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『テュケーと蟻』ハンヌ・ライアニエミ〈ハルコン・SF・シリーズ2015〉

ポストヒューマン時代に於ける怪盗ルパンの如く活躍するジャン・ル・フランブールの冒険活劇譚『量子怪盗』で颯爽と登場し、シリーズ第二作『複雑系王子』の翻訳が待たれる新進気鋭のハンヌ・ライアニエミの日本初短編集である。一九七八年フィンランドのイリヴィエスカに生まれ、スコットランドに在住。フィンランドのオウル大学で数学の学士号を取得し、スコットランドに渡りエジンバラ大学では数理物理学の博士号を取得する。英国国防省欧州宇宙機関などを顧客に持つリサーチとコンサルティングを行う会社を共同起業した。また生命工学の新興企業、HelixNanotechnologies社の共同創設者としても活動している。エジンバラ大学時代からSFを書き始め短篇"shibuyanoLove"でデビュー。「キャプテン・フューチャー」をモチーフとし、テュケーの月での活躍を描く『テュケーと蟻』。転神疫が起こった世界を紡ぎ出すシリーズの二編。一度は神となってしまった人は人と繋がれるのか?『神の子』。熊と暮らす詩人の冒険譚『ヘラジカへの哀歌』。人は如何なる時問や変容を経ても、人としての思いを持ち続けて欲しい、と希望に満ちた物語群

ハルコン・SF・シリーズも早いもので6年目。
パロディとして素晴らしい装丁なのは言わずもがなだけど、今回のはいつにも増していいなぁ。
新井苑子風タッチがグッとくるし、イベントで買ったからビニールカバーつきなのが嬉しい。


ハンヌ・ライアニエミは『量子怪盗』*1と短篇をいくつか読んでるんだけど、イマイチ、ピンとこない作家なんだよなぁ。


表題作は、『キャプテン・フューチャー』をモチーフにしているそうだけど、肝心の元ネタを読んでないんでよくわからず。
ただ、人間の少女と、彼女を取り巻くクリーチャー(?)やメカとのやりとりが、すっかり『宇宙家族カールビンソン』で脳内補正w


「神の子」と「ヘラジカへの哀歌」は、転神疫という、感染すると神の如き超存在になってしまう世界を描いたシリーズ。
「ヘラジカへの哀歌」に出てくる熊ちゃんがカワイイ。
ちょっとアメコミチックでもあり、個人的には沓沢龍一郎の「魔法使いがはじまる」を思い出した。
現在この二作しかないらしいけど、長編版も執筆予定だとか。
〈ジャン・ル・フランブール〉シリーズより、こっちの方が好みだなぁ。