噂の公式

メディア研究では古典的なものらしいのですが、
『わたし立ち消費』を読んでいたら出てきていまさら知ったのでメモ。


R∝i*a
流言の流布量(Rumor)は、当事者における主題の重要さ(Importance)と、問題の主題に関する証拠のあいまいさ(Ambiguity)との積に比例する。


G.W.Allport and L.Postman (1944)

(追記 2008年7月27日)


原書には当たれていませんが、邦訳書を参照したところ下記のように書かれていました。


前の章で、われわれはデマの二つの基本的な条件をしめしておいた。すなわち、第一に、その話のテーマが、話し手にとっても聞き手にとっても何らかの重要さをもっていなければならないこと。第二に、その本当の事実が何らかのあいまいさによっておおいかくされていなければならないことである。(略)
重要さとあいまいさというデマの二つの本質的な条件は、その伝わり方と、大体、量的に関係づけることができるようである。デマの強さに関する公式は次のように書かれるであろう。
  R〜i×a
この公式の意味を言葉でいうと、デマの流布量は当事者に対する問題の重要さと、その論題についての証拠のあいまいさとのに比例するということである。重要さとあいまいさとは加え合せるのではなく、かけ合せたものである。というのは、重要さか、あいまいさか、どちらか一方が零ならば、デマにはならないからである。


G.W.オルポート, L.ポストマン, 南博訳 『デマの心理学』(1952年, 原書1946年) pp.41-42.
(引用元の傍点部を太字表記した。また旧漢字は新漢字に改めた)

1) 一般化した公式については「比例関係」を意味する「∝」に記事中では変えました。
2) 「デマ」という言葉が書かれているものの、これは本書が主に政治的な意図をもった、
  あるいは社会・治安に影響を及ぼすようなものを取り扱っているからゆえの訳語であり、
  原著のタイトルが"The Psychology of Rumor"であるように、本来の訳語は「噂」で、
  引用箇所も「デマ」を「噂」と読み替えてもよい。


デマは、それを伝える人々の関心に強く訴え、同質的な社会の媒体を通して、動き出し、旅を続ける。これらのひとびとの関心はデマを強く支配し、それが、ひとびとの抱いている感情的な関心を説明し、正当化し、意味づける。つまり、広く合理化する機能を果すように要求する。関心とデマの関係は、しばしばきわめて親密なので、われわれはデマをたんに、まったく主観的な感情の投射として語ることができるのである。


同書 p.53.

デマの心理学 (1952年) (岩波現代叢書)

デマの心理学 (1952年) (岩波現代叢書)

わたしたち消費―カーニヴァル化する社会の巨大ビジネス (幻冬舎新書)

わたしたち消費―カーニヴァル化する社会の巨大ビジネス (幻冬舎新書)