EL JUEGO DEL ANGEL

天使のゲーム (上) (集英社文庫)

天使のゲーム (上) (集英社文庫)

天使のゲーム (下) (集英社文庫)

天使のゲーム (下) (集英社文庫)

待望のシリーズ第二部!

1917年、バルセロナ。17歳のダビッドは、雑用係を務めていた新聞社から、短篇を書くチャンスを与えられた。1年後、独立したダビッドは、旧市街の“塔の館“に移り住み、執筆活動を続ける。ある日、謎の編集人から、1年間彼のために執筆するかわりに、高額の報酬と“望むもの”を与えるというオファーを受ける。世界的ベストセラー『風の影』に続いて“忘れられた本の墓場”が登場する第2弾。
ダビッドが契約していた出版社が放火されて経営者が亡くなり、刑事にマークされる生活が始まる。いっぽうで移りやかた住んだ“塔の館”のかつての住人デイエゴ・マルラスカが不審な死に方をしていたことがわかり、関係者を訪ね歩くダビッド。調べていくうちに、マルラスカと自分に複数の共通点が見つかり、彼を襲った悲劇に囚われていく。“本に宿る作家の魂”を描く珠玉の文学ミステリー。

物語として、『風の影』*1と直接的なつながりはないけど、未読ならば続けて、余裕があるなら再読してから着手することをオススメ。
もう6年(!)前なんで、細かいところは完全に忘却。『風の影』の30年ほど前だけど、舞台は同じ街なので、覚えていれば、いろいろ感慨深かったのになぁ、と残念。


前作が呪いの本を手にしたがゆえに巻き込まれる物語なら、今回は呪われた本の執筆を依頼される話。決して細かく描写されているわけではないのに、主人公たちが事件に追われ、迷宮のようなバルセロナの街を駆けずり回る様子が目に浮かぶ。
そこに現れるのが、地獄にも、天国にも、煉獄にも思える“忘れられた本の墓場”。作中、唯一ファンタジー的な要素を持つ場所だけど、それと対を成すような存在が登場。
その存在が題名通り壮大な「天使のゲーム」を始め、駒と化した主人公はそこから逃れられるのか、物語は現実とファンタジーの狭間を通りながら進んでいく。


出てくるシーンは少ないものの、読者に強烈な印象を残すのが“忘れられた本の墓場”。
これも「天使」のゲーム盤なのか、それとも不可侵なのか?
また、本は著者の魂と同等、ということは、“忘れられた本の墓場”から本を持っていったものは、その著者の運命も負うことになり、例外なく、自身の運命を乱されることになるのか。
主人公はルールを破り、すべての因果から逃れる。


ダビッドとパトロンの関係は、文字通りの関係だけではなく、作者と編集者、プレイヤーと駒、本と読者、と多義的に読むことができる。
その両者は、どちらがどちらを動かし、どちらが上位存在なのか、彼らはそれに気づいているのか、そこにメタな構造が読み解けるような気もする。


エンゼル・ハート*2と感触似てるなぁ、と書いたらネタバレ?