BLUE WORLD

ブルー・ワールド (文春文庫)

ブルー・ワールド (文春文庫)

妻と寝たはずなのに目覚めると隣に骸骨が横たわっているのを発見した男。往年の怪奇俳優の化粧箱に隠されていた秘密。新興別荘地のハロウィーンの命がけの仮装ごっこ。内も外も真っ赤な家に住む不思議な一家。ポルノ・スターに魅入られた若き神父。乗る人を待つばかりのスポーツカーのように軽快なストーリーテリングが絶妙。

全アメコミ者必読の「夜はグリーン・ファルコンを呼ぶ」はとっくに既読なんだけど、実は他の作品は初めて。
内容はバリエーションに富み、質は粒ぞろいのハズレ無し。
御三家ではマキャモンが一番性に合うなぁ。と言っても、キングとクーンツはあまり読んでないんだけど。


 収録作品
・「スズメバチの夏」 Yellowjacket Summer
田舎道でエンストしまった母子。
そこのガソリンスタンドには不気味な少年がいた。
しかも、町の人々は彼を恐れているようで……


・「メーキャップ」 Makeup
博物館から、目当てのものと間違ってメーキャップ道具を盗んでしまった泥棒。
それは有名な怪奇俳優のもので、使うと、彼が演じてきた怪物の力を得られることに気づく……


・「死の都」 Doom City
目を覚ますと、隣の妻は骨になり、街全体が死に絶えていた。
そこに、何者からか電話が鳴る……


・「ミミズ小隊」 Nightcrawlers
嵐の夜、ダイナーにやってきた男。
彼は自分が眠ると、恐ろしい事が起きると考えていて……


・「針」 Pin
自分の目に針を刺そうとしている男。


・「キイスケのカゴ」 Yellachile's Cage
収監された刑務所には、キイスケという小鳥を飼っている老人の囚人がいた。
彼は魔法使いで、その鳥が観てきた景色を他の囚人たちに語って楽しませていたが……


・「アイ・スクリーム・マン」 I Scream Man
暑い夏。
アイ・スクリーム・マンのベルが、家の外にやってくる……


・「そいつがドアをノックする」 He'll Come Knocking at Your Door
村に引っ越してきてからツキに恵まれた一家。
ハロウィンの夜、村の寄合に行くと……


・「チコ」 Chico
ゴキブリが這いずりまわるアパート。
父は飲んだくれの暴力男で、知的障害のある息子をいたぶっているが……


・「夜はグリーン・ファルコンを呼ぶ」 Night Calls the Green falcon
40年前、連続活劇でグリーン・ファルコンというヒーローを演じていた老人。
今では安アパートで、過去のスクラップブックを眺める毎日。
ある日、隣室の友人の娼婦が殺される。
彼は衣装を纏いその犯人を追う!


・「赤い家」 The Red House
工場の従業員たちが暮らすグレイの通り。
ある日、一軒の家が真っ赤に塗られる。
そこに越してきた一家も赤ずくめ。
非常に有能な男で、よその工場から引きぬかれてきたらしいが……


・「なにかが通りすぎていった」 Something Passed By
何かが通り過ぎ、あらゆる物理法則が狂った地球。
大地は突然流砂のようになり、子供はミイラ化する……


・「ブルー・ワールド」 Blue World
懺悔室にやってきたポルノ女優に一目惚れしてしまった真面目な神父。
彼は身分を偽って彼女に近づき、彼女も神父を慕うようになる。
しかし、彼女には異常なストーカーが接近していた……


「夜はグリーン・ファルコンを呼ぶ」は文句なしにいいのは言うまでもないんだけど、双璧として「キイスケのカゴ」が素晴らしい。マジック・リアリズムの教科書的短篇。
「ブルー・ワールド」は本の半分近くを占める中篇。パラノーマル要素は皆無なんだけど、この純愛が非常にファンタジック。
「針」はクレイジーな掌編なんだけど、文章がラップのよう。
他に気に入ったのは「そいつがドアをノックする」「チコ」「なにかが通りすぎていった」あたり。