絵を描かされた

医師が「絵でも描いてみてはどうか」と勧めてきた。
どうせ高額で売り捌くに決まっているのだ。
俺は用意してくれたキャンパスに筆を走らせた。


彼らの意図と反する絵を描こうとした。
俺の精神世界を利用して抽象画を描かそうとしているのだろう。
だから、敢えて写実を心掛けた。
病室の風景を、埃一つ逃さず、細菌一つ逃さず、原子一つ逃さず描いた。


俺の意に反して、それは抽象画のようになってしまった。
その絵は気狂いじみた道楽金持ちによって数億の値段で買われたので、
現在は病室暮らしとはいえ悠々自適の生活をしているのだ。