橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
- 作者: 橘外男
- 出版社/メーカー: 中央書院
- 発売日: 1994/11
- メディア: 単行本
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日本人作家は全く不勉強で、恥ずかしながら知らなかったんですが『陰獣トリステサ』*1に強烈に惹かれ、たまたま古本屋で見つけたこのシリーズの1冊に収録されていると分かり、珍しく和モノに着手。
収録作品
・「令嬢エミーラの日記」
アフリカ奥地でゴリラ言語を研究する学者。
その娘エミーラと調査団を襲った悲劇は?
・「怪人シプリアノ」
ケープタウンの中学に通う主人公。
その同級生に、犬との混血のような容貌と凶暴な性格のシプリアノという少年がいた。
八年後、同僚から、妹が嫁ぐという名目で奴隷として囚われたため、救いたいと相談を受ける。
その相手こそが、ズーヴァ族と長となったシプリアノだった!
・「陰獣トリステサ」
バルセロナの銀行家アレサンドロは、美貌の伯爵未亡人と結婚した。
しかし、彼女は夫を見下しており、寝室にも入れない。
ある日、怪しい犬商から奇妙な犬を買ってきて……
・「マトモッソ渓谷」
パラグアイとボリビアの国境に位置する過酷な地で道を失った青年たち。
やっとのことで人家らしきものを見つけたが……
・「女豹の博士」
脳腫瘍の手術を行った、美貌の天才日本人女医シゲーノ博士。
しかし、彼女は成功したにもかかわらず、さらに脳にメスを入れ、患者を殺してしまう。
その理由とは?
うはっ! 楽しすぎる!
作品は実録手記の体裁をとっていて、エキゾチズムのためか舞台はすべて海外に設定されているんだけど、別に日本の山奥とかでも大差ない。でも、阿弗利加とか書かれると、それだけでワクワクしちゃう(笑)
獣姦を連想させる作品集で、今から60年以上前の作品なんだけど、直接に描写しないことによって、余計にエロいです。白眉はやはり「陰獣トリステサ」。行為自体は無論書かれないんだけど、主人公たる妖犬の体型を細く描くことによって、その相手と姿態の輪郭を投影することに成功している。エロ漫画で、男を透明に描く感じ?(笑)
あとは、「令嬢エミーラの日記」と「マトモッソ渓谷」がよかったなぁ。
特に「マトモッソ渓谷」は古代インカ帝国の末裔がその掘削技術で巨大洞窟を作り上げ、そこでハイエナとの混血が生き延びている! と超いいところでぶつ切れる展開に身悶えした。落丁かと思ってページ確認しちゃったよ! ガグロ! ガグロ!
ご存知のとおり、日本人作家はほとんど読まないんだけど、この辺の作家は趣味なのかなぁ。『ドグラ・マグラ』*2も好きだし。ホラーじゃなくて、怪奇が好きなのかも。
百年前に生まれた作家だと、微妙に現代と地続きでありながらその思考が異質だし、その彼らがさらに異質なものを描こうとするから、もうわけのわからないことに(笑)
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