業務日誌

2009-09-18 金曜日(曇)@横浜

[]The Pear-Shaped Man and other stories

洋梨形の男 (奇想コレクション)

洋梨形の男 (奇想コレクション)

『洋梨型の男』ジョージ・R・R・マーティン〈河出書房新社 奇想コレクション

マーティンのホラー寄り作品を集めた日本オリジナル短篇集。


 収録作品

・「モンキー療法」The Monkey Treatment

 食べることが大好きな肥満の男。

 しかし、彼は実は太っていることが嫌いで、何度も密かにダイエットをしていた。

 ある日、自分より太っていた知り合いが、げっそり痩せているのを見かける。

 彼はモンキー療法というダイエットをしているらしく、早速教えて貰った場所に行くと……

 出てくる食べ物が明らかにカロリー過多で美味しそうなのが秀逸(笑)

 ラストのヴィジュアルは『蠅男の恐怖』*1並のグロテスクさでいいんだけど、結末がちょっとイマイチ。

 

・「思い出のメロディー」Remembering Melody

 学生時代の親友、メロディーが突然押しかけてくる。

 以前の彼女は楽しい女性だったが、今では人に迷惑を掛けるばかり。

 早く出ていって欲しいのだが、帰ってくると風呂で自殺しており……

 割と普通のホラー。

 ラストはけっこう嫌な感じ。


・「子供たちの肖像」Portraits of His Children

 屋敷で一人暮らす作家。

 ある日、仲違いした娘から肖像画が送られてくる。

 それは彼の処女作の主人公を見事に描いたものだった。

 夜になると、その人物が実際に現れ……

 作家の業と暗黒面をえぐる傑作。

 真相をどう捉えるかは読者次第なんだけど、信用できない語り手好きとしては、全てが……


・「終業時間」Closing Time

 凄い剣幕でバーにやってきた男。

 知り合いから、鷹に変身できるという魔法の首飾りを譲って貰ったらしいのだが、全く違うものに変身したらしく……

 『トワイライトゾーン』とか『アメージングストーリー』にありそうな小品。


・「洋梨形の男」The Pear-Shaped Man

 引っ越してきたアパートの地下に、洋梨のような体型をした不気味な男が住んでいた。

 いつも彼女のことを見ていて、いつしか夢の中にまで出てくる始末。

 仕事や生活にも支障をきたすようになり……

 「モンキー療法」と同じタイプの作品。

 主人公の嫌悪とは逆に、洋梨型の男の部屋を見たくなる筆致が巧み。

 洋梨形の男は完全にタフのイメージ(笑) 


・「成立しないヴァリエーション」Unsound Variation

 学生時代、チェスの試合で大番狂わせの寸前で負けた男。

 それからずっと、チームメイトから嫌みを言われ続けたが、今では彼は億万長者になっていた。

 そんな彼に招待された元チームメイトたち。

 彼は復讐のための、驚くべき方法を語る。

 人生はチェスと同様に無数の選択肢があると同時に、けっして64マスの盤には収まらないことに気づく主人公たち。

 チェス小説であり、○○○○SFの佳作。

 『モーフィー時計の午前零時』に入ってれば……と思ったけど、ちょっと長いか。


ホラーという味付けがされていて、舞台は現実世界だけど、扉を一歩入れば、そこはファンタジーだったりSFだったり。ベッドに潜り込んで、自分だけの世界を創造する子どもにとって、ジャンル分けは意味がないのと同じように。芸達者でどれもツボを押さえているけど、特に「子供たちの肖像」「洋梨形の男」「成立しないヴァリエーション」がお気に入り。

今年のベスト短篇集の1冊かなぁ。


宇宙SF短篇集も予定されているとか(ハヤカワ?)

っつうかさぁ、マーティンを語るのに必ず言及される『ワイルドカード』*2をいい加減出し直してよ。

訳者も一人で、表紙がアニメ絵とかになってもいいからさぁ。

ドラゴンランス 1 廃都の黒竜 (上) (角川つばさ文庫)』も漢臭くなくなって復刊したし。

[]薬多江町へようこそ

薬多江町へようこそ』が届く。


今まで単行本化されてなかったものを、こうして一冊で読めるのは本当に嬉しいんだけど、なんだろう、このガッカリ感……

オンデマンド本は初めてなんだけど、色々と安っぽいなぁ。諸手を挙げて、新たな印刷流通として歓迎はできないなぁ。小説ならいいかもしれないけど。

まぁ、埋もれた作品が日の目を見るのはありがたいけどね。


それにしても、なんでこれ単行本化されなかったの?

ドクター&ドーター』*3より面白いよ。お色気ないけど(笑)