法オタが非オタの彼女に法令等を軽く紹介するための10件

まあ、どのくらいの数の法オタがそういう彼女をゲットできるかは別にして、
「オタではまったくないんだが、しかし自分のオタ趣味を肯定的に黙認してくれて、
 その上で全く知らない法律の世界とはなんなのか、ちょっとだけ好奇心持ってる」
ような、ヲタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に、法令のことを紹介するために
見せるべき10件を選んでみたいのだけれど。
(要は「脱オタクファッションガイド」の正反対版だな。彼女に法律を教えるのではなく
 相互のコミュニケーションの入口として)

あくまで「入口」なので、時間的に過大な負担を伴う旧民法(1762条)のような法律は避けたい。
できれば(国会の議決を経て制定される)法律、範囲も日本法にはとどめたい。
あと、いくら法学的に基礎といっても古びを感じすぎるものは避けたい。
歴史好きが『サリカ法』は外せないと言っても、それはちょっとさすがになあ、と思う。
そういう感じ。

彼女の設定は

法令知識はいわゆる「公民科」的なものを除けば、教養課程程度は見ている
文化度も高く、頭はけっこう良い

という条件で。

まずは俺的に。出した順番は実質的には意味がない。

金融商品取引法(昭和23年4月13日法律第25号)

まあ、いきなりこれかよとも思うけれど、「証取法以前」を濃縮しきっていて、「金商法以後」を決定づけたという点では
外せないんだよなあ。現行法だし。
ただ、ここでオタトーク全開にしてしまうと、彼女との関係が崩れるかも。
この情報過多な法律、政省(府)令について、どれだけさらりと、嫌味にならず濃すぎず、それでいて必要最小限の情報を彼女に
伝えられるかということは、オタ側の(あるいは、実務家としての)「真のコミュニケーション能力」の試験としてはいいタスクだろうと思う。

日本国憲法(昭和21年11月3日憲法)、地方自治法(昭和22年4月17日法律第67号)

アレって典型的な「オタクが考える一般人に受け入れられそうな法律(そうオタクが思い込んでいるだけ。実際は全然受け入れられない)」そのもの
という意見には半分賛成・半分反対なのだけれど、それを彼女にぶつけて確かめてみるには
一番よさそうな素材なんじゃないのかな。
「法オタとしてはこの二つは“公共体の秩序”としていいと思うんだけど、率直に言ってどう?」って。

租税条約(所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための条約)

ある種の渉外法務オタが持ってる国際税務への憧憬と、OECDモデル条約のオタ的な制限税率へのこだわりを
彼女に紹介するという意味ではいいなと思うのと、それに加えていかにも国際課税ルールな

「二重課税の排除」を体現する外国税額控除

「脱税の防止」を体現する移転価格税制

の二つをはじめとして、オタ好きのする規定を条文にちりばめているのが、紹介してみたい理由。

破壊活動防止法(昭和27年7月21日法律第240号)

たぶんこれを見た彼女は「治安維持法だよね」と言ってくれるかもしれないが、そこが狙いといえば狙い。
この系譜の法律がマッカラン法から続いていること、これがアメリカでは大人気になったこと、
アメリカなら反テロ法になって、それが日本に輸入されてもおかしくはなさそうなのに、
日本国内でこういうのがつくられないこと、なんかを非オタ彼女と話してみたいかな、という妄想的願望。

民法明治29年4月27日法律第89号)

「やっぱり法律は一般法だよね」という話になったときに、そこで選ぶのは「刑法(明治40年法律第45号)」
でもいいのだけれど、そこでこっちを選んだのは、この法律にかける梅の思いが好きだから。
パンデクテン方式で削りに削ってそれでも1146条(現行では1044条)、っていう尺が、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、
その「捨てる」ということへの諦めきれなさがいかにもオタ的だなあと思えてしまうから。
民法の長さを俺自身は冗長とは思わないし、もう削れないだろうとは思うけれど、一方でこれが
星野や我妻だったらきっちり1000条以下にしてしまうだろうとも思う。
なのに、各所でその雄健なる弁舌をもってこれに対する攻撃を反駁し、5編1146条を作ってしまう、というあたり、どうしても
「自分の立案で形作ったものが捨てられないオタク」としては、たとえ梅がそういうキャラでなかったとしても、
親近感を禁じ得ない。法律自体の高評価と合わせて、そんなことを彼女に話してみたい。

公式令明治40年勅令第6号、廃止法令)

今の若年層で勅令を見たことのある人はそんなにいないと思うのだけれど、だから紹介してみたい。
内閣官制の廃止等に関する政令(昭和22年政令第4号)による廃止よりも前の段階で、法令を公布する方法とかはこの命令で規定していたとも言えて、
現在は法令の公布の方法について定めた法令が存在せず、慣例により官報に掲載する方法で行われるんだよ、というのは、
別に根拠法令がなんらそこに存在してなくとも、なんとなく法律好きとしては不思議に誇らしいし、
いわゆる教科書でしか法令を知らない彼女には見せてあげたいなと思う。

法人税法(昭和40年3月31日法律第34号)

国家の「税」あるいは「財源づくり」をオタとして教えたい、というお節介焼きから見せる、ということではなくて。
「終わらない課税を毎日生きる」的な感覚がオタには共通してあるのかなということを感じていて、
だからこそ会社法(平成17年法律第86号)に基づく合同会社はパス・スルー課税が認められなかったとも思う。
課税標準が明確化した日常を生きる」というオタの感覚が今日さらに強まっているとするなら、その「オタクの気分」の
源はパーマネント・エスタブリッシュメントにあったんじゃないか、という、そんな理屈はかけらも口にせずに、
単純に楽しんでもらえるかどうかを見てみたい。

信託法(平成18年12月15日法律第108号)

これは地雷だよなあ。地雷が火を噴くか否か、そこのスリルを味わってみたいなあ。
こういう金融スキームの法的枠組みがこういうかたちで整備されて、それが非オタに受け入れられるか
気持ち悪さを誘発するか、というのを見てみたい。

会社法(平成17年7月26日法律第86号)

9件まではあっさり決まったんだけど10件目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的に会社法を選んだ。
金商法から始まって会社法で終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、業務の適正確保以降の内部統制の先駆けと
なった法律でもあるし、紹介する価値はあるのだろうけど、もっと他にいい法律がありそうな気もする。

というわけで、俺のこういう意図にそって、もっといい10件目はこんなのどうよ、というのがあったら
教えてください。

cf.) http://anond.hatelabo.jp/20080721222220