核実験をめぐる地政学的リスクの拡大と、ドル金利の強含みが同時に起きている。

つまりこれは、ドル建て金相場において、上昇要因と下落要因が同時に存在していることを意味しているわけだが、この間、ドル建て金相場は、“底堅く推移”している。すなわち、地政学的リスクの存在が、ドル金利上昇という下落要因を相殺していると考えられる。

米国の金融政策が利上げの方向に舵が切られ、ドル金利が上昇しやすい状況においては、逆相関の関係をもとに考えれば、ドル建て金相場は下落しやすくなるが、このような中で価格が底堅く推移しているのは、“世界中で発生する各種地政学的リスクが根強く意識されたため”であろう。

18年1月23日現在、ニューヨーク先物市場取引されているドル建て金の価格は1トロイオンスあたり1,335ドル近辺で推移している。あくまでも個人的な推測だが、18年のドル建て金価格は、下値が1,160ドル、上値が1,400ドル程度のレンジ内で推移するのではないだろうか。

昨年と同じでやや狭いレンジでの価格推移を想定しているのは、今年も通年で、ドル金利の上昇という下落要因と、地政学的リスクという上昇要因という相反する材料を織り込みながら推移すると考えているためである。

そして、このドル建て金相場の推移と、ドル円という価格の振れ幅の拡大要因を織り交ぜながら、円建て金相場が推移していくとイメージしている。

ここまでは、ドル建ての話だったが、ドル円が極端な値動きにならなければ、円建て金も底堅く推移することになろう。

価格が底堅くゆっくり推移する時は、様々な意味で急騰時や急落時のような慌ただしさがない。その意味で今年は、価格の動向に重きを置かず、ゆっくり少しずつ購入することが前提の積立取引にマッチした年になるのかもしれない。