Secondguess引越しのご案内

タリン(エストニア)の郊外の通りにて、2008年7月24日


ずっと前からこのサイトでも告知していたかどうかあまりよくおぼえていないのですが、とりあえず、以前から準備していたホームページの箱が完成したので、とりあえずコンテンツ抜きで、開業することにしました。そうやって、なにがしら書かねばならんような状況へとおいこんでいこうと思ってます。

アドレスは下記の通りです。

www.luegenlernen.de

あとは、日本語以外でのブログも準備中。引越し先のホームページにリンクをはってあるのでそこから来てください。まだそれほど記事をポストしていませんが、基本的に英語とドイツ語の二ヶ国語で書くことになると思います。

というわけで、このはてなでのSecondguessは今日にてお開き。引越し先のLügenlernenをぜひよろしく。ではまた自戒。

タリン、2008年7月24日、Secondguess。

 EM総括ーその五 最終回 決勝 独逸対西班牙

シュプレー川へ向かう通りにて、Berlin-Kreuzberg,26.6.2008


小生の中ではこのユーロはこの木曜日、ロシアの敗北とともにおわっていたがゆえに、決勝は所詮消化試合程度にしかみていなかったけれど、結局というか、期待に反しつつ、あるひとつのお祭りの最高潮にはふさわしくない非常に盛り下がった試合を独逸はやってくれました。まあ、これは小生の中ではある程度予想していたことではあったけれど、それでも、独逸のいわゆる「悪運」抜きの「悪あがき」をこの決勝で見たかったことはいうまでもない、この3週間のお祭りの終わりに華を添えるような。しかし、ここまで萎えた試合をしてくれるとあきれてものもいえなくなる。木曜日の、事実上の決勝戦とみていた西班牙対露西亜戦後、一度「決勝」などみるにあたいしないと思ったのを翻意してみようとおもったのが極度にアホらしくなるぐらい。独逸はポルトガルとトルコとの死闘の後、スペインという、この二チームのみならず、実力的に自らの上をいくチームと戦う力など残されていないかのような消極的で悔いの残る試合をしてしまった。それに引き換えスペインはスコア以上に独逸を圧倒したといえるだろう。独逸はスペインというこの大会の屈指のチームと90分間を通して決勝戦で対戦するのにふさわしい実力と闘争心を存分にしめすこともできなかったし、戦術的にスペインに相対する術をあまりにも欠いていた。小生のサッカーチームの同僚の独逸人でさえも、昨日の試合はブンデスリーガ一部のチーム対二部のチームの試合ぐらいの実力差がありありとあったであったということを認めてやぶさかでなかったぐらいであった。
それでも開始の10分は決勝戦にふさわしい緊迫した展開を期待させる出足を独逸は見せていたと思う。スペインというチームとの実力差そして対戦相手の特性をしっかりと把握した上での前線からの早いプレッシャーをかける立ち上がりをみせ、スペインは中盤でなかなかボールをまわせないし、これまでの試合でみせたようなテンポコントロールをなかなか発揮できずに、縦への推進力を発揮できないでいた。むしろ、ドイツがその点では主導権をにぎるべく出足早く動こうとしていたのが少なからず見て取れた。それでも、スペインはあわてなかった。これが2年間の間に彼らが示した最大の進歩ではなかろうか。2年前、W杯のフランス戦では先制しておきながら、追いつかれる展開で、同点にされた後、冷静をうしなって、主導権を奪われることになったまだ若かったスペイン代表は、ジダン擁するフランスの前に一敗地にまみれた。レーマンにセーヴィングを強いた後のスペインは、落ち着きを取り戻し、中盤でのボールキープに拍車がかかり、パスが回りだすようになり、ドイツのプレスを周到にいなしながら隙をうかがいはじめる。こうなると、ドイツは苦しくなった。その直後のトーレスのヘディングのシュートはポストに嫌われたものの、スペインはトーレスをつかって裏を狙うという教科書どおりのコンビネーションをみせたし、おそらくこの大会最高のパフォーマンスをみせたこの試合のトーレスの裏をとる動きにドイツディフェンス陣は、案の情ついていくことができない。スペインはこのドイツディフェンス陣の最大の弱点を徹底してつく。そして、シャビからドイツのセンターバックと左サイドバックのラームの間を狙ったトーレスへのパスによって、ドイツディフェンスはついに決壊する。ラームはトーレスのスピードとフィジカルに完全に太刀打ちできなかった。飛び出したレーマンを交わしたトーレスのシュートはドイツにとっては無常なまでに淡々とゴールネットに転がり込んでいった。ラームは、前半負傷していたらしく、後半開始と同時にヤンセンとの交代を強いられたけれど、トルコ戦に引き続いてやはり見るべきところは、攻撃でも守備でも、ほとんどなかった。スペインは前半のうちに一点をリードするという願ったりかなったりの展開になり、あとは中盤でボールをキープしつつ、ドイツディフェンスの裏をつくという、まさしく、露西亜戦と同じ展開になる。こうなるとドイツは苦しい。
この日のドイツはそのような劣勢を覆すような闘争心を全く相手に見せ付けることができなかった。バラックは怪我を押しての出場ということもあってか、トルコ戦にひきつづいて、この日もみるべきところがなかった。バラックだけでなく、ドイツの各選手からはポルトガル戦のような美しく戦うサッカーをしようという意思も感じられなかった。後半にはいってもドイツがなにかを起こしそうな展開にはならなかったし、得点がはいりそうなシーンを作り出すことすらもほとんどできなかった。後半、ラームの代わりに入ったヤンセンでは、スペイン相手には一枚役者が劣っているのはあきらかだったし、不調のバラックでなく、比較的ポルトガル戦以降好調だったともいえるヒッツェルスペルガーを下げてクラーニを入れた時点で、中盤ではドイツはさらに不利になった。レーヴ監督の采配も今日は全くふるわなかった。そして、ポルトガル戦で最高の試合内容をみせたともいえるクローゼ、シュヴァインシュタイガーポドルスキーの前線の三人の闘争心もからまわりするだけで、それぞれが孤立してチャンスメークどころではなかった。スペインはそうしたドイツの状態をみきったのか、ボールをしっかりとキープしつつ、縦横にポジションチェンジを繰り返しながら、ドイツの隙を裏を徹底してつく、狡猾かつ美しいサッカーを相手にみせつけた。特筆するまでもなく素晴らしい中盤の4人を最後まで引っ張る必要もなかったし、ファブレガスを下げる余裕もスペインにはあった。特に、中盤の4人の裏にいたセナの強さは特にめだった。屈強なドイツ選手に当たり負けしなかったし、ボールの配給係としてもこの試合ではすばらしかった。影のこの試合のmvpは彼だと小生はいいたい。彼にも後半決定機を押し込むチャンスがあったが、惜しくも伸ばした足にボールはとどかなかった。そのほかにも、スペインは何度か決定機を迎えるけれど、対してこの日のスペインにとってこれ以上危険なシーンはなかったし、彼らはそこまであせる必要はなかった。のこり20分となったところで、ドイツが一瞬戦う意思をみせるたが、長続きはしなかった。スペインは守備のカードを切りながら、トーレスを下げて、同じく好調のグイサをいれて、試合を閉めにかかりながらもドイツにとどめをさすことも狙った。その後は、見ての通り。何もおこらぬまま。そのような展開をつくりだしたという点で、スペインが一枚も二枚も上だったというべきなのだろう。ドイツはなにひとつしたいことをさせてもらえないまま試合終了のホイッスルをきくことになった。決勝戦にふさわしい緊迫した試合ではなかった。ただただ、スペインの強さのみが光った。
ドイツはこのチーム状態では、闘争心云々以前に、この大会の決勝でスペインに相対するのにふさわしいチームではなかった。なによりも、「決勝」戦でみた独逸代表は一番ひどいときの「つまらない」サッカーをするドイツ代表だった。この試合の独逸代表のパフォーマンスはポルトガルでのユーロ2004のグループリーグでの最終試合でチェコの1・5軍に大敗したときと比べてもいいぐらいみるべきものがなかった。そういうチームが決勝に来るということ自体が、不思議だったし、はっきりいうと、組み合わせ抽選の結果ややり方にいまさらケチをつけたところでどうとなるものでもないが、グループリーグでの組み合わせに、結果論ではあるけれど、おおいに問題があった大会であったゆえのもりさがった決勝だったというわけだ。
ということで、グループABとグループCDのレヴェルの差も明らかになった試合でもあった。ドイツは、ある種の「準開催国」もしくは「隣国」特権なるものが存在するのではないかとかんぐりたくなるぐらいの組み合わせのグループリーグBをぎりぎりで突破して、ポルトガル戦では目の覚めるような力強いサッカーをしたものの、準決勝ではトルコが健闘したとはいえ、その事実上のBチーム相手に大苦戦の低落、一方で、スペインは、準々決勝では、グループリーグでは低調だったものの世界王者にふさわしい「自分のサッカー」を繰り広げたイタリアをPK戦の末負かし、世界王者と準世界王者を完膚までに叩きのめしたオランダを屠ったロシアにも準決勝で完勝してきて決勝に進んできた、この差。やはり、準決勝第二試合のスペイン対ロシアのほうが内容的に見所のある試合だったし、いや、むしろ、前言を翻すことになるけれど、ヨーロッパ王者を事実上左右することになった、この大会の分水嶺にあたった試合は、そして、試合内容とその緊迫感から、そして小生にとっても事実上の決勝戦にふさわしかったのは、いまからすると、スペイン対イタリア戦であったように思える。イタリアはなんだかんだいいつつ、グループリーグの最終戦とこの準々決勝のスペイン戦で、完全に彼らの色(それに対する好き嫌いはともかく)をとりもどした世界王者にふさわしい試合を準々決勝でしたように思う。その世界王者であるイタリアに勝利したスペインが、誰もが納得する形で、彼らがこの大会の王者にもっとも値するということを世界中にみせつけることができたのは、サッカーというスポーツにとってフェアな結果でなによりだった。もし、この試合で、独逸が彼らの「悪運」招きよせていたら小生は当分サッカーをみるのをやめていたことだろう。

結果として、小生にとっての大悪役ドイツは、「悪運」を招きよせられることもなく、それどころか、今後への課題をこの決勝で暴露してしまった。この大会でも主力であった2002年と2006年のW杯経験メンバーの衰えはもはや隠すことのできない事態だということだ。バラックは確かに、今シーズンの終盤プレミアリーグで活躍したともいうが、このような短期決戦の場でのフィジカルコンディションに関する不安はもはや隠すことはできないし、大会を通じて不安定だったレーマンの次にドイツ代表のゴールを守るのは誰かもわからない、ドイツはキーパーのタレントの宝庫にもかかわらず。2002年の準優勝メンバーのピークは完全に去った。世代交代に関しては、イタリアやフランスにもいえることだが、この二カ国のユース代表、もとい若い世代には次を担うのにふさわしいタレントが山といる。そして、結果も出し続けているし、このユーロのあと万を持して世代交代が始まることだろう。そして、イタリアはすでにリッピの代表監督復帰が決定的ともいうし、フランスはドメネク続投か更迭の議論がはじまってもう久しい。しかし、ドイツでは、ポドルスキーシュヴァインシュタイガーに続く世代のタレントがまだ出てきている気配もない。ドイツのユース代表はヨーロッパのレヴェルでも結果は全く出ていないという現実に目をむける必要があるだろう。レーヴという監督は小生は評価しているけれど、ドイツ代表はチームとしてパフォーマンスの波が激しすぎる。ドイツは次の2年間、南アフリカのW杯に出場することを最優先しながらも、早急の世代交代とそのチームの熟成をすすめなければ、4度目の世界制覇などまたのまたの夢だということを肝に銘じなければならない。結局、この2年でほかのどのチームよりも前回のW杯の教訓を生かして、発展のベクトルにのって結果を出したのは、ほかならぬスペインだったということ、これは誰の目にもあきらかだろう(例外は、トルコに負けたけれど、クロアチア。この2年間で、世界を納得させるだけのふさわしい進化とげたし、このユーロ後の伸びしろを感じさせてくれる、このユーロ参加国の中でも、チームのひとつだといってもいい。もちろんロシアも注目。)
それにしても、今大会の小生の大本命であったオラニェことオランダはどうしてしまったのだろうと思う。グループリーグで調子の上がらないイタリアやフランスを圧倒するサッカーをくりひろげながら、コンディション調整をあやまったともいろいろいわれているけれど、準々決勝で、ぐうの音もでないぐらいロシアに叩きのめされてしまうのだから。もちろん、あの試合はヒディンク率いるロシアが戦術的にもコンディション的にもオラニェを上回っていたということ、サッカーにおける下克上のカタルシスを、オラニェファンの小生でも存分に味あわせてもらったので、別に不満はないのだけれど。それでも、なぜ彼らはトーナメントの初戦でいつもまけてしまうのか。これは謎です。わけがわかりません。はい。ファン・バステンの後任はファン・マルヴァイクか。本当に大丈夫か、オラニェ!いや、若い世代は、独逸なんか問題にならないぐらいのタレントの宝庫。過去2回のU21のユーロを連覇するほどのチームだ。ファン・マルヴァイクには、この世代の将来を感じさせる選手をどんどんオラニェにひきあげていってもらいたい。個人的には、そして、今度こそ、次のW杯で宿敵独逸を木っ端微塵にするオラニェを期待したい。


Danzigerstr, Berlin-Prenzlauerberg、29.6.2006深夜前


さて。試合後のベルリンは、祭りの終わりの刹那などどこにもなく、いつのまにか意識するともなく過ぎ去っていった祭りの時への哀愁をいやおうなく感じざるをえない。そして、小生が試合をみた友人宅のあるプレンツラウアーベルクのDanzigerstr.は試合終了間際かからしてすでにもうお葬式のように静まりかえっていた。試合前はあれほど威勢のよかった独逸人もただただ現実をみせつけられて明日からの仕事へ学校へ向かうべく、明日からの「日常」へと戻るべく、とぼとぼと家路につくしかない。試合終了しばらくすると、散発的に、西班牙人か、誰かがはなった花火が散発的に、祭りの終わったベルリンの夜空へと打ちあがっていたけれど、パーンパン、と乾いた音は、それもただ、特別だった3週間の終わりを告げるかのように、負け試合を見終わった独逸人たちが明日に備えるべく家路へとつきはじめて再び忙しくなったベルリンの街角を背景に、寂しげに響き渡るのみ。通りの向こう側の地下鉄の駅の前には大量の警官隊が配備されていたけれど、友人宅の通りを見晴らすバルコニーから遠目に見えた警察車両のライトと時々、通りに響き渡ったそのサイレンの音ががわびしかった。おまわりさんたちも、不本意にも(?)昨日は予想していたよりも早く仕事から解放されたことだろう。そして、今日は月曜日。またいつもどおり。すでに昨日まえでのお祭りははるか昔のことよう。

さてサッカー話はこれでおしまい。次回以降はルーマニア話の続きをするとしますか。ではまた自戒。

 EM総括ーその四(再送) 6月25日準決勝第一試合:独逸対土耳古、6月26日第二試合:露西亜対西班牙

Berlin-Kreuzberg Skalitzerstr. 25.6.2008夜 独逸対土耳古戦直後


残念だけれど、奇跡は四たびおこることはなかった。後半86分に2−2の同点に追いついたときの土耳古にはなにがしら凄みすらあった。ここからなにかをおこれせられれば、土耳古はこのトーナメントのファイナリストに値するチームとなっていたかもしれない。だけれど、それが限界だったのか、それとも、それが独逸代表の勝負強さなのか、むしろ、小生はこれを悪運といってしまいたくなるけれど、勝者は独逸だった。
試合内容からすれば、土耳古はグループリーグ緒戦以降、最高のパフォーマンスをみせたといってもいいだろう。それまでの全試合で土耳古は先制点を許していたわけなのだから。しかも、怪我人や出場停止が9人もいて試合前からすでに満身創痍だったはずなのに。それに対して独逸はポルトガル戦と同じメンバー。勝ったチームは変えないの原則をつらぬいた。しかし、独逸は、にもかかわらず、土耳古の試合開始の当初の出足のよさに完全にふりまわされてしまった。土耳古の先制点とその直前のバーにあてたシュートは独逸のディフェンスブロックを完全に崩してのものだといいだろう。それでも、独逸は前線のタレントの質でうわまったがゆえの一点目、二点目だったといっていい。二点目はリュシュトゥのミスだったけれど、あのシーンで土耳古のディフェンス陣はクローゼに簡単にヘディングをゆるすべきではなかった。土耳古の一瞬の気の緩みがでた悔やまれるシーンでもあった。一方、独逸はこのシーンを得点に結び付けられたのは大きかった。
土耳古が試合をあきらめなかったがゆえの2点目がはいったところで一度は試合はどうころがるかわからないところまできたのは間違いのないところだった。もはや誰もが延長戦突入を考えたに違いない。けれど、土耳古の2点目のきっかけとなった突破をゆるしたラームがロスタイムに目の覚めるような逆転ゴールをきめたのは運命のいたずらとしかいいようがない。独逸の勝利を決定付けたラームの逆転ゴールは見事だった。ラームはこの逆転ゴール以外に今日は見るべきものはなかったし、逆に土耳古の2点目のゴールは彼のミスによるものがおおきかった。それでも、逆転ゴールをきめてしまった以上、このラームがこの試合のヒーローであることにはなんら異論はない。それぐらいあの逆転ゴールは見事だった。
どうして独逸がこの試合の勝者となりえたのか?サッカーとはスコアーがうわまわったチームが勝者でもう一方は敗者であるしかない、できるだけ多くの回数、ボールを相手のゴールにたたきこむこと、結果だけいえばそれだけのスポーツなのだ。もちろん、それだけですむわけではない。そこにいたるまでの中盤でのせめぎあい、ゴール前でのせめぎあい、そこへボールをいかに運んでいくか、そのボールをどうやって11人で動かして前へ敵の圧力をうけながら動かしていくか、そういったさまざまな局面にみどころがあるスポーツなのだ。それでも、最後はゴールを相手よりも多くきめたチームが試合に勝つ。ゴール前へボール運ぶプロセスは結果の一要因にはなりうるけど、結果に直接はふくまれない。シュートをしなければゴールにはいたらないし、ゴールをきめられなければ、相手にはやはり勝てない。その中で、数少ない決定機、すなわち、試合の中で五回もあったかどうかの、ゴール前でのキーパーと一対一のシーンを、3回決めた独逸が、2回しかきめられなかった土耳古をスコアの上でうわまって勝ったということ。ただそれにつきる。なにがいいたいかというと、独逸の試合内容はそれぐらいこの試合ではほめられたものではなかった。逆に、土耳古は実力ではうわまるはずの独逸に対して健闘以上の戦いをみせたわけなのだ。
そう、90分間を通して独逸はポルトガル戦とくらべるとみるべきものがすくなかった。バラックはほとんど土耳古の中盤の圧力に屈して90分間を通して試合から消えていたし、ポドルスキーは先制点にからんだもののなかなかボールをもてないシーンが続いた。ポルトガル戦につづいて先発したダブルボランチのヒッツェルペルガーとロルフェス土耳古の中盤に対して前半は後手を踏み続けた。後半開始当初のロルフェスフリングスの交代は、ロルフェスの負傷もあったとはいえ妥当だった。後半の独逸はこの交代で少しは息を吹き返すことができた。というのは今日はバラックが試合から消えていたために、ボールがなかなか落ち着くところがなく、ボールを落ち着かせることのできるフリングスの存在は後半おおきかった。それに引き換え独逸のディフェンスは前半何回土耳古に決定機を許し続けたか。前半に2点、3点をきめられてもおかしくなかったかもしれないほど土耳古の攻撃に振り回され続けた。それでも勝てたのは。最後の終了間際のチャンスをしっかり結びつける勝負強さ以外にありえない。ミスをしつづけて、もし負けていれば戦犯にされていただろう、ラームの目の覚めるような名誉挽回ともいえる起死回生の勝ち越しゴールは見事だった。
しかし、西班牙相手に、この土耳古戦、もとい、クロアチア戦、そしてポルトガル戦での終了間際のような失点をしているようなディフェンスはでは不安が残る。独逸のセンターバックの二人のメツェルダーメルテザッカーはフィジカルと対人プレーでの強さでは光る。しかし、これまでの独逸のこれまでの試合の失点シーンであったように、この二人は左右と縦への早い揺さぶりにあうと相手オフェンス陣のスピードにはついていけない姿を何度もさらけだしている。独逸は決勝戦西班牙を相手にポルトガル戦以上に中盤から前へアグレッシヴにディフェンスをして、なるべくペナルティーエリアから相手を遠ざけるプレーをしないと、このディフェンス陣では非常に危険だ。それに引き換え西班牙は独逸のような前線からボールに来る相手(昨日の露西亜もそういうチームだった)をいなすのに長けたチームだ。その西班牙がこの弱点をねらってこないわけがない。おそらく西班牙は独逸を相手に前半中盤で先手をとって揺さぶりながら裏のスペースをねらってくる展開になる、そして後半に勝負をかけてくるだろう。
そういう試合を準決勝の第二試合で西班牙は、優勝候補の筆頭だったオラニェを、また同様に、延長後半に完膚なきまで叩き潰した露西亜に対して見せた。露西亜はこの西班牙との準決勝第二試合前線からの早いプレッシャーで相手ゴールへと迫ろうとした。ところが、そういう試合運びを試みた露西亜を、西班牙は前半慎重にいなして、相手の守備ブロックのほころびをねらっている展開がつづいた。露西亜もパヴルチェンコやアルシャービンが阿蘭陀戦同様、西班牙ゴールへと迫る。決定機もひとつ作り出した。しかし、この決定機をきめられなかった露西亜は後半それを悔いることになる。西班牙は後半露西亜の足がとまったところで一気にたたみかけて三ゴールをあげて試合をきめてしまった。たったそれだけだが、この試合運びができる西班牙のチーム力がこの試合ではものをいった。この差は露西亜という若いチームにとっては大きかった。
独逸も露西亜同様前半から前から攻撃的にきて早い時間帯での先制点をねらってくるだろう。独逸がそこで主導権をにぎってしまえば、独逸にとってはいうことはない。もちろん、西班牙はそれをいなしつつ後半に勝負をねらってくるが、前半に先制できてしまえば、それこそ西班牙の展開となるだろう。むしろ、そうできればもうけものぐらいに考えているだろう。西班牙の露西亜戦の勝因は相手が後半ばてたところをたたみかけることができたからだ。ビジャの交代という不幸(彼は決勝を欠場することになったかが)もあったけれど、そのことによって、つまり、ビジャと交代で入ったファブレガスの投入によって、西班牙のチームとしてとるべき戦術はむしろあきらかになった。それまでは、ボールポゼッションでは露西亜が西班牙を上回る展開だったのが、西班牙は、ファブレガスを投入して中盤をより分厚くしたことによって、ボールを保持できるようになり、よりパスを回せるようになった。そのことによって、後半に露西亜の疲れを待って、ボールをもちながら、裏をついて一気に畳み掛けるというチームがめざすべき戦術が確かなものになったのではなかろうか。後半開始直後から西班牙はボールを持ちながら、露西亜のプレスをかわしつつ、隙をねらうことになる。だからこそ、50分過ぎの先制点は西班牙にとっては狙ったとおりの展開だっただろう。
ところで、露西亜は西班牙の各選手に対してマンマークでディフェンスをしていたが、先制点をきめたシャビはシュートのとき全くのフリーだった。だが、あの場面での露西亜は西班牙のサイド攻撃の左右への揺さぶりのスピードに完全についていけなかった。もちろん、あのイニェスタの早いグラウンダーのクロスボールをあわせたシャビのプレーとそれにいたるまでの露西亜選手の注意をきったオフ・ザ・ボールの動きこそすばらしかった。猛烈なダッシュやフリーランニングでもない、あのイニェスタがそのようなクロスを出すだろうということを予測したあの動き、バルセロナのチームメート同士のプレーだからこそできるこのチームワークがあげた先制点でもあった。そして、2点目、3点目も前がかりになった露西亜の裏を完全についてのゴールだった。西班牙の先制したあとの試合運びは全くすきがなかった。露西亜に点の入りそうな気配はなかったし、この展開で、前がかりになった露西亜の裏をついて追加点を狙うという展開は西班牙というチームにとっては願ったりかなったりだっただろう。3−0で試合は終わったけれど、2点目が決まった時点で露西亜は戦意をなくしてしまったし、もっと点がはいっていてもおかしくはなかった。露西亜は後半足が止まってしまったことが敗因の一つだ。チームとして露西亜は歯が立たなかったというべきだろうか。経験の差だろうか。それに、先制点のシャビのゴールに象徴されるように、西班牙は露西亜より一日休養日が短かったにもかかわらず走り勝った、ということでもあるだろう。やはり、露西亜にとっては阿蘭陀戦の120分間での勝利は高くついてしまったということだろうか。露西亜は阿蘭陀戦での疲れが後半一気にでてしまったのだろう。

独逸はそんな西班牙に対してどう戦うべきなのか。独逸が西班牙に中盤でのパス回しやテクニックでうわまれるとは思えない、ゆえに、後半足が止まってしまった露西亜の二の舞はなんとしてもさけたいところ。独逸は先制点をなんとしても狙わなくてはならない。逆に先制点をとられてしまっては苦しくなる。そして、90分間を通して戦うメンタリティーがないと。土耳古戦のような試合運びをしていては、西班牙相手では厳しい。逆に、西班牙が独逸の圧力に苦しむようなことになれば、独逸には勝機はある。
ただ、何度もいうけれど、そういうフィジカルを前面にだすようなそういうサッカーはすきではない。もちろん、サッカーというスポーツの数ある戦い方のひとつではあるけれど、それは小生の好みには合致しない。オラニェやオラニェ相手に相手のお株をうばうような攻撃的なサッカーを展開した露西亜が小生の理想とするサッカーなのだ。その点では西班牙のサッカーも見ごたえがあった。しかし、西班牙のようなチームはなかなか作れるものではない。中盤にあれだけのタレント、ファブレガス、シャビ、シルヴァ、イニェスタをそろえた上で素晴らしいコンビネーションやテンポコントロールをみせられるチームなどそうはつくれない。オラニェもそれかそれ以上のポテンシャルのあるタレントを誇るチームではある。けれど、準々決勝のあの試合では、コンディションや露西亜の巧みな試合運びもあったけれど、まったくうまくいかなかった。やはりフランスやポルトガルもあれだけのタレントをそろえておきながら早々の敗退だ。そして、延長後半ばてばてだったオラニェを完全に屠った露西亜の作戦と高速カウンターでオラニェを叩きのめした勝ち方は本当にみごとだった。サッカーにおける下克上の醍醐味だ。西班牙戦でもそれを期待したけれど、図らずも西班牙の試合運びはたくみだった。この点では西班牙というチームの経験そして世界最高峰のリーグでプレーする選手の質がここではものをいった。それだけ西班牙の中盤はこの大会屈指だといえるだろう。その中盤と独逸のパワーとモチヴェーションの対決がこのトーナメントの決勝のみどころになるだろう。
ところで、ヒディンク露西亜代表の監督を2010年のW杯まで続ける意欲をみせている。露西亜サッカーは、オイルマネーが投じられたこの数年間、そして今シーズンのゼニト・サンクトペテルブルク、そして、2004/05年シーズンのCSKAモスクワUEFA杯の優勝もあって、上昇気流にある。代表がこのユーロ2008でベスト4にたどりついた今や、2年後再びW杯という桧舞台へと帰りつかせることは、露西亜サッカーへの今後への至上命題だろう。W杯の予選ではこのユーロのファイナリストである独逸と同じグループになることが決まっている。そして、バルセロナアーセナルへの移籍が噂されるアルシャービンをはじめとした露西亜の若きプレーヤたち(アルシャービン以外にも西ヨーロッパのリーグへ打って出る選手もでることだろう)がこの次の2年間でどれだけ進化をとげるか、正直なところ目が離せないところだ。ヒディンク露西亜代表をW杯という桧舞台へ再び送り込んでくるだろう。彼のことだからきっとやってのけることだろう、しかし、このオランダ人は全く憎憎しいまで策士だと思う。

Berlin−Kreuzberg Oranienstr. 25.6.

ていうかこのおっさんは独逸代表のユニフォームをきていましたが・・・。


話は前後するけれど、準決勝で敗退することになった土耳古はこの試合の勝者である独逸に対していい試合をしたのは事実だ。なんどもいうけれど、主力がほとんど怪我や出場停止でででれなかったにもかかわらず。サッカーは名前と前評判でするものではない、90分間の試合へのモチヴェーションで図るべきものであるということを教えてくれた試合だった。独逸はこの土耳古戦での不評をぬぐうようなサッカーをしない限りは西班牙には勝つのは難しいだろう。

ところで、試合終了後のクロイツベルクは先週の金曜日ほどの喧騒はなかった。むしろ、そこですでに祭りの終焉の刹那を感じてしまうほどであった。独逸サポーターの「Finaaaaleeee,wowowooooo!」の叫び声もどことなく控え目で、まだ決勝戦にとっておくべ、それよりも水曜日の夜だったからかだろうか、金曜日の土耳古クロアチア戦のあとのような雰囲気にはならなかった。クロイツベルクの土耳古人たちも試合後さばさばした感じで家路につくのが印象的で、土耳古人と独逸人たちの集団が「Deutschland, Tuerkiye!(独逸、土耳古!)」と肩を組んでとおりを行進する姿もついた。それをみて小生は日韓のW杯のときのことを思い出してしまった。あの時も、みなが口々に「日本、韓国!」とさけんでいた。そして、家路に着く途中、交差点で、車の窓を通して、「これだけ楽しませてもらったのだし、満足だよ」と短く言葉を交わした隣の車のハンドルを握っていたトルコ兄貴の表情は晴れやかだった。彼らはサポーターとして、この大会すべて以上を出し切ったチームの戦いに満足しているが故のグッドルーザーだった。それをみて、独逸代表と独逸人をみて嫉妬する、オラニェ狂いの小生はなんと往生際が悪いのだろう、と思った一夜でありました。

Berlin-Kreuzberg, Skalitzerstr., 25.6.2008


さて。日曜は決勝戦ですか。昨日の西班牙対露西亜の試合が終わった直後は、どうにもこうにも、やりきれなく、往生際悪いことこのうえなく、決勝戦は絶対にみまいと公言してはばかっていませんでしたが、一日たって冷静になってみて、いろいろ考えてみると見どころの多そうな試合になるやもしれない、という思いにいったたのだけれど、一方で、独逸人と西班牙人の馬鹿騒ぎを見ながらの試合観戦はもういいかな、と思ってるので、どこか静かな中立した雰囲気のあるところで、じっくりと試合をみてみたいとおもってるところ。もはや、祭りの終わりの雰囲気を感じざるを得ない。ひとつの「非日常」とも思える時の終わりは、むしろ知らず知らずにその終わりは突如やってくるものなのだけれど、その終わりを感じ取った刹那には言葉にしがたいあはれを感じことがある、たとえば、旅という「非日常」の終わり、家路についている最中にその構えがないと、帰宅後の「日常」にうまく帰っていくことができないのと同様に。突然にその終焉を迎えて、おろおろとしてしまうよりも、そうではなくて、それに対する準備をしなかれば、「非日常」から「日常」へいかにもどるか、というときの対応ができないのだ、なんていいわけをしておきます。実際はこの3週間毎日サッカーとビールの日々に疲れたというのもあるのだけれど。
とりあえず、ここベルリンではまだ日曜までなんとなくうわついた雰囲気がのこって、日曜日はめざめたときから、ベルリンの独逸人たち西班牙人たちはそわそわしだすことになる、そして、それこそ街の雰囲気はそれに影響されるようにだんだんと潮があがっていくように熱気を帯びてくるのだろう。この日曜日はこのお祭りにふさわしいこの3週間の最後にふさわしい一日となるに違いないと思う。けれど、小生のなかでは、もはや、それが終わってしまったようにも思えて、心からそれを楽しめる状態にはもうない。どこか静かなところにいってしまいたいとと思うほどだ、この週末は。試合はそれでも楽しみですよ。見たくないといったこれで前言は撤回して、これをもって今日の総括と変えさせていただきます。

では、みなさん、日曜日、決勝戦お楽しみあれ、ではこれにて。またまだ自戒が必要ですな。

 EM総括−その三

えー、ひさびさにはなばなしく二日続けて更新したというのに、いまだにオラニェ敗退のショックからたちなおっておりません。今日はとりあえず準決勝第一試合の独逸対土耳古の当日のお話をしようかと思います。

とりあえずオラニェの敗退はショックの一言。グループリーグでこの20年間かつてないほど世界王者と準世界王者相手にスペクタクルなサッカーを披露してぼこぼこにしておきながら、トーナメントの一回戦に気の抜けた試合して敗退してくれるなんて、もってのほかの一言、というよりも2年前のW杯とおなじやないかい、ともうなにが原因でまけたかについて語る気力もありません。小生なりの分析はまた後日にします。
しかし、いろんなメディアが一様に語っている「ヒディングマジック」という一言では片付けられないほどの試合内容を見せた露西亜にはあっぱれの一言。アルシャーヴィンというタレントもさることながら、オラニェのお株を奪うような攻撃サッカーには魅力的。明日のスペインとの準決勝の第二試合は楽しみの一言。ここまでオラニェをボコボコにしたサッカーを見せられたからには、個人的には、露西亜に今大会のチャンピオンになってもらいたいと思っています。独逸が大会を制覇するようなことがあってはなりませぬ。もちろん、それだけのサッカーをして独逸はポルトガルに勝ったとは思ってはいるけれど・・・。

今日は2年前のW杯以来ぶりにファンマイル(要するに通り丸ごとがPVの会場になるということ)がブランデンブルク門の前に復活するとかで、今日の夕方から真夜中にかけて人で門の前が埋め尽くされるのは間違いのないところ。2年前も小生は苦杯をなめつづけたがゆえ、日本代表やオラニェ敗退後は歯軋りしながら、独逸人たちの馬鹿騒ぎぶりをスルーしておりましたが、今日もまたこのお祭り騒ぎを目の当たりにするのは小生にとっては屈辱以外に他ならない。
とはいえ、お祭り騒ぎは大歓迎。今日、独逸か土耳古か、どっちが勝っても負けても今日の真夜中前後にはベルリンは天地がひっくりかえるような大騒ぎになることは間違いありませぬ。小生はクロイツベルクにて土耳古人の同僚と観戦予定。個人的にはこの試合、土耳古にがんばっていただきたいとおもっておりますが、まあ、今回は難しいでしょう。トルコは9人も負傷あるいは出場停止ということ。一方で、独逸は、負傷明けのフリングスが戻るか、ポルトガル戦で活躍したヒッツェルスペルガーかロルフェスの二人が器用されて、ポルトガル戦でうまく機能した4・2・3・1の布陣になるかどうか。注目ですが。独逸が土耳古をボコボコにして、クロイツベルクが意気消沈ともなれば、それは気の毒ですが、ベルリンの土耳古人たちはそれでも独逸人とあるいは独逸人として陽気に大騒ぎしてくれることでしょう。今日の晩はほんまたのしみやわー。

では今日の試合お楽しみあれ。では自戒じゃ。

 準々決勝第二試合 土耳古対クロアチア

マイクをもった少年・Berlin-Kreuzberg, Skalitzerstr.

なにがおこったのか全くのみこめたかった。よく見ると、ボールがゴールの中をころがっていて、これがもう終わりかけていた試合の劇的な120分間の最後の数秒ににおこった出来事とは全く信じがたかった。ほんのわずか、一秒にも満たない間、その間だけまるで時間が止まったような感覚、なんとも形容しがたい間を経て、気がついたら周りは天地がひっくり返るような大騒ぎ、小生もいつのまにか隣に座っていたトルコ兄貴たちと机の上にのぼって肩を組んで絶叫している。とりあえず同点なのだ、同点。しかも、延長後半121分ロスタイムの一分はとうの昔に回っていたはずなのだ。よりによって、延長後半119分にクロアチアにとどめのゴールをきめられて、試合はこれでおしまい、お祭りはおしまい、明日からまた普通の日々へ戻るのか・・・、と誰もが思ったはず。これまで陽気に試合をみていたトルコ人たちのしょげ具合をみていると、祭りの終焉といった刹那をはからずも感じとってしまった。2度あることは3度とないか、3度目を可能にするはずだったというのに。ところがだ。現にゴールはきまってしまったのだ、しかも、これまで120分間チャンスらしいチャンスをほとんどつくれなかったトルコが最後の最後で。そうとりあえずそのとき3度目がおこりかけたのだ。そして、こうしてPK戦に持ち込んで4本すべてを成功させたトルコに結局3度目の奇跡が起こってしまったのだ!

PK戦、戦意を喪失したように4本中3本を失敗したクロアチアは今日はつきにめぐまれていなかったといってもいいかもしれない。いや、決定的なチャンスはこの試合のうちになんどあったことか。トルコは90分だけをみれば、勝利に値するチームではなかったし、決定的なチャンスはほとんどなかった。延長戦にはいってトルコが巻き返したけれど、それでも先にゴールをきめたのはクロアチアで、しかも終了間際なのだ。この長かった試合だれもが、ついにクロアチアの勝利を手にした瞬間だとおもったことだろう。それでも、今日の勝者はトルコだった。最後まで彼らはあきらめなかった、このメンタリティーは賞賛されてしかるべきだろう。終了間際の先制点をまもりきれずにゴールを許したクロアチア、だが、それまでに試合をきめるチャンスを逃し続けたのもクロアチアだった。だから、今日のクロアチアの敗北は内容で相手を上回るサッカーをしても、それを結果に結びつけらなかったがゆえなのだ。
とはいえ、最後の2分で先制点をようやくのことであげたて逃げ切ることに成功していれば、苦戦したとはいえ内容では上回っていたという賛辞を贈られていたであろう。実際、どちらがよいサッカーをしたかといえば、そして、チームとしてどちらが優れていたか、と問われれば、それは間違いなくクロアチアだった。ルカ・モドリッチはこの試合でこれから将来的にヨーロッパを代表するプレーヤーになる可能性を示したし、この試合のあらゆる場所に顔を出した。クロアチアの各選手は技術面でもトルコの選手をうわまっていた。抜け目のない試合運びで相手を上回る試合内容をみせたのは独逸戦と同じだった。
そう、クロアチアは独逸戦でもそうだったのだけれど、ポルトガルやオランダような特に早いパス回しをするテンポのある美しいサッカーをするチームではないようにみえる。けれど、スペースの突きかたがうまい。あまり動いていないようにみえるが、FWのオリッチやサイドのプレーヤーを中心としてフリーランニングやパスの質はかなりのものだ。チームのゲームに対する共通の理解というものが確立されているゆえだろう。そして、試合のテンポのつけかたはまるでブラジル代表のようだ。グループリーグの第二試合独逸は中盤がクロアチアに対して先手をとる前に封じられてしまっただけでなく(逆にポルトガル戦ではそれを取ることに成功したが)、完全にこのテンポの暖急という点で完全に手玉にとられてしまった。二失点を喫してしまったシーンは完全にディフェンスを崩されての言い訳のできない失点だった。クロアチアはトルコ戦でもきめなければならないシーン、しかし、完全にディフェンスを崩しての決定機をそれこそ前半後半に一つずつつくりだしてはいる。それに引き換えトルコはそういうシーンを120分間最後の得点シーンをのぞいてただの一回も作り出せなかったといってもよい。
クロアチアはメンバーは2年前のW杯とそれほどかわっているわけではない。クラニチャールや日本戦でPKをはずしたスルナやコヴァッチ兄弟だってまだまだ健在だ。チームとしての熟成がましたということか、モドリッチラキティッチ、ペトリッチを軸に世代交代をすすめつつ。この変わりようは、日本代表の進化のプロセスがオシム退任とともに停滞したかのようにみえるのとは正反対だ。
でも勝ったのはトルコだった。実際総じてみるべきもののない試合だった。いい試合とはいいがたかった。120分ハラハラドキドキする以外にはなにもなかった(それだけですでに心臓にわるい)。でも、試合をみている観衆だけでなくこうして対戦相手をあわて吹かせるような心理ゲームに持ち込んだこのスイス戦ふくめた3試合すべての逆転に持ち込んだ試合終盤のトルコの攻撃は見事だった。実際、すべての試合で先制点を許して、切羽つまった上での逆転劇。スイスにしろチェコにしろ、そしてクロアチアも、この心理ゲーム、ある種の根競べに敗北したといってもいいかもしれない。トルコはこれまでの試合で似たような状況で試合をひっくり返してしまったということを、相手は忘れられないはずだからからだ。その点で、クロアチアの若いチームはトルコに同点ゴールを喫してしまった後のPK戦では完全に浮き足立ってしまった。四本中三本もはずしてしまったことが彼らがいかに追いつかれたあと冷静でいられなかったことを物語っている。そういう意味で、この試合についていえることは、最後に待っていたドラマをみるのには、これ以上ない120分だったということだ。

Berlin-Kreuzberg, Cafe Morgenland


試合終了後は僕が見ていたクロイツベルクのGeorlitzerbahnhofの近くのレストランのみならず、界隈全体がお祭り騒ぎを超えた熱狂が渦巻いた。ただのお祭りならクロイツベルクにはことかかない、5月1日のメーデーやそして同じ五月のカーニヴァルやら。しかし、この試合街を支配した喧騒はそれとは一種異なるものだった。トルコの三日月の旗を持った人々や車の窓やルーフから旗を振る人々の姿やクラクション、拡声器で声にならない喜びの叫びをあげるトルコ兄貴たち、歌う人たち、踊る人たち、などなどで埋め尽くされた通りは小生がこれまで見たことがないようなベルリンの姿だったかもしれない。図らずも、小生が試合の前に期待していたような「日常」の転覆が実際に起こってしまいかねないような熱狂がどこからともなく沸いてくるのを感じざるをえなかった。

Berlin-Kreuzberg, Oranienstr.


路上で狂喜乱踊するトルコ人たちそばには、独逸人をはじめとしたいわゆる「部外者」もたくさん通りにいたけれど、あーあー、ついにこいつらやっちまったよ、と苦笑いとをうかべつつ、少しそのお祭り騒ぎに少し加わってみたそうに遠まわしに彼らを眺めている。実際小生が試合終了後、うろうろしたクロイツベルクのOranienstr.やKottbussertor(コトブサ門)付近はそういう人たちの姿がむしろ多かったかもしれない。独逸人はおとついの試合の後、確かに通りに繰り出してポルトガル戦の勝利の喜びに浸っていたけれど、どこか自分たちで抑制しているような感じでもあった。喜ぶのは優勝してから、という風にも思ってるのだろうか。それはともかく、警察のお世話になるほど暴れてビール瓶を通りに割って散らかすような連中を目の当たりにして、こいつらは本当にどうしようもないな、と思う一方で、街全体がそうだったのでは決してなく、平日だったということもあって、大半の独逸人は意外にすぐに家路についているような気がしたけれど。ベルリンにしては珍しくお行儀のよいことではありましたが。

Berlin-Kreuzberg, Oranienstr.


それよりも、多くの独逸人が苦笑いを浮かべる理由の一つは、ベルリンだけでなく、独逸にいる人間であれば誰もが思い当たる話だ。水曜日に準決勝の第一試合があるのだけれど、周知の通り、これで独逸対トルコのカードが現実のものになったからだ、誰もが期待していた通り(??)。それよりも、これから水曜まで警察は頭が痛いに違いない。独逸が勝っても、トルコが勝っても、買った側に関係なく、水曜日は試合後大騒ぎに決まってるからだ。ともあれ、独逸がポルトガルに勝って、トルコがクロアチアに勝って、準決勝の勝者いかんにせよ、ベルリンではお祭り期間が延長されたようなものだ。このお祭りは結果的に、サッカーのヨーロッパ選手権の終わりまで続くことになった。多分、多くのベルリナーが望んでいたように。

Berlin-Kreuzberg, Oranienstr.


Radioeins曰く、昨日は西のベルリンのクーダムだけでなんと50000人がトルコ戦後通りにくりだしたそうな。KottiとGoerliの周辺であれほどの人がうめつくしたわけだし、町中で似たようなお祭り騒ぎが繰り広げられたことを考えると、街全体ではそれ以上の人々が通りへ繰り出したということは想像に難くない。しかもあれほど雰囲気が高揚したベルリンを経験したのははじめてだったかもしれない。2006年のW杯のときもそうだったのかもしれない。でも、小生は素直に楽しむ気もなかったから、実際どうだったのか記憶にない。最後のジダンの頭突きをみて当分サッカーはみまいとおもったほどなのだ。かと、思えば2002年のW杯のとき、東京にも似たような雰囲気が支配したのを覚えていなくもない。新宿のコマ劇場前の広場でもいまから思えば似たような熱狂ぶりだった。でも、通りに飛び出して歓喜にくれている人々をみていて、サッカーされどサッカーはすごいなあ、といまさらながらに月並みだけれど、今日もサッカーが好きでたまらなくてよかったと思った瞬間だった。と同時にふとおもったのだけど、89年に壁が落ちたときもこんな感じだったのだろうか。いやいや、比較の仕様がないだろうか。どのみち知りえないことだが。

Berlin-Kreuzberg, Adalbertstr.・Cottbussertor


クロイツベルクからの帰り道、東ベルリンの我が家に帰る道筋は非常に静かだった。金曜日なのに、いつになく。やっぱり小生は東ベルリンにも愛着はあるけれど、いつでもクロイツベルクが小生の中の「ベルリン」なのだ。

Berlin-Alexanderplatz,


今宵はオラニエ対ロシア。苦戦か完勝か。真価の片鱗をみせてもらいましょう。Hup Holland!
写真はここから。
では今日もまた自戒。

 準々決勝第一試合 独逸対葡萄牙

最近さっぱり更新できていないけれど、まだまだルーマニア話もつづけるのでしばしお待ちあれ。

Maedchen Internat, Berlin-Prenzlauerberg - 12.6.2008


さて。サッカーのヨーロッパ選手権がはじまって明日で2週間がたとうとしてますけど、しかし、今回はほとんどPV(パブリックヴューイング)で、家の外でほとんどの試合をみているので、自分の中では毎日お祭り状態です。まあ、ワールドカップもいれたら2年に一回のサッカーのお祭りなのでさもあらんとは思いますが、このお祭り状態が永久永劫続いてくれるといいなともおもうのですが、そうもいかないでしょう、それがおまつりという、日常に潜在している非日常が目覚める瞬間というやつなんでしょうがね。

長いこと更新していなかったので、今日の一枚。
Johann Sebastian Bach: Die Kunst der Fuge - Pieere-Laurent Aimard,piano (Universal)


すばらしいです。はい。古典もうまいのですね、この人は。昔、京都でメシアンのトゥランガリーラ交響曲をきいたときにピアノ独奏をきいたことがあるけれど。この前ベルリンはYellow Loungeというクラブでクラッシクをかけるというイベントに登場していてなかなか気のきいた演奏やトークをしていましたが。(その模様はベルリン中央駅さんのブログをごらんあれ)

ところで、EM(独逸語でEuropameisterschaftの略称)がはじまったというのに、なにも書いていないのはけしからぬ、総括しろ!とのお叱りのお言葉をまわりからいただいたので、対戦チームの試合のグループリーグでの戦いを小生なりに総括しながら、試合をいかにたのしんだが、という視点で書いていこうかと思います。長くなるかもしれませぬが、おつきあいあれ。

で、昨日は決勝トーナメントの第一戦、準々決勝の第一試合、独逸対葡萄牙の試合。

グループリーグ最後の試合、ホスト国のスイスにテストの陣容であまりにもなさけない試合をして開催国に初勝利をプレゼントしたとはいえ、最初の二試合でトルコ、チェコに隙のないサッカーをしたポルトガルは、デコやロナウドだけでなく各ポジションに現在のヨーロッパでもピカ一のタレントをそろえて、悲願のヨーロッパチャンピオンのタイトルを狙うにふさわしい陣容をそろえてるといってもよい下馬評をグループリーグが終わった時点では獲ていたといってもよかった。個人的には、グループリーグが終わった時点で、88年のユーロを超えるかもしれない陣容と試合内容でグループリーグを全勝してきた我がオラニエことオランダが優勝候補の筆頭、そして、ポルトガル、そしてスペイン、それにクロアチアを加えて4強候補に押していましたが。

それに対して、独逸は初戦ポーランド相手に吹っ切れたサッカーをしたにもかかわらず、クロアチア相手に不甲斐ない試合をして敗れた上(この試合のクロアチアが非常に中盤をコンパクトにして、バラックフリングスに仕事をさせなかった上、ドイツの弱点であったサイドを完全に攻略したのが大きかった)、最終戦オーストリア戦はバラックのセットプレーからの一得点のみで辛勝といったありさま。グループリーグで非常にぎりぎりの試合をして勝ち抜いてきた独逸がどれだけ好調の葡萄牙に相対せるか、それが注目の一戦といってもよかった。オラニエファンの小生は、もちろん、アンチ独逸に力がはいったものの、決勝でオラニエが独逸を打ち破って88年のユーロ以来の優勝を夢見ている小生としてはまだまだ敗退してもらっても困る、というような複雑な心境で試合観戦に望むことに。

さて。立ち上がりは独逸が出足の早いプレスをかける。そしてボールポゼッションでも独逸が上回る展開。この時点で、グループリーグでの不調はどこえやら、の出足のよさ。独逸のアキレス腱はもちろん、サイドとディフェンスにあるのだけれど、中盤での早いプレスではやいパスワークでポルトガルを自陣から遠ざけることに最初の15分では成功する。ドイツは、フリングスを肋骨の骨折で欠いた上、前3戦で先発した不調のゴメスを見切って、クローゼをワントップ気味に起用して、その横に出場停止からもどったシュヴァインシュタイガーポドルスキーとならべた上で、その3人が縦横無尽にポジションチェンジをする、前二戦にはなかった流動性を前線に作り出す。その上で、バラックをトップ下気味において、ひとつ前のポジションにあげた上でオフェンスに集中させたこと、そして、怪我のフリングスの代わりに、ユーロの予選でも活躍した、大会初先発のヒッツェルスペルガーとロルフェスのダブルボランチにした4-2-3-1の布陣が立ち上がりおもしろいようにはまる。ポルトガルもだんたんとボールを持つようになるが、前に試合にあったポゼッションとパスワークをなかなか出せない。中盤でポルトガルの特徴を封じることによって、独逸はデコ、ロナウド、シマンといったポルトガルプレーメーカーになかなか仕事をさせない。
こうした展開で独逸に先制点が生まれる。左サイドで、ポドルスキーバラックとのワンツーを起点にしてサイドを突破して入れたグラウンダーの早いクロスを、出足の早いスタートでマーカーのパウロ・フェレイラを振り切ったぬけでたシュヴァインシュタイガーが、スライディングで蹴りこむという、これぞ、サッカー!という美しくスピーディーな得点シーン、これには敵ながらうならされました。そして、その直後の2点目はセットプレーから生まれる。ポルトガルのゴール前で致命的といもいえるオフサイドトラップの掛け損ないから抜け出たクローゼが十八番のヘディングで今大会初ゴール。思えば、ポルトガルは攻撃面では注目されていたチームだったけれど、グループリーグでは露呈しなかったディフェンス面の弱点がこの試合の最初の30分で露呈してしまったようにも思える。それまでの3戦では、圧倒的なボールポゼッションで勝ち抜いてきたにもかかわらず、この試合では、最初の20分で独逸に中盤を制圧され、おもったようなパス回しとデコが思うようにボールをもてない、ということもあって、これまでみられたような流れるようなパス回しのサッカーを最初の20分だせなかった。そして、自分たちのサッカーを封じられているうちに、先制点を許してしまうことに。
シュヴァインシュタイガーの先制点は、ポドルスキーが左サイドで抜け出してコンビネーションプレーもさることながら、ポルトガルディフェンダーの一瞬のマークミス(ほんの一秒あるかないかの差が勝負をわけたといってもいい)をついたうえで、マーカーを振り切ってあの早いパスをゴールに押し込んだシュヴァインシュタイガーのプレーは賞賛に値すると思う。そして、クローゼの二点目で、ポルトガルは、グループリーグでは露呈しなかったセットプレーに対する弱さを完全に露呈させてしまった。独逸は、前二試合にはなかった中盤での勤勉さを取り戻したことで、立ち上がり中盤の制圧に成功したこと、そして、得意のセットプレーでの強さと高さによって二点リードに持ち込んだ。独逸は自分たちのサッカーをすることによって、立ち上がりの30分間で2点リードに成功したのだといってもいい。この出足の早さはこのようなビッグトーナメントでは相手に心理的なプレッシャーを与えることができる。そして、ポルトガルは自分たちのサッカーができないうちに、弱点をつかれた。それが2点ビハインドの展開につながったのだろうと思う。とはいえ、前半終了間際にロナウドがドイツDFを自慢のドリブルで振り切って放ってレーマンにはじかれたシュートをヌーノ・ゴメシュが押し込んで一点返すことに成功する。段々とポルトガルが自分たちの色を取り戻そうとするところでハーフタイムへ。試合の行方はまだまだわからないことに。
そして後半。ポルトガルは開始当初は出足よく攻めることには成功する。一点を争う展開になるかとおもいきや、独逸は再びセットプレーからバラックが三点目をあげることに成功する。確かに、よくみると、ポルトガルスコラーリ監督が再三いっていたとおり、バラックパウロ・フェレイラをおしているけれど、セットプレーではこれぐらいのボディーコンタクトはさけられないもの。ファウルはファウルだけれど、これもサッカーのうちではある。まあ、審判に助けられたといってもいいようなシーンだったが、またしても独逸がセットプレーで一点を追加する展開で、ポルトガルはこれで完全に冷静さを失ってしまう。独逸はその後、引き気味になって、次々とディフェンスの選手を投入して、試合におちつかせつつふたをしようとする、一方で、ポルトガルは交代したナニを中心にミドルシュートで攻めるが、攻撃に正確さを欠いてしまう。終盤はポルトガルが一方的にせめて終了間際にポスティーガがヘディングで一点を返す。この失点は独逸にとっては集中力を欠いたあまりにもいただけないシーンだった。ポルトガルは残り数分で、三点目を狙いにいったけれど、時すでにおそし。それどころか、ロスタイム終了間際に、独逸はまえががりになったポルトガルの裏をついて、4点目の狙えるシーンを作り出すが、正確さをかいてゴールならず。これで試合はおしまい。

総じて、ポルトガルにとっては、ドイツに、グループリーグで出せた自分たちのよさを消された試合でもあった。ポルトガルは、グループリーグの試合をみた人ならわかると思うけれど、スピード感のある美しいパスサッカーを前面に出す。その特徴はもちろん攻撃にある。もちろん、なかなかその特徴をだせずに敗退してしまうことになるののが、ビッグトーナメントの宿命であるのだけれど、ポルトガルにとっては悔いの残る試合になったしまった。中盤の鍵であったモウティーニョが負傷交代する不運もあった上、攻撃陣が今日はほぼ沈黙してしまった。ロナウドは先制点に絡んだけれども、動きにとぼしく、試合から総じて見るべきところはなかったし、後半はほとんど「消えて」いた。その中でも、デコと右サイドバックボジングワは奮闘していたと思う。デコは中盤を縦横無尽にかけめぐって、今シーズン所属チームであるバルセロナでは不調におわったらしいけれど、まだまだ衰えをみせるどころかヨーロッパ最高峰のプレーヤーの一人であることを、彼は証明して見せたように思える。けれど、チーム全体では、独逸に完全に攻略されてしまったディフェンスを含めて、今日はいい試合をしたとはいいがたかった。デコ一人ではどうしようもなかったし、大会前からマスコミにちやほやされつづけたロナウドは本調子になく完全にそのチームとともに沈没してしまった。ビッグトーナメントではサッカーは一人でするものではない、今日はポルトガルはチームとして優れているとはもちろん思うけれど、この試合の90分の間に、トーナメントを戦うチームとしては優れていることを証明した独逸が勝ったのは必然だった。なによりも、今日は独逸のこれまでのサブ組みだった選手たちが出場して活躍したのだから。選手層の暑さということもこの試合はものをいった。
ドイツにとっては、時に一本調子になりがちではあるけれど、自分たちのサッカーをすることによって、終了間際の集中力の欠如による失点は予定通りというか、いつもどおりかもしれないけれど、そのことによって勝ち取った勝利だと思わなくもない。特に、ドイツのような闘志を前面に出すようなサッカーはトーナメントのような一発勝負の舞台では抜群の強さを示すことをわすれてはならない。それはそれでサッカーというスポーツの一面であるし、なによりも独逸サッカーの強さだろう。日本のマスコミが作り出した「ゲルマン魂」(独逸では一度もこの言葉はきいたことはない)という言葉に象徴されるような一面だ。そのような精神性はもちろんサッカーのような重スポーツでは大きな役割を果たすことには小生は異論はないし、自身サッカーをやっている経験からすれば、それがなければやっていけないスポーツであるというのは間違いないように思う。独逸にはそれができて、ポルトガルはできずに自分たちのサッカーをだせずに不完全燃焼で大会をあとにする。ポルトガルのサッカーにドイツのような、そして、今大会ならば、トルコのような終了間際に3点差をひっくり返すようなサッカーを期待しても、なにかが違うと小生はおもわなくもない。そうする状況に追い込まれたポルトガルが負けたのは、試合の流れからすれば必然だったともいえるだろう。特に、一発勝負のビックトーナメントではそんなものだ。
ただその点が、なによりも、小生が独逸代表のサッカーが嫌いな理由のひとつなのだ。グループリーグでの独逸のだらしない節操のないつまらない試合を見たあとで、昨日のような試合を見るのはスリルがあるかもしれないけれど、応援するには心臓に悪いし、小生はそういう節操のないサッカーをみるのは好きではないのだ。もちろん、昨日の結果からして、独逸がグループリーグでは最小限のサッカーをして勝ち抜くサッカーを目指したのだとすれば、作戦としては間違いのないことだ。仮にそれができたとしても、それはなによりも独逸のグループがそれができる対戦相手ばかりだったということだ。そう、くじ運も実力のうちだということ。ただ、独逸代表はそんなイタリア人のように器用なサッカーができるチームでは断じてない。クロアチア戦は初戦がうそのようなさえないサッカーをして敗北、オーストリア戦などは、対戦相手をはなからなめて、相手の決定力のなさにも助けられて、辛勝というようなサッカーは、結果だけみたら綱渡りでスリリングだけれど、見世物として面白みがないし、サッカーをやっている身としては、反面教材にはなる以外に学ぶべきところはない。それが独逸代表、実にいつもどおりと思いながら、グループリーグの三試合を見たし、と同時に、ポルトガル戦は、これまでの2試合とは違う試合になるだろうとはおもっていたが、結果と内容もみても、スコア以上に今日は独逸がいい試合をしたともいえるだろう。仮に今日のような試合をあと二戦独逸代表が続けるなら残りの大会を盛り上げてくれることは間違いないことだけは認めざるをえない。
それでも、小生は、自分たちの追求するサッカーの美しさのために死ぬる、というような美学に貫き通されたオランダサッカーのほうがやっぱり大好きである。現にグループリーグでもまったく手を抜かずにグループリーグの試合を全勝して合計9つも相手側ゴールに叩き込んでしまうオラニエOranjeはやはり最高だ。この後先考えない攻撃サッカーと、自分がサッカーをするのに参考材料にするには次元が違うけれど、強さは本当に気持ちがいい。サッカー観戦というエンターテイメントとしても最高だ。オランダは決勝トーナメントのことを考えていたらルーマニアに試合をプレゼントしてもよかったというのに。そうすれば、準決勝で再び合間見えることになるかもしれないフランスのみならずイタリアをそれぞれ家路につかすことだってできたのだから(仮にルーマニアが勝ち進んだとして、スペインと対戦することになったとしても、勝ち抜くことになるのはもちろんスペインだとはおもうけれど)。そうすることによって、宿敵ドイツからも喝采を受ける機会もあったはずなのに。ところで、W杯での準決勝敗退の遺恨からか、とにかく独逸人は二年前のW杯以降ものすごいアンチ・イタリアだ。オランダがイタリアを3−0でボコボコにした試合でも、オランダが得点するたびに大喜びしていたほどである。それをぬきにしても、小生はイタリアサッカーは選手の質はともかくとして、サッカー文化は独逸サッカーよりも大嫌いである。それでまあ、それを、馬鹿正直に、打算抜きに、勝ち抜きの機会があったルーマニアを失望の淵に突き落としてしまうとは、なんというサッカー馬鹿なのだと思う。しかし、このサッカーだけに集中する、しっかりと試合をする、自分たちのサッカー美学を追及して勝利へまい進する、この点でオラニエはやはりフェアなチームだ。結果として、ルーマニア戦で命拾いしたイタリアを救うことにもなった。そして、ルーマニアはイタリアにとどめをささなかったために、グループリーグ突破の千載一遇のチャンスを逃してしまった。これは、フランス戦はともかくとして、イタリア戦のサッカーの内容からしルーマニアにとっては残念なことだったとは思うが・・・。

大騒ぎする独逸サポータたちをみつめる人たち - Frankfurter Tor, Berlin-Friedrichshain 19.6.2008


小生は独逸代表が決勝戦でオラニエと対戦してコテンパにやられるのをのぞんでいるから、そして、独逸が敗退してしまって、ベルリンでこのユーロのお祭り騒ぎが終わってしまっては日常生活がつまらなくなってしまうと思っているので、独逸がまだトーナメントに残ることは素直に歓迎したいのだけれど、昨日独逸代表が勝って試合がおわったあとのベルリン市内の騒ぎようを見ながらムラムラと独逸代表に対する不快感と昨日のお祭り騒ぎの独逸人たちに対する嫉妬心とが沸いてくるのを感じてしまった。不快感はともかくとして、この嫉妬心はなんなのだろうかと思ったのだけれど、やはり、これはオラニエに決勝までいってもらわないことにはどうしようもないというか、我が日本代表もとい日本サッカーの発展以外には結局のところしょうがないのかなとも思ったりもする。それはともかくとして、明日のロシア戦は我等が宿敵フース・ヒディンク率いるロシアを我がオラニエが一蹴することを切に願います。ロシアもいいチームだと思うけれど、今のオラニエの敵ではないということを証明してほしいと思いますわ。

ていうか、今日はトルコ対クロアチア。クロイツベルクで観戦予定。トルコが勝てば、準決勝ではなんと独逸と対戦。そんなことにもなれば、ベルリンは戦場になるかもしれない。ベルリンという街の「日常」をつきやぶる何かが見たいと願うのは小生だけでしょうかね。というわけで今日はおしまい。また自戒じゃ。

あんたは天才だ。

Frederic Chopin:Preludes−Ivo Pogorelich (Deutsch Grammophon 1990)

マルタさまのおっしゃられるとおりこのお方は本当に天才です。最近は家にいるときは本当にこればっかりきいております。

それよりもすごいのがこのポゴ様のこのショパンコンクールでのピアノソナタの二番の演奏。特に、服装といい髪型といい演奏中の髪の揺れ方といい神ががりかけております。

以上、おしまい、また自戒。