経営見直しが不可避な電力業界

政府が原発ゼロを決めたことで、電力各社は経営構造の抜本的な見直しを迫られる。半世紀をかけて火力発電が中心の電源構成を転換し、原発比率を約3割まで高めてきただけに急激な政策転換による影響は大きい。高額な廃炉費用や燃料価格の変動で収支が悪化することはさけられず、安定経営が成り立たなくなる恐れもある。
 
原発ゼロを決めれば、電気料金の上昇などさまざまなマイナス影響がある。方向性を決めても、不断に見直してほしい」。電気事業連合会八木誠会長(関西電力社長)は14日、都内で開いた会見で政府への不満をあらわにした。
現政権の思惑通りに進んでも、原発ゼロが実現するまでまだ約20年ある。ただ、料金原価に織り込んできた原発減価償却費は、廃炉が決まれば将来的に認められなくなり、代わりに施設の撤去や使用済み核燃料の処分にかかる費用も負担せざるを得なくなる。廃炉費用は数百億円規模に上り、利益の源泉だった原発負の遺産に変わる。
また、原発ゼロが決まれば、液化天然ガス(LNG)などの資源価格は一段と上昇する可能性がある。「資源メジャーが足元をみて価格をつりあげてくる」(資源エネルギー庁幹部)恐れがあるからだ。
 
政府の電力システム改革も、業界地図の塗り替えに拍車をかける。都市ガスや石油元売り大手などの発電事業参入を進めるため、発送電分離や電力小売りの全面自由化を推進。電力各社の火力発電計画に入札を義務づけるなど、新規事業者が加わりやすい環境づくりも検討されている。
ただ、急激な環境変化は新規事業者も「怖くて本格参入はできない」(元売り大手幹部)と尻込みさせており、電力産業の全体の衰退を招く可能性もある。