教員であること

 僕は大学教員の仲間のなかでは、やや特殊な事例に属する。というのも、僕が所属するのは大学に付属する研究所、プロパーの学生さんのいない、建前的にいえば、研究に専念するのが義務の機関である。


 もちろん、実際には、学生さんとの接触は多い。非常勤で教える大学は別にしても、大学院では他の組織、僕の場合でいえば、法学政治学研究科で恒常的に演習を担当している。指導教員をつとめ、これまでに5名以上の博士号取得者の指導教員の任をはたしてきた(結構、自慢である)。それ以外にも、教養課程で政治学の入門講義を担当したり、各種導入的講義を担当してきた。


 最近、けっこう充実感を感じているのが、教養課程の「全学自由研究ゼミナール」や「全学体験ゼミナール」である。これは特定のテーマで(例えば、「希望学」とか「災害の政治学」など)で演習を開講したり、最近やっているのは「オープンガバメント」の体験ゼミである。これは大学の1、2年生のみなさんを対象に、地域の発展について具体的な提案をしてもらうゼミである。現地にも行き、データも調べてもらい、最終的にプレゼンもしてもらう(今年は、現地で、住民のみなさまを前にやってもらった)。


 これをやっているとはらはらすることが多い。やはり、大学の1、2年生である。高校生に毛がはえたレベルの学生さんに、なかなか地域社会の実情を理解してもらい、具体的提案をしてもらうのは難しい。それでも、この年代の若い人はすごい、と思うのは、短期間にかなりの成長を見せるということだ。今年もそうで、直前までどうなることやらと思っていたら、なかなかどうして、立派な報告をしてくれた。こういう学生さんを目にすると、まあ、教員というのも悪くない職業だと実感する。


 若い人を育てたい、とは言わない。彼ら、彼女らが、ぐんぐん育って行くのを少しでも手助けしたい、それを見ていたい。とりあえず、側にいて、一緒に面白いことをやりたい。


 といっても、プロパーの学生さんのいない組織はいつも、ちょっとさびしい。来年、自分がどんな学生さんと一緒になるのか、ぎりぎりまでわからない。まあ、これで当分いくしかないなあ、と思いつつ、ともかく一期一会でがんばっていくしかない。大学院演習を含め、今年もうれしい出会いがたくさんあった。教員稼業の楽しさを、いま、自分なりに感じている。