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2008-07-11

[][]続『免疫革命 実践編』東西の医学の統合をめざして


【追記】を改題し、大幅に書き換えました。


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      1.東西の医学の合体に目覚めるまで

      2.安保理論により東洋医学の説明が可能に

      3.治療は自律神経免疫療法だけではなく

      4.現代医学との連携の鍵、BMR

      5.私の東洋医学漢方、ガン治療指針

      6.データで見る効果 … 少しわかりにくい

      7.東西医学の融合こそガン医療の混迷を救うのでは

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前回の、安保徹『免疫革命 実践編』/編集者が監修者を諫めている希有な本では、安保氏に編集部が話を聞く形の『はじめに』を取り上げた。そこでは、安保氏が、免疫革命で、進行ガンの六〜七割が治るといっていたのは印象に過ぎなかったことや、「転移はガンが治るサイン」といっていたのは、治る例もまれにあるというのが事実であることなどが聞き出される。

免疫革命』を信じていた人にとっては、裏切りともいえるのではないかと思うのだが、私としては、そのようなことを聞き出し、きちんと続編となる本を出した編集者や出版社を評価すると書いた。そして、そのような編集者が作った本ならば、本文も期待できるのではないかと書いた。

ここでは、全部で3章からなる本文の半分以上のページ数を占めている、水嶋丈雄医師による『第1章:西洋医学東洋医学の科学的統合をめざす』を取り上げたい。読んでみて、期待を裏切らない内容であったのである。

まずは、医療との出会い』と題して、今までにたどってきた道が語られる。東西の医学の統合を目指しているという現在に、どのように至ったか、なかなか興味深かったので紹介する。


1.東西の医学の合体に目覚めるまで


まずは、15歳のころ。水俣病などの公害の激化の中で、見てみぬふりをするのも加害者と同じであるという考えを持ち、経済的には厳しい中、患者側に立った医療を試みようと医学を志したということである。そのころ少し下の年齢の中学生だった私も、そのような志を持つことはできなかったが、公害問題が心の重しとなっていたことを思い出す。

僻地や離島の診療所を考えていたので、医大入学と同時に鍼灸を中心に東洋医学の勉強もしたという。それが、鍼灸治療の世界的権威である兵頭正義教授の目にとまり、そのもとで研修をする。卒業後も、その医局に残ることを勧められるが、まずは、医師として全科にわたる研修をすることをめざす。週刊誌「村で病気とたたかう」という特集で取り上げられていた、佐久総合病院(*1)の若月院長にあこがれ、研修医として入局。入局初日に、「十年をかけて全科研修をしたい」というと、どうせできないだろうと思われて笑われたというが、初志貫徹してやり遂げる。

この時、漢方鍼灸をやっていることは内緒にしていたが、いつのまにか院長の耳に届いていて、中国留学を勧められる。若月院長は、中国医療に貢献したということで、中国の厚生大臣とも友人で、留学話はとんとん拍子で進む。北京中医学院に政府招聘留学生として入学し、漢方鍼灸の研修をして中国の医師資格をとる。ここでようやく、彼の中で現代医学と東洋医学が合体し、新しい医学大系が目覚めてきたという。

東洋医学を志す人は西洋医学(現代医学)に行き詰まりを感じた人ではないかと、私は思っていたのだが、そういうことではなかったようである。全科の研修をするなど、現代医学を十分過ぎるほど学んだ上で、中医学も本格的に学び、そうして生まれだそうとした統合的な医学体系なのである(*2)。そして、現在、両者をうまく組み合わせて医療を行っていることは、以下の文章から十分にうかがえた。


2.安保理論により東洋医学の説明が可能に


新しい医学大系に目覚めた水嶋氏は、佐久病院で東洋医学鍼灸治療を始める。それに対して、周りの医師から、漢方薬はどこに効くのか、鍼治療は効果があるのか、体質を変えるとは本当なのか、という疑問の声が出るようになったが、それをきちんと説明することができなかった。おそらく自律神経に効くのだろうという予測のもとに、いろいろと測定をしてみたがうまくいかなかった。

そんな時に、安保氏の白血球の自律神経支配理論と出会い、「あっ、これだ、これならきちんと説明ができる」と即座に感じ、すべてのもやもやがすっきり晴れていくのを感じたという。安保理論の素晴らしいところは、自律神経の反応が白血球の増減でわかることを示したこと、また、自律神経の変動が白血球のうちのリンパ球と顆粒球の変動とリンクししていることを見いだした点であるとする。

免疫細胞の活性化によるがんの治療については、安保理論の前に、がんを攻撃するNK細胞が一時ブームのようになったが、NK細胞は心身的な側面にも大きく影響されることがわかり、治療が効いたかどうかをそれだけでは評価できないのではないかということになった。そのため、代わるものが探され、CTL(細胞傷害性のT細胞)や活性型のNKT細胞、あるいは、インターロイキン12を調べればよいというような報告も出たが、これらは、大学レベルの設備がなければ測れないものであった。

それに対して、安保理論によれば、リンパ球、顆粒球の数を調べるだけで、どれくらい自律神経系に反応があるかを調べることができる。これは、開業医にとっては大きな福音だという。

矢島氏は、医学を志した最初のときから、これからは現代医学に東洋医学を組み合わせていくべきだと考えていたが、東洋医学には現代医学と対話のできるようなきちんとした理論づけが見あたらないというジレンマがあった。そして、教える立場となると、科学的な理論がないため学生がついてきてくれずに困ったという。

ところが、安保理論を使うと,漢方医学、鍼灸医学、あるいはヒーリング医学を含めた東洋医学をきちんと説明することができる。最近、漢方医学が二年間の研修医の必須科目として定められ、水嶋氏もその指導員をしているが、現代医学の言葉で説明し、伝えていくことができて安保理論には深く感謝しているという。


3.治療は自律神経免疫療法だけではなく


安保氏の他の著作を読んで、自律神経免疫療法=刺絡(指先に針を刺して出血させる方法)ととらえ、刺絡治療だけで病気は治ると誤解している人がいる。しかし、水島氏は、自律神経免疫療法を「免疫をあげるすべての治療法を含んだ総称」ととらえて、患者の病状に合わせて、もっとも免疫が上がるレシピをつくるために、刺絡に限らず、漢方などさまざまのものを取り入れているという。安保徹・福田稔医師を中心とした自律神経免疫療法のグループの医師達でも、やり方は様々ということである。

また、安保・福田両氏の本を読んで、自律神経免疫療法で免疫を上げたら、ガンでも何でもすべて治るのだと誤解してしまう人もいるが、病気の治癒というのはそれほど簡単なものではない。水島氏は、自律神経免疫療法は、現代医学に足りなかった部分を補う治療と考えているのである。

ところで、これらの誤解を与えた責任はどこにあるのか。単なる誤解ですめばいいのだが、下手をすれば命に関わることである。『免疫革命』は慎重に書いてあったというが、それでも誤解を与えたという。さらに、誤解を与えるように書いてあった本もあったようだが、その責任を読者に押しつけてしまってもいいのだろうか。前回書いたことなのだが、改めて疑問がわく。

話を戻す。ガンの治り方は、それぞれの持っている自然治癒力、つまり免疫の力とガンの力とのバランスにより大きく異なる。したがって、自然治癒力を把握したうえで、それが充分あれば、まず免疫治療でやってみましょうとなるが、それが弱い場合は、まずはガンをたたく治療が必要となるというのが水嶋氏の基本的な考え方である。

だだし、早期ガンの場合は免疫は落ちていないのだが、まず手術をすすめるという。それは、免疫療法だけでガンが消えてもまた出てくることが多く、その場合、最初は取りやすい表皮ガンだったものが、次に出てきたときには手術ができないものになっているケースが多いからだという。このあたり、免疫療法にこだわると、良い結果を招かないという例であろう。


4.現代医学との連携の鍵、BMR


このような考え方から、水嶋氏は、他の医療機関の医師と連携することが重要だとしている。その時、医学的な言葉できちんとコミュニケートすることが必要だと考えている。その時の一つのキーワードが、BMR(*3)である。次の言葉は、前回も一部引用したが、本の帯にも載せられていたものである。

自律神経免疫療法も含め、リンパ球療法や、漢方薬、βグルカン(キノコなど)などの 代替療法はみなバイオロジカル・レスポンス・モディファイアー(BRM)というグループの 治療法です。これは、身体のなかの免疫を活性化する因子に働きかけるもので、いわばガンから生体側を守る治療法です。逆に、手術や抗ガン剤や放射線はガンを攻める側の治療法です。これら双方を相反するものとしてとらえるのではなく、両方をうまく組み合わせることが、統合医療へ向かうことだと、わたしは理解しています。

これによって、東洋医学西洋医学の間を科学の言葉でつなぐことができるらしく、自律神経免疫療法についても、「これはBRMの一種なんですよ」というスタンスで、きちんとデータをとって紹介していけば、普通の医師達にも違和感なく受け入れられるという。

富山医科薬科大学では、ノーベル賞田中耕一氏と共同で、タンパク質を解析して病菌の診断をして、漢方薬診断、中医診断までできるようなシステムを開発している。また、全国82の医大で漢方が必修になった。このようなことから、伝統医学と現代医学が科学の共通言語で結ばれていくという明るい傾向にあるという。そして、免疫学の研究などは近年大変な進歩をとげているし、医者は常に新しいことを学ぶ必要があるとする。


5.私の東洋医学漢方、ガン治療指針


ここでは、安保理論(自律神経の白血球支配の法則)と東洋医学の関係が述べられる(p.100〜)。ここで述べられた、安保理論により解説された漢方の理論は、整理されていて大変わかりやすかった。さすがに、指導的な医師に漢方の講習を年回50回、のべ2000人に対してしているというだけのことはあると思った。

ガンの治療指針としては、まず、たまにうまく民間薬があってガンが自然消滅することがあるが、それを「奇跡」として片付けてまったく無視してしまうことも、あるいは、「奇跡」を信じて、西洋医学的な治療を放棄してしまうこともすべきでないとする。

水嶋氏の方針は、上にも述べたように、ガンの強さと免疫の強さのバランスで考えていくというものである。前者については、腫瘍マーカー参照とP53抗体というもの、後者については、リンパ球数とその中身で判断していくということで、その具体的な指針が、ガンの種類ごとに述べられている。


6.データで見る効果 … 少しわかりにくい


最後に、ガン以外の病気も含めて、自律神経免疫療法の効果のデータがまとめられている。通常5年以上経過して評価をするのだが、自律神経免疫療法は始まって日が浅いのでそれができない。それで、ここでは3年で評価をしている。

以前から行っている治療法(現代医学とBRM療法を協調して行うもの)については、5年経過後の結果が書かれていたので、まずそれを紹介する。二つの数字があって、それらは少し異なる。73ページには、CR(著功)とPR(有効)で3割、NC(無変化)が3割、つまり悪化はしなかったものが合わせて6割ということが書かれている。77ページでは、CR、PR、NCまで含めて七割ぐらいの人が、「ガンの進行を止めることに関してかなり希望がもてる」という結果が出ているという(差の1割分のところに、NCにもならないが希望が持てるというものがあるのかもしれないのだが、よくわからない)。一方、抗ガン剤治療だけでは、NCまで含めても五割だということで、七割というのは、じつは大変良い結果なのだとする(*4)。

さて、自律神経免疫療法のデータである。その評価基準は、厚労省臨床試験評価基準参照を改定し、3年での判断をしている。

ところで、上記のように水島氏は、自律神経免疫療法を「免疫をあげるすべての治療法を含んだ総称」ととらえているというのだが、ここでは、針刺激を使うもののことを指している。このあたり、狭義の自律神経免疫療法とでも呼ぶのか。上のデータのことも含めて、もう少し整理していただきたかった気がする

ここでは、ガンの各部位ごとに、白血球やその中身のデータなどとともに述べられている。全部位合計345例をまとめると、NCが33.9%、PRが38.8%、CRが1.7%で、これらの合計は、74.4%ということである。七割五分というのは、上の七割よりいいのだが、上は5年間、これは3年間のデータなのでどう評価していいのかわからない。私は、それまでの免疫力を高めるBRM療法に(狭義の)自律神経免疫療法を加えても、そんなに大きくは変わらないのではないかという感じも持ってしまう。


7.東西医学の融合こそガン医療の混迷を救うのでは


矢嶋氏は、上のデータを出す前に次のようなことを述べる。

安保先生と一緒にこの療法を開発された福田先生やその他の先生は自律神経免疫療法が上手であるためもっとよい結果が得られているときく。しかし、わたしのつたない療法においてはこの程度の結果であったことを申し添えておく。

矢嶋氏が、どこから「もっと良い結果」のことを聞いたのかはわからないが、前回〔2.『免疫革命』の実際はこんなものでした〕で紹介したように、「治癒率のデータが揃うにはあと数年は必要」といっているのである。

水嶋氏は、データの説明が終わった後にも、次のように述べる。

最後に先述の自律神経免疫療法の達人の先生方は私よりもよい結果を示されていることを申し添えておく

問題は、「達人」方がどのように示したかである。前回、上と同じところで紹介したように、安保氏が「七割」などといっても、それは「印象」だったりするのである。

おそらく矢嶋氏は、安保氏の以前の本とあまり落差があってはいけないと、遠慮してこのようなことを書いたのではないだろうか。矢嶋氏は他の医師との連携を重視する方である。

矢嶋氏は、安保理論によって東洋医学西洋医学を結びつける言葉や考え方を得たことに深く感謝をしているという。だからといって遠慮などする必要はないであろう。東西医学の科学的統合を目指して、自分の方法を追求していただきたいと考える。

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矢嶋氏は、15歳で、公害に苦しむ人々を見て医学を志したという。当時公害で命を落とした方も少なからずいた。今や日本人は、ガンで命を落とす人が一番多い。そして、その治療の過程には、様々の迷い、苦しみが横たわっている。

医学界、製薬会社、厚労省に、船瀬俊介氏のいうようなひどい部分がなかったわけではない(参照:『抗ガン剤で殺される』で殺されてはいけない:前編)。今でもあるのであろう。もちろんまじめにガンの医療、研究に取り組んでいる方も多いわけだが、なかなか出口の方向さえも見えない面がある。そんななかでは、近代医学への批判も語られやすく、それが往々にして代替療法への誘導に使われる。

もちろん、真摯でまじめに取り組まれている代替療法もあるのだが、そこには悪質なものも入り込みやすいと考えられる。相手は、命がかかっていて切羽詰まっている。お金を惜しんでいる場合ではないと考えやすい。最近はがん保険も普及して、その保険金もあったりする。そんななか、騙されて、高額のお金を絞りとられた上で亡くなっていく人も決して少なくはないのではなかろうか。

このことだけでなく、私は、にわか勉強なのだが集中的に調べてきて、現在、ガン医療は混迷しているのではないかという気がしてきた。たとえば、医者自身がどんな治療を選択するか、というところにもその一端がうかがえる。この本の、『第2章 ガン専門で自律神経免疫療法に取り組む』には、あるリンパ球移入療法のクリニックに来ていたのは、約10%が医者だったと書かれている(p.204)。あるいは、ある抗がん食品療法参照に「訪ねて来る患者の中には、大学病院の教授やがん専門病院の著名な医師も少なくない」そうである。医者自身に、標準的な治療を選ばない人が多いのだとすれば、そこには混迷があるといわざるを得ないであろう(*5)。このような混迷の解決の糸口は、どこにあるのであろう。

同じころ中学生で、やはり公害問題が心の重しとなっていた私は、医学を志すことはなかったが、気分変調する私]》で、その解決を求めて、坐禅ヨガをするようになった。理学部大学院生で、自然科学を追い求める一方、『抗ガン剤で殺される』で殺されてはいけない:後編》〔11.同じ師に学んだ私も、代替療法には関心を持っています〕に書いたように、日本のヨガの草分けの沖正広先生の道場で、指導者養成研修に参加したことがある。その最後に、参加者が一つづつ沖先生に質問ができた。私は、気分変調のことを聞こうかと迷ったのだが、「これからは東西のいろいろなことが融合する時代だと思うが、どうお考えになりますか」という質問をした。そのとおりだという趣旨の答えを得た。

あれから、二十数年、ようやく医学の世界で東西の融合が見えてきたのではないだろうか。私はそれが、がん医療の混迷の出口の方向を示すのではないかと考えつつある。その中で、矢嶋医師の果たすことができる役割には、大きなものがあると思うのである。その活躍を、今後も大いに期待させていただきたい。

*1:佐久総合病院は、高度医療と地域医療の「2足のわらじ」を担っている病院として有名で、NHK“プロジェクトX”でも取り上げられている参照

*2:なぜ東洋医学を学んだかは、ここに書いた『サイモントン療法セミナーを主催した、小池統合医療クリニックの小池弘人医師にも聞くことができた。やはり、西洋医学に行き詰まりを感じてということではなく、合気道をやっていて、そこには鍼灸師の人が多かったことから、自然に興味を持ってやり始めたということであった。

*3:BMR(バイオロジカル・レスポンス・モディファイアー):生体反応活用物質。クレスチンなどの免疫賦活剤やインターフェロンのように生体のもつ防御機能を回復、活性化させる物質(生体応答調節物質、生体反応修飾物質などともいう)。参照

*4漢方薬もふくめて、自律神経免疫療法を行っていた患者は、亡くなるときも苦しまず、楽に亡くなっていく傾向があるということである。前日まで元気だったのがパタッと苦しまずに亡くなっていくケースが多いということで、ここにも免疫を維持することの大事な意味があると考えているということである。

*5:ガンになった医者の選択については、『抗ガン剤で殺される』で殺されてはいけない:後編》〔8.医者は「添付文書」を読んでいるのか、いないのか〕に書いたように、船瀬俊介氏は、「抗ガン剤 … 私なら絶対やりません!」というのが、「日本の医師たちの偽らざるホンネ」という。そこまでではないだろうということは、私の身近な例で反論した。しかし、医者が患者に勧める治療法と自分が選ぶ治療法に、往々にして違いがあるとすれば、それは当然問題であろう。

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