Hatena::ブログ(Diary)

断想録

2012-09-06

拙著『ハクティビズムとは何か』についてご意見、ご指摘を頂戴しました。

17:54

ハクティビズムとは何か――ハッカー社会運動』に関して、いくつかのご意見、ご指摘をいただいております。私としては、ハクティビズムや周辺の議論の盛り上がりに本書が少しでも貢献できればと考えており、ご意見をいただき大変嬉しく思っております。

特に山根信二さん

http://about.me/syamane

Twitter : @shinjiyamane からはWinny事件のその後についてなど、多くの事柄について大変丁寧なご指摘をいただきました。いろいろと参考資料なども頂戴したので私の見解もはさみつつ、以下にまとめて記述させていただきます。

Winny事件について

Winny事件は2011年末に金子氏の無罪が言い渡されて事件は終わりを迎えました。拙著では開発者の金子氏がネット上に書き込みした言葉を引用し、金子氏の政治性について言及しました。金子氏の書き込みも影響してか、Winny事件では当初検察が、金子氏は著作権の崩壊を目論む政治的テロリストである、という趣旨の見解を持っておりました。


とはいえ、裁判では金子氏側はWinny開発に政治的意図はなかったと述べ、また法廷においても検察側が主張するような、金子氏が著作権の崩壊を目論んでWinnyを作成したという主張は却下されています。したがって、裁判では金子氏の政治的意図については棄却されています。単純に知的好奇心からWinnyをつくったということです(実際に金子氏がどう思っていたかはわかりませんが、裁判における判決は、今後の裁判における判例にもなるので非常に重要です)。拙著ではこうした観点からはWinny事件を描けなかったので、今後の著作では触れていこうと思います。


もちろん、Winnyは製作者の意図とは無関係に社会的に大きな問題になったことは間違いありません。理由はどうあれ、DeCSS以上にWinnyは、社会の仕組みを変革(=ハック)し得る力をもったツールでした。


ここで注目すべき問題は、そうしたツールをめぐる法的問題です。Winnyは社会をハックし得るツールでしたが、その力が大きければ大きいほど、既存の体制と大きな対立を生じさせます。検察としては何としてもツールの製作者を逮捕しようと考えます。また実際に違法ダウンロードの刑罰化など、昨今の日本における著作権強化の方向には、Winnyの衝撃が間接的に影響を与えていることは間違いないでしょう。


すると、ハクティビズムを研究する立場としては、実際に新たなツールが社会に登場したとき、それが政治的な意図を持っているか否かといった論点と同時に、それが法的にどのような問題となり、実際の現場ではどのようなリアルな駆け引きが生じているかなど、より現場に近い立場から現実を把握する必要があると感じました。


Winny事件については、拙著で記述した以上に奥深い問題が山積みになってます。ハッカー過激派テロリストとみなす検察の立場や現場の問題についても、もっと研究の手を広げるべきであると、Winny事件の詳細をみて感じます。ハクティビズムの論理だけでなく、その実際の現れ方やあり方などより現場に近い問題は、今後の研究課題にしたいと思います。

参考:壇弁護士の事務室(Winny事件における金子氏の弁護士ブログ

http://danblog.cocolog-nifty.com/index/winny/index.html


■DES暗号について

拙著63頁で言及したルシファーはもともと128ビットと記述してありますが、実際は他のビット数のバージョンも作成しておりました。そして、IBMが標準規格をめざした製品版のルシファーは64bitであったとのことです。そこからさらに政府の指示で56ビットにしたのです。ですので、正確には、「IBMは128ビットではなく64ビットにしたルシファーを、さらに56ビットにした」、というのが正確な表現になります。


ベータマックス事件について

拙著では意図しない形で政策無効化が行われたと論じたこの事件ですが、ソニーにはユーザーの自由を求める姿勢があり、裁判が進む中でソニーは、日本では著作権的に問題とされていなかったベータマックスの「タイムシフト機能(番組を録画して好きな時にみること)」を、アメリカにも普及させる意志があったとのご指摘がありました。詳しくはソニーHPに記述があります。

Sony History」

http://www.sony.co.jp/SonyInfo/CorporateInfo/History/SonyHistory/2-20.html#block6

上記のサイトの記述にある以下の言葉が象徴的です。


「この家庭用VTRの問題は訴訟裁判という特定当事者間で決着するのではなく、立法で決着すべき本質的な命題を含んでいる」と盛田は確信した。ソニーにとって、法の遵守は基本姿勢だ。しかし、裁判がよりどころとする既存の法がおかしい、あるいは足りない時には、訴えていく必要もあるという信念を彼は持っていた。


盛田とはソニー創業者の一人である盛田昭夫です。ユーザーの自由を守り、時に法の変革をも視野に入れて活動するソニーの姿勢こそが、世界中からソニーが尊敬される点でもありました。昨年のアノニマスによるPSNへのDDoS攻撃の背景には、ユーザーの自由を守ってきたソニーがユーザーを訴えたことに、彼らが怒りと失望を持ったという点が指摘できます。逆に言えば、それほどまでソニーは尊敬されていたということです。

ライフゲームについて

ライフゲームはゲームの名がついているが、実際にはほとんどゲームではなく、拙著150頁で言及したFolditのようなゲーム性はないとのことです。ゲーム研究者のジェスパー・ジュールの以下の発表を山根さんから教えていただきました。

「ゲーム, プレイヤ, ワールド : ゲームたらしめるものの核心を探る」

http://www.jesperjuul.net/text/gameplayerworld_jp/


他にもいろいろとご意見やご感想いただきました。大変参考になりましたので、今後の私の仕事に活かせていければと思います。


Winny事件に関しては、拙著では一方的な観点からの議論になってしまいました。誤解を与える書き方となってしまい申し訳なく思っております。またベータマックスの一件によっていかにソニーが世界に影響を与えたかを改めて再認識しました。


ご指摘をくださった山根さんに感謝申し上げます。

ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動 (SB新書)

ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動 (SB新書)

2012-08-20

8/23日、新宿ロフトプラスワンのイベントに出ます

| 21:14

新宿ロフトプラスワンのイベント

日本アノニマス超会議!!

が8月23日に開催されます。そこに僕も出演することになりました。

http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/schedule/lpo.cgi2018年6月スケジュール

こちらのページから23日にたどっていただくとあります。

以下イベント内容をロフトプラスワンさんから引用


日本支部が正式に設立され、いよいよこちらでも本腰を入れた活動が期待されるアノニマス。とはいえ一般的にはまだ知名度は低く、名前を聞いた事があるという人にも「テロリスト?」「左翼活動集団?」「海外の2ちゃんねらー?」「何でゴミ拾いしてたの?」等々とイマイチ本来の活動指針とは離れた印象を持たれているようです。

そこで日本人でアノニマスに詳しい専門家の方と「実際どうなの?」を分かりやすく伝えるイベントを開催!

【出演】

辻 伸弘(NTTデータ先端技術株式会社 セキュリティ事業部)

根岸 征史(株式会社インターネットイニシアティブ セキュリティ情報統括室)

井上トシユキ(ジャーナリスト

塚越健司(一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程)

他、anonymous Japanメンバーの登場も!?


ということです。辻さん、根岸さんには昨年からアノニマス関係でお世話になることも多く、一緒にイベントに出られることになって嬉しいです。井上さんも以前からラジオ等を拝聴させていただいており、また一度お会いしたこともあります。

密度の濃いイベントになること間違いなし!ぜひぜひお越しください。

あと、本日『ハクティビズムとは何か――ハッカー社会運動』が発売されました。こちらもよろしくお願いします。

ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動 (SB新書)

ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動 (SB新書)

2012-08-15

はじめての単著『ハクティビズムとは何か』を出版します。

| 01:14

宣伝ですいませんが、8月20日に、私はじめての単著

ハクティビズムとは何か――ハッカー社会運動』がソフトバンク新書から発売されます。

ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動 (SB新書)

ハクティビズムとは何か ハッカーと社会運動 (SB新書)

話としては、1950年代後半に誕生したハッカーの歴史を辿ることで、ハクティビズムの誕生と現在のハクティビズムの活動について論じております。

これまで研究してきたウィキリークスアノニマスについてはもちろん、ハクティビズムと市民的不服従の関係など、副題の通り社会運動との関連でも論じております。

ハッカーって何?という人はもちろんのこと、アノニマスや、ハクティビズムに興味のある方々に読んでいただければ幸いです。専門書ではなく一般書ですので、大学生さんや会社員、主婦の方など、というかすべての人に読んでほしいです!

これまで共著や編著はあったのですが、単著ははじめてになります。感想としては、単著って本当に難しいということを実感した!に尽きます。根気よく付き合ってくださった編集者に感謝です。

ではでは、よろしくお願いします

2012-06-21

アサンジの亡命について[追記あり]

23:27

■アサンジの亡命

 昨年のスウェーデンにおける性的暴行等の罪が問われているアサンジが、エクアドル大使館亡命申請をした。現在ロンドンに拘束されているアサンジは、裁判で既にスウェーデンへの移送が決定している。

 スウェーデンに移送後はアメリカに移送→おそらく拷問の後殺される、と考えるアサンジは、欧州人権裁判所への訴えという最終手段に出るまでに、亡命を考えたようだ。今回の事件の概要は以下のブログが参考になる。

http://blog.livedoor.jp/takosaburou/archives/50669719.html

http://blog.livedoor.jp/takosaburou/archives/50669861.htmlロンドン警視庁「エクアドル大使館を出たらアサンジ氏を逮捕する」 #ウィキリークス : DON

 ちなみにエクアドルとアサンジには、彼が主演するロシアのRTという番組でエクアドル大統領にインタビューした縁がある。現在進行形のニュースだが、その他チュニジア亡命を支援する旨が伝えられと同時に、仮に亡命が却下されれば、決められた場所で夜を過ごさなかったアサンジは違法とのことで、ロンドン当局にアサンジが捕まるのでは、との報道もある。

http://www.guardian.co.uk/media/2012/jun/21/julian-assange-ecuador-decision-asylum


■権力の象徴

 あまりブログを更新しない私がブログを更新したのは、この亡命がアサンジという反権力という象徴的「権力」の偏りが明確化しかねないからだ。

 アサンジ、というよりウィキリークスは、武力を持たない小規模組織として、アメリカ政府に動揺を与えた数少ない組織の一つである。国際舞台におけるプレーヤーとしてカウントされている、といってもいい(すでにそこまでの力はないとも言えなくもないが)。

 なぜか。ウィキリークス2011年1月のインタビューで、米国の某大手銀行の膨大な内部資料を公開準備中であると発言した。するとすぐに当該銀行が米「バンク・オブ・アメリカ」であることが濃厚であるとの報道が世界中を駆け回り、翌日の「バンク・オブ・アメリカ」の株価が三・二%急落した。

 資料の公開は諸々の事情故に結局公開されなかったのだが(一説には、ウィキリークス元No.2のダニエルが、ウィキリークス脱退前後に情報を盗み廃棄したとの情報もある)、彼の一声がいかに権力を持ちえるかを示す好例である。権力を「行使」する側にも身を置くアサンジの存在は、すでに反権力の「アイコン」だ。

■各国の思惑

 なぜアサンジはエクアドルを選んだのか。もちろん先に述べた番組による縁があるからだろう。また、2010年に一度エクアドル政府から亡命の打診があったようなので、今回もエクアドルからの打診ではないかとの推察もできる。

 また、反米志向のエクアドル反米のアサンジを引き込めば、アサンジの「アイコン」的権力が発揮され、自動的にエクアドルのスタンスをより明確に現すことができることにある。そして同時に、情報の透明性を訴えるアサンジを引き込むことは、エクアドルにとって、自国のクリーンさをアピールすることにもなるが故に、まさにエクアドルにとってアサンジの亡命は一石二鳥だ。

■中立性という幻想

 問題はエクアドルの政治的戦略ではなく、ウィキリークスの今後のスタンスにある。あらゆる国家・企業から中立であるために、彼らは特定の団体からの支援は受けず、募金のみで活動を継続してきた。アサンジがここでエクアドル政府のお世話になってしまえば、エクアドルおよびエクアドルに関連のある国家の不正は公開できない。そうでなくとも、アサンジに政治色が付与されることで、今後のウィキリークスに対する、中立性というイメージは消失し、偏った権力のイメージが定着する。すでに外交公電の頃から偏っているといえばそうなのだが、今回の事件は決定的である。

 ダニエルウィキリークス暴露本ウィキリークスの内幕』の中で、彼の独裁的かつ恣意的な情報公開の方法に問題があることを指摘した。アサンジがよりインパクトのある、またアメリカに特化したリークを連発したことで、ダニエルウィキリークスと手を切った。それはジャーナリズムとして中立ではないからだ。

 アメリカへの固執は、ウィキリークスという組織の中立性という方針を傷つける。もちろん最初からウィキリークスがそうだったわけではない。あまり知られていないが、過去にウィキリークス中国関連のリークとして、検閲によって公開禁止になったチベット関連の画像、動画を公開している。また創立メンバーの中には、アドバイザーとして中国民主化運動家の名も連ねられている(実際どの程度ウィキリークスと関係したかに関しては不明)。

 だが、亡命が実現すれば、間違いなくウィキリークスの中立性の看板は外され、またウィキリークス自体が自由な発言をできなくなる、少なくともそう世界から思われてしまう。これはウィキリークスにとって良いこととは思えない。

 もちろん、アサンジも切羽詰っていたのだろう。仕方がないといえばそうだ。しかし、形はどうあれウィキリークスの信頼性にヒビが入ってしまった感は否めない。

 ※なお、ブログ執筆時点ではまだ亡命の結果はでていません。ハラハラ。

[追記]

ブログを更新してから、早速宮前ゆかりさん(@MiyamaeYukari)さんから

以下私宛てのリプライでご指摘いただいた

「事実を正しく記録する方針は客観的だが、どんな世界を目指すかという点では決して中立ではない:アサンジ」(ウィキリークスの時代:後書き)


確かにアサンジは中立を口にしたことはありませんでした。私の意図する中立とは、どの国からの支援も得ず、自由に不正に対するリークを実行可能だということを「中立」としました。エクアドル亡命が受け入れられれば、エクアドルとの「政治的借り」の関係から自由なリークができなくなるという意味です。

ということで、今回の事件でよりウィキリークスの政治的スタンスが明確になる、ということが確認されたわけです。

今回はちょっと言葉足らず&認識不足でした。ご指摘いただいた宮前さんに感謝申し上げます。

また他にもいくつかご指摘をいただきました。以下のリンクが参考になるとのことです。

http://wlcentral.org/node/2671

明石蛸三郎明石蛸三郎 2012/06/22 00:27 取りあげて頂き有り難うございます。アサンジもヤキが回ってるって感じですよね。
この問題では動きがあり次第、続報を紹介していきます。

くりりんくりりん 2012/06/30 00:57 アサンジが非常に心配です。
「どこにも借りを作らず全くの自由に情報公開するウィキリークス」は理想に決まっていますが、現実には無理ですよね?
亡命しなければ彼はどうなるのでしょう?
「コンドームを使わなかった罪」が「強姦容疑」で「国際指名手配」ですよ。
なんでもありなのです。
このまま行けば誰が考えたって「アメリカヘ送られ死刑」じゃないですか。
良くて一生、監視付きの終身刑。
それが良いですか?
勇気あるジャーナリストはますます減ってしまうでしょう。
エクアドルのリークは出来ないとしても、世界最強のアメリカの罪を暴露できる希少なジャーナリストの価値はそう落ちないと思います。
記事有難うございました。

2012-01-09

2011年の仕事一覧(仮)

| 05:19

まだまだリンク張ったりできておらず、暫定的なのですが、2011年の仕事の一覧を。近く修正します。

書籍

・『日本人が知らないウィキリークス』、洋泉社新書y、2011年2月

・『統治を創造する−新しい公共/オープンガバメント/リーク社会』、春秋社、2011年12月

ネットメディア

ニコニコ生放送

ニコ生×デモクラシーナウ(ウィキリークス特集)

ニコ生×デモクラシーナウ(ハクティヴィズム特集)

ニコ生×シノドス(リーク社会)

・『政策空間』ウィキリークス論考

・『シノドスジャーナル』論考

 ウィキリークス「未編集公電公開事件」とリーク社会の今後」

アノニマスとその思想」

ラジオ

・Dig電話出演5/5(朝日新聞ウィキリークス提携問題)9/8(ウィキリークス未編集公電公開事件)


シンポジウム

慶應義塾大学SFC研究所 プラットフォームデザイン・ラボ『ソニー個人情報流出事件をどう考えるか サイバー攻撃に対する政府・企業・個人の対応』(8/29)

・2011/3/31『日本記者クラブ』講演(リーク社会について。津田大介さんと共演)

雑誌

・『月刊地方自治職員研修』2月号

・『週刊エコノミストウィキリークスについて(2月)アノニマスについて(6月)

・『ユリイカ2011年二月号「リーク願望を吸い上げる装置--ウィキリークスとリーク社会」

・『広報会議』「リークを活用する企業運営--リーク社会への備え」 (6月)

・『週刊SPA!荻上チキさんとの対談

・『図書新聞』にて書評

・『月刊サイゾー

グーグルについてコメント(6月)

◆嵜契ぢリノベーション作戦会議」荻上チキさんと対談(10月)

見落としやらなんやらあるので、ちょこちょこ書き直し予定ですが、ほぼ仕事はすべてカバーしてるはず!