THE TESTAMENT OF JESSIE LAMB

世界を変える日に (ハヤカワ文庫 SF ロ)

世界を変える日に (ハヤカワ文庫 SF ロ)

バイオテロのため、子どもがもはや生まれなくなる疫病に世界じゅうが感染してしまった。このままではいずれ人類は絶滅する。科学の横暴を訴えて暴動にはしる者、宗教にすがる者。十六歳のジェシーは慣れ親しんだ世界の崩壊を目撃する。彼女の父親ら研究者は治療薬開発に取り組むが、かろうじて見出されたワクチンには大きな問題があった。それを知った彼女がくだした決断とは……。少女の愛と勇気を鮮烈に描き出した作品

帯に「たったひとつの冴えたやりかた*1が惹句として使われているけど、SFだし、まぁ、決断だけ取ればそうかもしれないけど、正直、感触はまるで違う。


ありうるものを描くのがSFならば、この作品は、緩やかに世界を滅亡させるウイルスが蔓延した世界ではなく、そこでの主人公の決断が「ありうる」ことにベクトルが向いていると思う。
年齢層によって感想は変わる作品かなぁ。
漫然と過ごしていた少女が、社会を知り、自分で考え、責任を果たすべく決断する(決断の程度はあれ)、というのは、ひじょうに普遍的YA小説。ただ、彼女の決断の契機はSFならではだと思うんだけど、その他物語の大部分はSFじゃなくてもよくない? ということ。
まぁ、だからこそ、なんとも言えない苦々しい読後感で、作者の目的はそこにあるんだと思うんだけど。「たったひとつの冴えたやりかた」にあったヒロイックでロマンチックとも言える味わいはここにはない。


嬉々として世界を救う研究をしていた父親だけど、いざ娘がそれに関わると知った時の醜態。でも、個人的には彼に近い考えかなぁ。
どうしても、彼女の行為は無駄に終わっちゃうんじゃない? と思いつつ、彼女のような犠牲がなければ、その先に何も生まれないと思ったり。


取り敢えず言えるのは、あまりSFっぽくないってことかな。

The ABCs of Death



『ABC・オブ・デス』鑑賞

世界15カ国から気鋭のホラー監督26人が参加したオムニバス。それぞれが与えられたアルファベット1文字から、自由な発想・手法で「死」をテーマに5分間の短編ホラーを製作した。日本からも「片腕マシンガール」の井口昇、「東京残酷警察」の西村喜廣、「地獄甲子園」の山口雄大が参加。そのほか「フロンティア」のザビエ・ジャン、「ホーボー・ウィズ・ショットガン」のジェイソン・アイズナー、「心霊写真」のバンジョン・ピサヤタナクーンら各国のホラー作家が顔をそろえた。

アルファベット1文字をお題に「死」をテーマにする以外に縛りのないオムニバス。


初っ端の「A」がそこそこ良かったんで「これは}と思ったけど、まぁ、予想どおりに玉石混淆。題名似てる『マシン・オブ・デス』*1を思い出す。
また「石」とまでは言わないけど、5分以下のショートショートなんで、実験的すぎたり観念的すぎたり、はたまた先走りすぎたりしてて、よくわからない作品多数。


でも、面白い作品がなかったわけではない。A、C、D、E、L、M、Q、Xあたりが趣味かな。チョイスすると、つくずく「岸本佐知子・編」に入ってそうな作品ばかりないなっちゃうけど(笑)


『ギャシュリークラムのちびっ子たち』*2を読んだほうが、安上がりな上、面白いかな。