Sagittarius_Arrowの経済・金融日記

2018-08-08

現金至上主義の日本にもついに

日本のキャッシュレス決済比率は18%(15年現在)。政府はこの比率を25年までに、40%まで引き上げようとしている。現金志向が根強く残る日本で、果たして実現できるのか。キャッシュレス決済の普及に向けた課題と、新しい取り組みを紹介する。

JR総武線馬喰町駅の近くに、外食大手ロイヤルホールディングスが昨秋開いた、「現金お断り」の実験店がある。

レストランに近づくと「CASHLESS」と書かれたボードが目に入る。実際に店舗で現金は使えず、支払いはクレジットカード電子マネーなどに限っている。会計はスタッフを呼び出して、テーブルで決済するので、混雑時でもレジで待たずに済む。

店舗にとってもメリットは大きい。閉店後に毎日行っていた精算や、釣り銭の準備といった作業がなくなる。「現金を扱う仕事は手間がかかるうえ、精神的な負担も大きかった」(ロイヤルHDの中西喜丈氏)という。人手不足が深刻な外食業界ではキャッシュレス化が、従業員の負担軽減にも直結する。

今春、社員食堂の支払いに「LINEPay」を導入したのは、ソフトウエア開発のテラスカイ(東京・中央)だ。

ランチタイムには2種類のQRコードを印刷した紙が置かれる。1つはカレーライス(400円)、もう1つはランチビュッフェ(500円)だ。どちらかを選び、自分のスマートフォン(スマホ)で決済する。利用者は「財布を持たず、スマホ一つでランチを食べられるのは気軽でいい」と話す。

QRコードを使うスマホ決済は、専用の読み取り端末がいらず、導入コストが少なくて済む。このため個人商店屋台など、これまで現金しか使えなかった場所にも広がる可能性がある。

さらに手数料の引き下げ競争も激しくなりそうだ。LINEは8月から、中小事業者にかかる決済手数料をゼロにする。そしてヤフーも、10月から手数料を無料にする予定だ。

店舗にクレジットカードを導入すると、3%ほどの手数料を店側が負担する必要がある。この手数料が、キャッシュレス化が進まない要因になっていた。LINEの出沢剛社長は、手数料を無料にすることで「ラインペイが使える店舗を圧倒的に増やし、決済革命を起こす」と語る。

もっとも日本のキャッシュレス決済比率(18%)は、韓国(89%)や中国(60%)はもちろん、インド(38%)にも及ばない。根強い「現金志向」が、キャッシュレス決済の普及を阻んでいる。

実際のところ、キャッシュレスはどこまで浸透しているのだろうか。

そこで全長約800mのアーケードがあり、都内有数の商店街として知られる武蔵小山商店街で、普段の買い物でよく使う決済手段について50人の買い物客に聞いてみた結果、50人のうち「現金派」が31人と、「キャッシュレス派」の19人を上回った。「現金派」の理由で多かったのは、「お金の管理しやすさ」だった。クレジットカードだと「いくら使ったのか、分かりにくい」「使いすぎが怖い」といった感想も多かった。

一方、「キャッシュレス派」の最大の理由はその「便利さ」だ。子ども連れで買い物中の女性は「簡単に支払いができるので、電子マネーが使える店ばかり行っている」と話す。また「ポイントが目当て。現金だと何もつかないからもったいない」と、ポイント重視派もいた。

日本で現金社会が続いているのは、現金に対する高い信頼の裏返しでもある。さらにATMは全国の隅々に設置されている。日本のどこにいても、簡単に現金を引き出すことができる。

ただ、こうしたインフラを維持するコストも莫大だ。ボストン・コンサルティング・グループの推計によると、ATMの管理や現金輸送にかかるコストは年2兆円にのぼる。マイナス金利下で収益悪化に苦しむ銀行にとって、こうした負担は次第に無視できなくなっている。

そこで銀行の中には、手数料を引き上げる動きも広がってきた。新生銀行10月7日から、これまで無料だったコンビニなど提携ATMでの引き出し手数料を有料化し、1回あたり108円とする。「ATM無料」を売りに支持を集めてきたが、収益環境が悪化し有料化に追い込まれた。

ゆうちょ銀行でも、現在は月3回までATMからの送金手数料を無料としているが、10月以降は月1回までとし、2回目以降は123円とする。来年4月にはネット通販などの代金振り込みに使う「通常払い込み」の手数料を現在の80~340円から150~410円に引き上げる。みずほ銀行三菱UFJ銀行でも、今年から窓口での両替手数料を引き上げている。

個人にとっては、ATMで現金を引き出すためにかかる時間も損失だ。25日の給料日、昼休みに東京・神田のATMコーナーに並ぶと、現金を引き出すまでに6分50秒かかった。ATMにわざわざ立ち寄るのも手間で、仕事や家事に追われる人ほどキャッシュレス化の恩恵は大きいといえる。

個人経営飲食店などでは、キャッシュレスに対応していない店舗がまだまだ多い。インフラが整っていなければ、キャッシュレス決済も浸透しない。LINEとヤフーが主導する手数料の引き下げ競争が、現金社会ニッポンをどこまで変えるのか注目される。

2018-08-02

またも日銀に敗れたヘッジファンド勢

日本国債市場機能不全に陥り、ニューヨークのヘッジファンドは代替として米国債市場で日銀金融政策に関する思惑売買を繰り広げていた。「日銀の出口近し」との判断から、米国10年債は記録的な空売りポジションが積み上がっており、その規模はCFTC(米国商品先物取引委員会)が毎週末発表する先物売買データで検証できる。7月24日発表のデータではロングが約53万件、ショートが約103万件、ネットで約50万件とされる(1件あたり10万ドル)。

その結果、日本10年国債の利回りが0.1%を突破した時点で、米国10年債利回りが2.99%と3%近くまで急騰する局面もあった。当時の相場記事を読み返すと「ウォール街は日銀金融政策決定待ちで、米10年債利回りはこの1カ月で最高水準の2.99%をつけ、3%台に迫っている」などと書かれていた。

しかし、ヘッジファンドの苦々しげな言い回しを引用すれば、日銀会合での結果が「長期金利をいじるだけの微調整」に終わり、彼らのもくろみは外れた。

米国10年債利回りも30日(現地時間)の取引終了時点の2.98%近くから急落、31日は2.96%で引けた。ヘッジファンドの当惑ぶりがうかがえる。

ヘッジファンドには日本国債の空売りを仕掛けて失敗を繰り返した苦い経験がある。日本国債トレードは、その事故率の高さから「ウィドウ・メーカートレード(Widow Maker Trade)」などと呼ばれたものだ。「もう日本国債にはこりごり」と今回大損したヘッジファンドの関係者はぼやく。教訓として「日銀には逆らうな」が合言葉になりそうだ。

一方、米国の株式市場では、長期金利変動幅が拡大しても日銀の緩和継続を歓迎する姿勢だ。

パウエル連邦準備理事会(FRB)議長タカ派的との見方も根強く、「パウエル・プット」は期待できそうにない。FRBの量的緩和(QE)から量的引き締め(QT)への転換は意図せざる経済ショックの可能性をはらむ。そこで、FRBが市場から引きあげる流動性を、日銀が補ってくれる、との期待感が漂う。ミスタークロダのおかげで流動性相場も持続できそう、との期待が感じられる。

黒田総裁記者会見で19年10月の消費増税リスク要因の具体例として挙げたので、日銀緩和は20年まで続くか、との質問もあった。FRBと欧州中央銀行(ECB)が量的緩和終了・縮小に動くなかで、日本が過剰流動性の輸出国になっていることを改めて実感した。

外為市場では円安が進んでいる。ドル・ユーロは大きく動かず、対円でのドル高が突出している。今回ばかりはほぼ同時開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)は影が薄く、日銀効果でドル高・円安が進行中だ。

2018-08-01

日銀が金融政策調整に踏み切る

日本銀行31日の金融政策決定会合で、長短金利水準を据え置いた上で、長期金利目標について「経済物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうる」ことを賛成7、反対2で決定した。

黒田東彦総裁記者会見で、長期金利の変動幅について、これまでのプラスマイナス0.1%から「その倍程度に変動しうることを念頭に置いている」と説明。「金利水準の引き上げの意図はまったくない」とし、金利が急上昇する場合には国債買い入れを実施すると語った。

今回の金融政策の調整は、物価の低迷で2%物価目標が遠のき、超低金利政策の長期化が予想される中、長短金利操作付き量的・質的金融緩和の持続性を強化するのが狙い。

19年10月に予定されている消費税率引き上げの影響も含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、「当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持することを想定している」とした政策金利フォワードガイダンス(指針)も導入する。

黒田総裁は「不確実性を踏まえて当分の間、極めて低い長短金利を維持することにコミットした」とした上で、早期に緩和の出口に向かったり金利を引き上げたりする観測否定できると述べた。

指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れについても年間6兆円ペースを据え置いた上で、「買い入れ額は上下に変動しうる」とすることを全員一致で決めた。個別銘柄の株価をゆがめているとの指摘を受け、日経平均連動型を減らし、TOPIX連動型を増やす。

TOPIX、日経平均225、JPX日経400の3指数に連動するETFを従来の3兆円から1.5兆円に減額。TOPIX連動型を2.7兆円から4.2兆円に拡大する。

日銀当座預金のうち、マイナス金利適用される政策金利残高を長短金利操作の実現に支障がない範囲で現在の水準(平均して10兆円程度)から減少させる。8月積み期は5兆円程度となる見込みという。

誘導目標である長期金利(10年物国債金利)は「0%程度」、短期金利(日銀当座預金の一部に適用する政策金利)は「マイナス0.1%」で変更はない。長期国債買い入れ(保有残高の年間増加額)は「約80兆円」をめどとしつつ弾力的な買い入れを実施する。ETFとともに、年間900億円の不動産投資託(J-REIT)の買い入れも上下に変動しうるとしている。

最近の報道では日銀が副作用に何らかの対応策を取る可能性が指摘され、市場でも見方が分かれていた。報道を受けて長期金利が上昇したため、日銀は23、27、30日、指定した利回りで金額制限を設けずに国債を買い入れる指し値オペを実施した。指し値オペを月に3度実施するのは初めて。

農林中金総合研究所主席研究員の南武志氏は、日銀が政策調整に踏み切った背景として、物価が低迷する中で今後も現行政策を続ける必要があり、「今のままでは、さすがにまずいという意識があった」と分析。日銀の発表文では現状の政策の調整が「枠組みの強化」と記載してあるとして、追加緩和との「誤解を生む」と批判した。

発表文では、物価の低迷が続く背景として「企業の慎重な賃金価格設定スタンスや値上げに対する家計の慎重な見方の継続といった要因が作用している」とし、2%の物価目標の実現には「これまでの想定より時間がかかることが見込まれる」と認めた。

会合後に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)によると、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の見通し(政策委員の中央値)は18年度が1.3%上昇から1.1%上昇、消費増税の影響を除き19年度が1.8%上昇から1.5%上昇、20年度は1.8%上昇から1.6%上昇に下方修正された。

黒田総裁は「19年度2%達成という従来の見通しは後ずれしている」と述べた。ただ「物価のモメンタムは維持されている」と説明し、「現時点では、追加緩和は必要ない」との考えを示した。

決定会合の「主な意見」は8月8日、「議事要旨」は9月25日に公表する。

2018-07-23

ふるさと納税が発足10年を迎え転換点

ふるさと納税が制度発足から10年を経て転換点を迎えている。17年度も全国の自治体の受け入れ額は過去最高額を更新したものの、伸び率は縮小した。返礼品競争の自粛を促す総務大臣通知を受けて、返礼の見直しや使い道の明確化などの動きが広がったが、豪華な返礼を続けた自治体が額を伸ばした。応援寄付金という本来の趣旨が問われている。

17年度のふるさと納税は総額で3653億円。前年度比の増加率は28%で、16年度(72%)から半分以下となった。全1788自治体のうち受け入れ額が増加したのは61%、減少したのは39%。増加の割合は16年度よりも11ポイント減った。

たとえば、飛騨牛の返礼が人気の岐阜県高山市。受け入れ額は2千万円減り2億7千万円となった。5割だった寄付額に占める返礼品の金額(返礼率)を17年4月の総務大臣通知に従い3割以下に見直した影響が大きい。例えば牛肉400グラムの返礼に必要な寄付額を1万円から1万5千円に上げた。変更前の駆け込みもあって17年度は微減だが、18年度は停滞が色濃い。

同市は社会的意義などを訴える返礼品を開拓する。17年度は特別支援学校で作った木製玩具を打ちだし、生徒の励みになると総務省評価する。ただ、申し込みは3件。「お得さで返礼品を選ぶ人が多いのが実態」と担当者はため息をつく。

クエ鍋や近大マグロが人気の長崎県五島市は返礼率見直しで1億3千万円と4千万円減った。ふるさと納税を原資にICT(情報通信技術)を整備した小中学校の子どもの様子を動画で発信し始めたが、「反響ほどには金額が伸びている手応えはない」(同市)。

逆に通知が追い風となった自治体もある。17年度の受け入れ額は「1億円未満の増加」が全自治体の50%。前年度より減ったが割合は最も多い。

通知前から返礼率が3割だった岡山県真庭市は200万円とわずかだが増え、1億1千万円となった。「ほかが過度な返礼品を見直したため」と担当者は分析する。これまで返礼品のコメの量で見劣りしていたが、「同じ割合なら量ではなく質で比べてもらえる」。カキ殻を肥料とする地元農家こだわりのコメが注目され始めたという。

宮城県石巻市も地味ながら自慢の返礼品に期待を込める。東日本大震災後は復興シンボルとされた「サバ缶」を返礼品としていたが、あまりの人気でふるさと納税に回せる商品がなく中止。目玉不在で受け入れ額は減少してきたが、17年度は2億4千万円と5千万円の増加に転じた。

新たなけん引役はタラコやカマボコ。地元では知る人ぞ知る名産だ。以前から返礼率が相対的に低いこともあり脚光を浴びにくかったが、寄付を募る仲介サイトを2から5に増やし、地道にアピールする戦略で風向きが変わりつつある。

一方で、全体の金額を押し上げているのは通知に反して過度な返礼を続ける自治体という実情がある。総務省は返礼率が3割を超えたまま寄付を募り8月までに見直す意向もない12自治体を公表した。これら自治体の17年度の受け入れ額は合計で411億円。前年度の2.6倍に増え、全自治体の伸び率(28%)を格段に上回る。

「正直者がバカを見ている」。石川県輪島市の担当者は憤る。17年度の受け入れ額は5千万円減り3億6千万円だった。もともと返礼率は3割以下。熊本地震被災地に対する寄付の事務代行支援が一巡したためで通知の影響ではないが危機感は強い。「ルールを守らない自治体のせいで過疎地や被災地にとって大切な制度そのものが壊れかねない」と訴える。

ふるさと納税が地域産品の振興などに各自治体の貴重な財源となりつつあるのは確かだ。西日本豪雨災害では被災自治体に寄付による支援が広がった。ただ、寄付の使途に具体的な事業まで選べる自治体は14.3%、活用状況を公表していない自治体は34.4%ある。返礼品だけに頼らず制度を根付かせるにはさらなる工夫が求められる。

全1,788自治体のうち17年度の受け入れ額の上位20位をみると、12自治体が16年度に続きランキング入りした。多くは返礼率が全自治体平均より高く、返礼の魅力度が寄付額を左右する実態が続いた。

4位の佐賀県みやき町は受け入れ額を72億円と16年度より57億円も伸ばした。順位も32位から急上昇した。人気の訳は高額品で地場産品とは見なしがたいとして通知が自粛を求めている家電の返礼だ。「まだダイソンがもらえる」「8Kテレビも登場」。インターネット上では同町の最新の返礼品を巡る情報が飛び交う。町内の家電店から調達しているとみられるが、総務省の担当者も「かなり派手にやっている」と眉をひそめる。

みやき町は大臣通知に沿わないと名指しされた12自治体のひとつ。佐賀県の唐津市嬉野市静岡県小山町といった新顔も同様だ。外食チェーン商品券などを返礼する自治体もある。換金できる商品券も通知では不適切と指摘する。

トップ20の返礼率は平均44%に達し、全自治体(38%)より高い。6自治体では50%を超し、30%未満は1自治体にとどまる。

一方、家電の返礼をやめた長野県伊那市は受け入れ額が72億円から4億5千万円に減った。67億円の減少幅は全自治体で最大。ただ、担当者は「むしろ燃えている」と話す。今後の目標額は6億円。身の丈にあった制度の利用を目指す。

18年度は上位自治体で返礼率を見直す動きもあり、ランキングが変わる可能性もある。

2018-07-20

株式投資は上質なギャンブル

知的な生き方や思考の方法論などの著作で知られる英文学者の外山滋比古氏。30歳だった53年から株式投資を続けてきた長期投資家としての側面を持つ。65年にも及ぶ投資経験から得た哲学ノウハウ日経マネーに語っている。

セオリーと呼ばれる投資方法とは異なるが、外山氏は近著『知的な老い方』で、年齢を重ねたら挑戦すべきことの一つとして、個別株への投資を挙げている。

その理由として、「高齢者にとって、株式投資が一番の生きがいになる可能性があることに気付いたから」という。定年退職を迎えてリタイアした人は海外旅行などの余暇を楽しんでいるが、それは一過性のもの。やることがなくなれば退屈して、言い方は悪いが、いずれぼけてしまいかねない。一方、株式投資を始めると、それにはまって、中には「明けても暮れても株」という人も出てくる。一種のギャンブルとして生き生きと株式投資をすれば、常に一喜一憂する。ぼけてなんていられないからだそうだ。

株式投資といっても、若い人にお勧めのNISA投資信託を購入するなんてのでは駄目らしい。なぜなら安全すぎて面白くないから。自分で勉強して個人の責任で銘柄を選ぶことに意味があり、それで配当と値上がり益を合わせて、平均して毎年7%くらいの利益を上げることができれば、10年で資産は2倍になる。しかも、その気になれば、90歳や100歳になってもできることなので、こんなにいい老化防止の手段はないという。生き生きと取り組むから、病気にもならず、医療費抑制にもつながるから、ひいては国の社会保障費も大きく減少するだろう、とまで言い切る。

日本国民金融資産の約1800兆円のうち、1000兆円は預金だという統計数字があるが、その大半を所有しているのは高齢者。その高齢者たちが株式投資を盛んにするようになり、1000兆円の2〜3割にあたる200兆〜300兆円が株式市場に回れば、それはすごいことになる。日本株米国株をはるかに上回るペースで上がるに違いない。

ただ、株式投資にギャンブル性があるのも事実。昔から『株はいけない』と言っている人はギャンブル性があることを理由にしているが、ギャンブルは人間にとって極めて有用な精神的刺激なのだと言われている。年寄りが生き生きとするには、良いことばかりでは駄目で、それではぼけてしまう。証券会社など他人任せではなく、自分で銘柄を選んで売買する。それですごく儲かることもあれば、大きな損を被ることもある。そうして一喜一憂することが、人間が生き生きと生きていくためには必要なのだそう。損しても、それで生活ができなくなるほどでなければ、『治療費代わり』と思えばいい。多少損をしても、病院に通って薬代を払うよりはずっといいという考え方もある。

「旅行などで100万円や200万円も使うよりは株式投資を続けて一喜一憂を長く楽しんだ方がいい。『楽しかった』と思うことができれば、損を出してもそれで後悔することはないだろうし、株でワイワイ話をして元気になった人もたくさんいる」ようだ。

それに、株式投資は競輪競馬などに比べれば、はるかに上質なギャンブルだと外山氏は断言する。他のギャンブルは非常に確率が低い上、負けたら何も残らないのに対し、株は会社が潰れない限り、その価値がゼロになることはない。信用取引先物取引に手を出さず、あくまで現物だけを売買すれば、借金を背負って破綻することもない。

持っているお金を3分割して3分の1は生活費に充て、もう3分の1はもしもの時のために取っておく。そして残りの3分の1で株式投資をする。そうすれば仮に株の運用資金がゼロになっても、生活に支障を来すことはない。株では新たな生きがいを得たり、会社を辞めて切れた社会との結び付きを取り戻したりというように、得られるものも多い。

今は金利がほとんどゼロだから、配当のある株を買った方が、預金よりもはるかにいい。それで値上がりすれば恩の字と考えて取り組む。これで損を出すのは、よほど運の悪い人と割り切る。こう考えると、確かに株式投資は最も上質なギャンブルなのかもしれない。