業務日誌

2009-10-12 月曜日(晴)@所沢

[]FROM HELL

フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 下

フロム・ヘル 下

フロム・ヘルアラン・ムーア&エディ・キャンベル〈みすず書房


これが日本語で読めるなんて、なんて幸せなんだろう。

この作品に匹敵する情報密度のフィクションはそうそうないよね。噛み砕くには再読必至だなぁ。とりあえず読み終えたので、今の段階で思うところを書きなぐり。

ジョニー・デップ主演の同名映画*1の原作。これに比べれば、表面なぞっただけの上澄みみたいなもの。


切り裂きジャックものなんだけど、けっして正体・真相探しではなく、現に、犯人も目的も最初の方から明らかにされている。では、何が描かれているかといえば、一言で言うならば歴史。それも、あり得たかも知れないなどというあやふやな文言ではない。これまでに無数に発表された切り裂きジャック論、当時の関係者の記録、ホワイトチャペル周辺の風俗を重ね合わせることによって、矛盾のない歴史的事実が構築される。

これが偏執的で、登場人物はほとんど実在はしていて、セリフも当時の記述に沿っている。おそらく、背景の看板とかも実際にあったものなんだろうな。

また、ディティールの細かさと相いれないように思えるけど、もう一つの軸であるジャックの幻視が凄まじい。『ウォッチメン*2の第4章に匹敵するかそれ以上の神の視点と神の時間。個人的には『虎よ、虎よ』*3の時間を縦に貫くガリーを思い出した。そして『フロム・ヘル』にもブレイクは登場する。この辺も併せて読んでいった方がよさそうだなぁ。


この、再現された1880年代とジャックの幻視の間に見えてくるのは、20世紀の始まりであり、そして現在。劇場型犯罪、暴走する報道、無神経なヤジ馬、無数の自称ジャックからの手紙……そこだけ取り出しても、現在とまるで変わらない。

自身が20世紀の扉を開いた確信し、神の視点へと昇り詰めようとするジャック。

しかし、ラストはどう解釈するか。『ウォッチメン』同様、ディスカッションしたくなる作品。個人的には、女性の「地獄へ帰れ」やジャックの台詞から、神の座(=現実)から地獄(=フィクション)の枠に押しとどめられたと思いたい。


巻末の注釈がまた凄くて、本編より時間かかった(笑)。ただ、アニー・クルックとアニー・チャップマンがごっちゃになってたり(俺の勘違い?)、〈イルミナティ〉三部作*4出版社が間違ってたり、と玉に瑕なのが残念。


小説や映像では味わえない情報密度はぜひ味わって欲しい。絵柄で拒絶しちゃう人もいると思うけど。


サイン入りの原著の豪華版がアラン・ムーア教徒としては宝物(笑)


これと『ウォッチメン』でアラン・ムーアに興味持った非アメコミ者には『キリング・ジョーク』*5を読んでもらいたいなぁ。そこに描かれた狂気は素晴らしい。

あと『ドラキュラ紀元*6好きには是非『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』*7を。

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